中長期的な税制のあり方を検討する政府税制調査会は6日、基礎問題小委員会を開き、配偶者控除の見直しを議論した。現在は専業主婦世帯に有利になりがちな制度の改革に向け、専業主婦世帯でも共働き世帯でも税負担軽減額が同じになる「税額控除」を導入するアイデアなど複数案が示された。政府税調は改革に向けた「たたき台」を年内に示し、数年かけて見直しの結論を得たい考えだ。
現行の配偶者控除は、専業主婦やパートで働く妻の年収が103万円以下なら夫の課税所得から一定額が差し引かれる仕組み。ただ現行制度の場合、専業主婦のいる高所得者世帯ほど税制面の恩恵を受けているとの問題が指摘されている。
同日の会合では、専業主婦世帯でも共働き世帯でも中立的になる制度づくりに向けた複数案が示された。
現在の配偶者控除は、課税所得を計算する前に夫の年収から38万円を差し引く「所得控除」の仕組みとなっている。これに対し、一橋大の佐藤主光教授は、所得税額を計算した上で定額を差し引く「税額控除」にした方が「給与の手取額が計算しやすくなる」と主張した。
政府税調の中里実会長(東大教授)は、高所得者ほど配偶者控除で受ける利点が薄くなる仕組みを提案した。政策研究大学院大の大田弘子教授は「今の配偶者控除をやめ、児童向け税額控除を創設すべきだ」と腹案を示した。中里会長は「いずれのメニューにもプラス、マイナスの両面があり、時間をかけて議論したい」と述べた。
2014年10月7日【SankeiBizより転載】
配偶者控除を廃止する、という話は何年も前から繰り返し議論されてきました。
しかし、今回の様な政府税制調査会の議論は、本当に多くの国民のためになるのでしょうか。
2014年4月15日の東京新聞のデータによれば、妻の給与所得が103万円以下である(=配偶者控除の適用を受けている)方は約1400万人だそうです。
妻に限定している(主夫はカウントされていない)ことを考えると、その数はさらに増えると予想されます。
簡単に言えば、この方々の税額控除(所得税を減税する制度)をなくすかどうか、というのが今回の議論です。
「専業主婦世帯でも共働き世帯でも中立的になる制度づくり」と聞くと、なんだか正しいことをしてくれていそうな感じがしますが、簡単に騙されてはいけません。
耳触りのよい言葉の裏で、約1400万世帯の増税を目論んでいるのです。
しかし、当ブログで繰り返し述べてきたとおり、同じ増税でも、どこに負担を求めているのか、という点に着目しなければなりません。
つまり、この約1400万世帯に担税力があるのかどうかを考えることが肝要なのです。
記事にあるように、もしかしたら専業主婦のいる高所得者世帯ほど税制面の恩恵を受けているのかもしれません。
だとすると、配偶者控除廃止は応能負担に即した議論だといえます。
しかし、そうではないと私は考えます。
2014年5月26日の全国商工新聞の中で浦野広明先生もおっしゃっていますが、育児、介護、病気、老齢で就労できない方が沢山おり、そういった方々の生存権の保障をする制度が配偶者控除制度なのです。
したがって、共働き世帯の感情を煽って専業主婦世帯(専業主婦の生存権)からの税収を増やそうとする今回の議論は間違っていると結論付けることができます。
約1400万人の専業主婦のうち、何%くらいが就労したくても就労できない弱者なのか。
そういったデータも出さずに配偶者控除廃止の議論をするのはとってもナンセンスです。