「LisPon」での出会い

 <機械室の、松原タニシさん>

 

機械室の中にいる男性を、その時私はまだ、お顔とお名前と一致しないところで認識していました。

担当の方から、イベント当日の楽屋入り後、

「松原タニシさんという方も怪談語りで登壇なさいます。

ピン芸人“事故物件住みます芸人”さんで、

訳あり物件に敢えて住み、怪奇現象を体験したり映像に取ったりして、面白いんですよ。

タニシさんの著書”恐い間取り”、売れに売れているんです。」

と、伺っていたのですが、

第一回から魔物に憑りつかれたように見ている「チコちゃんに叱られる!」以外は、

テレビのお笑い番組等々あまり見る機会がない私には、判然としないところがありました。

 

とにかく機械室にじっくりと、まるでそこが自分の家であるかのように、

その空間にあまりにもマッチしたムードでいらっしゃる男性をちらっと見たところで、

そこに、担当の方が軽やかに笑いながらやってきました。

 

「タニシさん、そんなところで何してるんですか?」

「ああ、出番前、こういうところに入るの好きなんです…」(え?! 私も、同じ…)

ああ、この方があの、松原タニシさんか…

 

タニシさんが機械室の奥の暗がりから、ヌ~っと前に出て来たその瞬間です。

私は思わず大きな声を上げてしまいました。

恐かったのではありません。

 

私は感嘆してもあまり口から言葉が出ない方です。

内面でその感覚を堪能するタイプですが、

タニシさんがヌ~と前に出て来て、そのお顔をまじまじと見たとたん、私は

「いいお顔をしていらっしゃる、すごくいいお顔!」

と口走ってしまいました!

 

目の前に居る、この誰かもわからないちょっと頑固そうな“年増の女”の第一声に、

たぶんタニシさんの頭の中では、戸惑いと、恐怖と、この先の対処法の難しい選択肢が幾重にも絡み合い、

猛スピードで回転していたのではないでしょうか?

 『この場合・・・、どう、対応したらよいのか????』等々。

凄まじいストレスをかけてしまいました…。

 

私は未だかつて、男性の方で、

これほどの“いいお顔”をしていらっしゃる方に会ったことがありませんでした。

 

タニシさんは、はっきりと申し上げて、「イケメン」ではありません (※ タニシさんにお許しいただいています) 

 

私の言う「いいお顔」は、イケメンさんではなかなか見られないお顔なのです。

また私は、多く人が「イケメン」と捉えていらっしゃる人に、あまり反応しません。

審美眼が統計から外れるタイプなのです。

審美眼だけでなく、ほとんど、統計から外れるタイプ。

面倒くさいタイプです。

 

けれど、私にとってこの審美眼は、確固たるものです。

どちらかというと「真」を突いているのではと、私は、思っています。(偉そう~~スミマセン 🙇 )

 

タニシさんの「いいお顔」は、私には強烈でした。

だから声に出してしまったのだと思います。

 

その日のイベントでは、「いいお顔」しかお話をしていませんでしたが、

最後の舞台挨拶で、

後ろにタニシさんがいるにもかかわらず、私は不用意に腕を大きく後ろに振り回してしまったため、

手先がタニシさんの鼻先に当たってしまったという、大失態をしてしまいました。

こういう時は、笑いながらごまかす、という手があります。

 

笑ってごまかしました・・・。

(後日タニシさんは、殴られた・・・、と笑っておっしゃっていました)

 

が、これも職業病の一つで、転んでもただでは起きないのが、私。

『大失態しても、その瞬間周りの人たちの反応や動きを徹底的に観察し、記憶する』

観察、考察、洞察は、何かを表現する人にとってはなくてはならないもの。

必須条件です。

 

一瞬後ろに仰け反るようによけた時のタニシさんの動きから、

「この方は運動神経が発達している。バランスも良い。

よける動きが柔らかいので、腰の筋肉と腹筋が強いのかもしれない。

と同時に、強いから、時々腰を痛めるタイプかも・・・」

などと、笑ってごまかしながらちゃんと記憶にとどめていました。

 

イベントが終わる前から、その日、外はゲリラ豪雨と雷に襲われていたと記憶しています。

イベント会場のある隣の駅では局地的な大雨と雷がすさまじく、ニュースで取り上げられていました。

会場を後にし、電車を乗り継いで最寄りの駅で降り、地上に出たところに、TSUTAYAがありました。

迷うことなく店内に入り、探す時間もかけず、“恐い間取り”を手に取り、購入しました。

 

本の装丁を見ながら、裏表紙内側のタニシさんの写真を見ました。

ファッションコーディネーターさんが選んだものだと想像していますが、

とてもセンスが良く、たぶん濃紺かあるいは黒のスーツだと思います、そこに真っ赤な色のネクタイが格好良く、

カメラマンの方が“事故物件住みます芸人”としてのタニシさんではないイメージを捉えて

シャッターを押していらっしゃったのかな、と感じられる、

引き締まった写真でした。

そして、プロフィールを読みました。

 

4月28日が誕生日。

私の父と同じ誕生日でした。

 

その日、一気に読破。

何となく、「松原タニシ」という方のお人柄が分かってきたような気がしました。

 

次回も、松原タニシさんに触れてみます。

 

今日は早起き。お仕事に行ってきます!

暑いですね。

皆さん、水分補給を、くれぐれも…。