妖怪丸呑み(寝て見た夢シリーズ) | 月野唯笑の作品覧

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作詞家&メンタルトレーナーとして活動してます。
代々木アニメーション学院声優科卒業
朗読や声劇などしています

「あんなに可愛がられていたのにねぇ・・・」

数日前から こんな台詞をやたらと聞くようになった

街の中には飼い主を失った犬たちが溢れている

ある犬は鎖に繋がれたまま息絶え

またある犬は家の中で・・・

中にはアスファルト沿いを歩く やつれた犬もいた

一日一日が過ぎるごとに事態は悪化しているように見えた

「今度はあの家の方たちが消えたんですってよ」

「え?、あの家も?先週はあちらの家だったわよね?今度は私たちじゃないかしら・・・」

噂は噂を呼び 街には異様な空気が漂い 人々の心は恐怖に埋もれて行った

世の中にはありえない事が起きる場合がある

非現実的な事が

今 この街では起きていた

 

ある公園で子供たちが話していた

女の子が問う「妖怪丸呑みって知ってる?」

それに反応した少年Aがいる「何だよそれ?」

さらにもう一人の少年Bが「お前 知らねーのかよ 遅れてるなぁ」

「最近よくこの街で家族が消えるじゃんか それが妖怪丸呑みの仕業だって言うぜ?」と言う

少年Aは「へ~」と一言漏らす

しかし何故今この街にはそんな妖怪が現れたのか?

原因が何なのかはわからない

仮説を立てよう

妖怪丸呑みの正体は家族の誰か

そしてそれを生んだのも家族の誰か

つまり家族内で誰かが誰かに不満を抱く

その不満が誰に対してかによって妖怪丸呑みになる人物は変わるが

必ず不満を抱いた本人ではなく 不満を抱かれた人物が

気付けば妖怪丸呑みへと変化させられ 最終的に理性をも失うのだ

例えば子供が母に対して不満を抱いたら妖怪丸呑みへとなってしまうのは母

妹が兄に不満を抱いたら妖怪丸呑みになるのは兄

もしも家族を消さない方法があるとしたら

それは事態が最悪になる前に話し合い 問題になりうる点を共に解決させる事だ

妖怪丸呑みになった人物は家族全員に悪影響を与え

文字通り 家族は崩壊 最悪 一家心中

幸せな家庭は妖怪丸呑みに丸呑みされてしまうのだ

1つの不満がある 2つの不安がある 3つの悲しみがある

放っておいたらどうなる?

この仮説が必ずしも真実なのかはわからない

しかし徘徊する犬が 公園の子供たちが 近所の奥さま方たちが噂している

妖怪丸呑みは人の心に住んでいる存在だ

いつ誰のいる場所に現れるかはわからない

ちょっとするともうあなたのそばにいるのかもしれない

私が見た丸呑みの姿は植物のようで瞳は1つだった そして口が恐ろしくデカい

きっとあの丸呑みは私の心の弱さが生み出した

しかしあの丸呑みを救う事が出来るのもきっと私だ

私がもっと強くなれば・・・

 

妖怪丸呑みの姿形はそれぞれ違う

それは一人ひとりすべて心の形は違うからだ

犬が吠えている 悲しそうに吠えている

街が死んでしまう前に

今大切な事は家族の団結力 一人ではなく共に歩く事が必要だと
妖怪丸呑みは そうなる前に そうならないようにその姿を見せてくれたのかもしれない