声について part 4

 

「声について Part3」から、随分と時間が経ってしまいました。

寄り道、逃げ道、迷い道等々…。

いろいろな場所を、好き嫌いに関わらず、私は歩き回っていたようですね。

 

さて。

およそ40年前。

会議用のカセットレコーダーを使いながら、

仕事のない日々の中で、毎日毎日朗読や戯曲を用いたセリフの稽古をしていても、

自分の声がどうにもはっきりと掴めていないと、

私は感じていました。

 

『個性がない! インパクトがない! 魅力がない!』

これは致命的な要因です。

 

自分で聞いていても、右から左へと素通りしてしまうような声、そして表現。

私はできるだけ多くのテレビ番組を見、ラジオを聴き、

大先輩たちのナレーションや吹き替えの演技、コマーシャルの語り口などから、

必死で“何かを“得ようとしていました。

その一方で、アニメ・タイムボカンシリーズのスタジオに見学に行くように言われ、

自分よりも5つも年下で主役を張っている声優さんや大先輩にお茶を入れたりして、

この世界の礼儀を学びながら、演技を拝見させていただいたりしていました。

 

稽古、見学、稽古、見学の日々で、

ある時気づいたことがありました。

(やはり、他者の演技を見ることは、“気づき”に繋がるものなのですね)

まず、自分の声の出し方です。

 

真っ直ぐ前に声が出ていなかったのです。

口籠った時のように、下方に向かって声を出している・・・。

声が澱んで聞こえます。

 

なぜ真っ直ぐ前に声が出ていなかったのか…。

 

そのわけはすぐにわかりました。

自分の声への、強烈な劣等感。

そこから来る自信の無さが、声を出すこと自体を委縮させていたのです。

 

声がはっきりと出ている時。

大人も子供も、心が解放されていると言われています。

精神的にも、おおらかな状態。

その時の数多の「声」は、

力強く、何物にも臆さない生き生きとした“音”になっています。

たとえ、「だみ声」と言われる声であっても、「かすれ声」と言われる声であっても、

その“音”を超えて、ある種の魅力が出ているものです。

それは、その人その人の「人としての魅力」。

 

養成所の生徒に教える時、

声にやや劣等感を持っているなぁと思う生徒には、

私ははっきりと言います。

「その声に自信を持て! それを武器にしなさい! その声で勝負しなさい!」

 

どこかの強面大学の男子柔道部の部長、のような“雄々しさ”で言っています(笑)

 

40年前。

私は誰にもそうアドバイスされませんでした。

自分で自分を励ますしかなく、

今思えば、一人でも私にそうアドバイスしてくれる人がいれば、

もう少し早くに、ものになっていかもしれません。

でも、私にとっては、それでよかったのだと思います。

七転八倒することで、「声」について、いろいろなことを、自力で発見できたからです。

 

私は真っ直ぐ前に声を出すよう、発声を矯正して行きました。

心の矯正とともに…。

劣等感…。余計なことは考えない、考えない、考えないぞ~~!

 

二つ目。

重く固い声に、少しだけ息を混ぜ、ブレッシーな語り方をすると、

少しはやわらかく、そして、やや特徴がつくことがわかりました。

声を作る、のではなく、自分の声に息を混ぜていく、という感じかな?

 

息交じりの声になるので、肺活量の強化訓練を同時進行させました。

そして、なるべくその声で、毎日人と話すことを心掛けました。

自分の体に無理やり覚え込ませて行く訓練です。

一歩引いた謙虚なイメージを与える声、

大人の女性の話し方になりました。

 

そして三つ目。

腹筋にしっかりと力を入れて大きめの声を出すと、

私の声は低くなり、図太い声になってしまいます。

若く可愛い女の子の役を与えられたときは、

決して腹筋に力を入れてはいけないことがわかりました。

声の当てる場所を鼻腔の上部前方に定め、

腹筋ではなく、

鳩尾あたりにやや力が入るくらいにすると、

いささか幼いムードが出て来ます。

 

ただ、この声の出し方は、表現の幅を狭め、かつ、

「声が出ていない!」とダメ出しをされるリスクを伴いました。

 

 

日本全国、命に係わるほどの猛暑に見舞われています。

2019年8月17日土曜日。

皆さん、くれぐれも、気を付けてください。

若い方々も、若さを過信してはいけませんよ!

嗚呼、心配…。

 

次回は、「声について part5 」です。