教える ③ 

LisPon」との出会い <榊原良子の声って何だろう>

     

私が講師としてレッスンを担当している養成所は、

アプトプロ養成所と、プロダクション・エース演技研究所だけですが、

それぞれ個性が異なります。

 

私は教材を選ぶとき、クラスの個性を考慮して、

それに合うものを選ぶことにしていました。

アプトプロさんでは、常に芥川龍之介の「藪の中」を教材にしています。

意外とおとなしい生徒が多く、

もっともっとワイルドになってもらいたいと思い、芥川の作品を選んでいます。

 

プロダクション・エースさんでは、一人一人の生徒が個性的、

かつ、それぞれ抱える「課題」が異なり、

既成の戯曲や台本などが一人一人の課題の克服のためにならないこともありました。

また人数が多いので、全員に同じような表現時間を分配することができず、

“平等なアドバイス”が難しい状況でした。

 

そこで、この1年あまり、プロダクション・エースさんの授業では、

平等なアドバイスができるよう、また、それぞれの課題克服にも合うように、

私が、戯曲や独白台詞を書き下ろすことにしました。

拙い作品ではありますが、生徒一人一人がその場で主役になれるような「作品」を書いて、

皆に演じてもらうことにしています。

 

「作品」を書くこと。

それは、「LisPon」 から始まりました。

 

声優の私が、作品を書く、なんて大それたことをしようと思ったそのきっかけを与えてくれたのが、

2018年5月から12月まで担当させていただいた

「LisPon・榊原良子の声って何だろう」という、

配信アプリのお仕事でした。

 

一号さん、二号さん、お元気ですか?

その節は、大変お世話になりました。_(_^_)_ (また、干し芋食べたいな)

 

「LisPon」には、厳しい審査を潜り抜けて認められた、声自慢の「公式キャスト」が何人もいます。

それぞれが魅力的な声をお持ちで、

その声を聴きたいリスナーが、

自分の好きな公式キャストにこうして欲しいというリクエストをし、

「公式キャスト」の方が、声の演技でそれに応えるという、声のライブ配信。

贅沢な配信アプリです。

 

私が担当した「榊原良子の声って何だろう」というのは、

ラジオの生番組に似ていました。

そこで、「公式キャスト」の方々も、また、リスナーの方でも、

自分の演技を聴いてもらいたいという方が「挙手」をして、

一号さん、二号さんがランダムに選んだ方が、皆が聴いている中、声の演技をし、

私がそれにアドバイスをするという、そんな番組でした。

 

耳だけで演技者の特徴を捉え、それにアドバイスするというのは、

一音でも、また衣擦れの音などのノイズさえも聞き逃さないという気合が必要で、

その日は番組が終り家に帰ると、ドッと疲れてしまうのですが、

「聞き逃さない」ということは、ある種のプライドを持って臨めることでしたので、

充実感と達成感を得られることができました。

 

「LisPon」の“公式キャスト”と言っても、

事務所に所属しているプロの声優さんはほとんどおらず、

メディアには載らない、例えて言うならば、「セミプロ」のような方々です。


ところが、ところが、なんです!

 

プロとして活躍していなくても、

まるでプロ以上にプロフェッショナルな深い表現をする方がいることに、

私は驚きました。

隠れた逸材が何人もいらっしゃる…!!!

 

 『どうして事務所に所属しないのだろう? 

  この方々の演技なら、一つの作品の、主役から重要な役柄まで、総なめにしてしまうのではないか…。

  それぞれがそれぞれ独自の世界観を持っていて、それをしっかりと個性として出し、とても魅力的だ。

  伝わってくるものも半端ではない。

  見事!と評されるこんな多く人が、なぜ、公の場所に出ていかないのかしら…』

 

目から鱗でした。

 

聞くところによると、過去に俳優や声優、エンタテイナーを目指した方もいたようです。

けれど、実家のご事情や、結婚を機に、

あるいはそれぞれの私的なご事情で、

プロになる道を諦めたという方も、少なからずいらっしゃったようです。

 

そしてもう一つ、度肝を抜かれたのは、

「これは私の趣味なので、それ以上は考えていません」

という人もいらっしゃいました。

ヒョエ~~! 

 

趣味でこれだけの表現力が可能なのだ! と思ったら、

いったい“プロフェショナル”とは何なのだろうと、

私の頭の中には?マークが飛び交い、犇めき合い、

何が何だか分からなくなってしまったほどでした。

 

やはり、やはり、やはり、隠れたところに、優れた才能があるのですね。

ずっと自信はなかったのですが、長い間隠し持っていた“持論”が大当たりしていたことに、

感無量。(ウレシイ~)

 

ライブ配信アプリ、というものをしたことがないアナログな私には、一号さん、二号さんがおっしゃる

「はい、次は誰が榊原さんからアドバイスをいただけるかな? さあ、挙手挙手をしてください!」

の、挙手って、スマホをどう操作するのだろう??と、未だチンプンカンプンですが、

今まで耳にしたことのない新鮮な個性と表現を聴くことが、私には大きな喜びでした。

 

そしてそれは同時に、

真っ向からの「真剣勝負」でもありました。

 

「LisPon」

懐かしいです…。

次回もこの続きにしちゃいます!

 

今日東京は、昨日よりもちょっと蒸し暑くなっています。

明日からまた、真夏の気温に戻るとか…。

秋近し…、で油断するとまた熱中症に見舞われてしまうかも入れませんので、皆さん、水分補給はかかさないようにね (⋈◍>◡<◍)。✧♡