語り芝居の会「でえく」を観る
大学時代の先輩の一人から、公演のお知らせを戴きました。
毎年一回は観に行っていたので、今年も楽しみにしていた、落語を題材にした「お芝居」です。
演目は、
一、「あくび指南」 二、「酢豆腐」 三、「化け物使い」 四、「子別れ」
「子別れ」は笑いと涙を誘う、人情噺です。「子は鎹」というお話…。
この二、三年、NHKで「落語The movie」という番組を楽しく拝見していました。
俳優さんが口パクで落語家さんの語りに合わせ、物語に沿って演技をし、
それを映像にするという形式で、俳優さんの声は聞こえません。
落語家さんの話術が光ります。
それがとても面白く、意外な配役であるところも、とても興味深い。
「話術」が際立つ日本の伝統芸能・落語や講談など、
最近では若い方々にも浸透しているということで、
なんとなく唇がほころび、うれしくなりますね。
語り芝居の会「でえく」は、浅草の「木馬亭」での公演。
第一回目の公演から数えると、16年目に入るそうです。
お芝居は続けることがとても難しいだけでなく、定着するまでに時間がかかります。
私が初めて拝見したときは、観客席が空いていることが多かったのですが、
どんどんと観客を増やし、満席や、立ち見が出るほどになってきました。
派手な宣伝はしていらっしゃらないようですが、口コミで観客が増えているようです。
観客の年齢層は40歳代~と、高くなっていますが、
「おっとりとした」テンポが心和ませ、
全編を通してニンマリとした笑顔が自然と浮かんでくるようなお芝居を披露してくれます。
私の年齢には、この「おっとり感」がとても心地よく、寛ぎの場、という印象を与えてくれます。
(固めの椅子ですが、お尻が痛くならないのは、たぶん、語り芝居の会「でえく」の、
心身ともに和ませるその“持ち味”なのではないかと、思います)
「木馬亭」は、寄席です。
浅草という町の歴史を今に残したような佇まい。
そして、内部は、あまり飾らない、素朴な空間。
都心の大劇場や小粋な劇場とは雰囲気を異にし、
庶民の娯楽場という感じです。
その庶民的な空間が、「でえく」に似合っています。
銀座線の浅草駅で降りると、仲見世通りを抜け、浅草寺の境内にちょっとお邪魔して、
本堂の前を左に曲がり、境内を一度出ます。
出てすぐの道をまっすぐ進むと、右手に木馬亭が見えてきます。
これが一番の近道。
この日、地下ホームから地上に出ると、まず目にしたのが「人力車」。
数年前に比べると、人力車の俥夫(しゃふ)の「コスチューム」が、
なんと、ソフィスティケートされていたことか!
2020東京オリンピックも視野に入れ、外国人のセンスを考えての事なのでしょうか?
日本人で、しかも下町大好きの私は、
『浅草の屋台風の店が立ち並ぶ区画に漂う、酒の肴の匂いが纏わりついたような衣装…』、
ソフィスティケートされていなくても、侘び寂が感じられる少し地味なコスチュームが“好み”です。
街に、溶け込む感じだからですが、
今回初めて見た、頭から足袋まで“真っ白”という新しいタイプのコスチュームは、
それだけで強い印象を与え、存在感が半端ではありませんでした。
日焼けした顔から零れ落ちる、俥夫(しゃふ)の白い歯も、強烈な存在感を放っていました。
白い歯って、なんてきれいなんでしょう!
浅草。
昔の情緒を漂わせながらも、新しい時代のセンスも取り入れて、
街の発展につなげていこうとする、前向きな努力が感じられました。
皆、頑張っているのね…。
私はこの日、予定していた電車を外してしまい、開演時間に遅れそうだったので、
外国人観光客でごった返していた浅草寺の境内をゆっくりと散策することができませんでしたが、
様々な国の言葉が耳をくすぐり、また、これも、浅草という町の雰囲気に自然と溶け込んでいるのが、
なんとも不思議な感じで、急ぎながらもあちこちに視線を向けて歩いていたら、
一本道を間違えてしまいました。
あれ?
2020年の東京オリンピックに向けて、浅草もところどころ、開発工事が入っているのですね。
昨年の風景とは少し変わっていました。
語り芝居の会「でえく」。
一時間半の公演でしたが、浅草まで来ているのに、家で寛いでいるような面白い感覚を味わいながら、堪能させていただきました。ありがとうございます。
帰りは、歩いたことのない道を選んで少しだけ、寄り道をしてみました。
木製のブラシ・刷毛専門のお店が新しく出来ていたので、ボディーブラシを買ってしまった!
豚毛の中程度の柔らかさのもの。
塗料用の刷毛も大小さまざまあり、欲しい!!
でも、家にある道具箱の中の工具を思い出し、自粛。
(私、ペンキ塗り、大好きなのです)
こんどまた、木馬亭にお邪魔するときは、時間に余裕を見て、
一つ前の駅「田原町駅」を降りて、合羽橋をウィンドウショッピングしながら、
裏通りから行こうかな、と考えています。
ただ、合羽橋に入ってしまうと、私の足が止まります。
面白い調理道具がたくさん!
誘惑に勝てないかも・・・。
またまた開演時間に遅れてしまいそう、です。