『52ヘルツのクジラたち』 | yoshi's drifting weblog -揺蕩記-

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私の一番好きな言葉、揺蕩(たゆた)う。……
日常の、ふとした何気ない出来事について、
その揺蕩う様を書き留めていきます。

 

 

何年前でしょうか、……3年くらい前?の本屋大賞受賞作の町田そのこの『52ヘルツのクジラたち』を読了しましたよ。

 

 

これまでは芥川賞受賞作と本屋大賞受賞作は決まってかた早めに読むようにしてたんですが、芥川賞受賞作は文藝春秋の発売と同時に読んでますけど、本屋大賞受賞作は文庫が出るまで待つことにしたのですよ。

 

 

何故なら、ちょっとつまらなくなってきたから。

 

 

いわゆる「純文学」と呼ばれる作品ばっかりを読んできた身としては、本屋大賞受賞作はエンタメの、それも全国の書店員が選んだという「より身近な」作品だと思ってまして、故にものすごく新鮮な発見と面白さがあったわけです。

 

 

『博士の愛した数式』なんて抜群に面白かったし、『一瞬の風になれ』を読んで私は陸上競技の面白さを知ったし、百田尚樹は好きじゃないけど『海賊と呼ばれた男』は歴史小説として面白かったし、リリーフランキーの『東京タワー』だって冲方丁の『天地明察』だって三浦しをんの『舟を編む』だってエンタメ小説としての強度が備わってたし、そういった作品に溢れてたんですよね。

 

 

でも、いつからでしょうかね、……『かがみの孤城』あたりからでしょうか。

 

 

ちょっとつまらないというか、……どことなくラノベ感が匂っちゃったんですよね。

 

 

ラノベがダメだとは思いませんが、でも私の求めてるものではない。

 

 

いくら書店員さんたちがプッシュしてても、面白くないものは面白がれない。

 

 

大人が読んでも楽しめる児童文学と、ご都合主義満載のラノベとでは、領域が違う。

 

 

なので、そこで本屋大賞にちょっと冷めてしまって、でもどんな作品が大賞に選ばれたのかは興味があるので、じゃあ文庫を待ちましょう。

 

 

ということで、待ち始めたのが『52ヘルツのクジラたち』から。

 

 

ただ、母親が読みたいとせがまれて買ってあげた(割には途中で飽きて積読状態だった)『同志少女よ敵を撃て』はハードカバーで買ったので、それは既に読了済み。

 

 

その次の『汝、星のごとく』と『成瀬は天下を取りにいく』は文庫待ちです。

 

 

さて『52ヘルツのクジラたち』。

 

 

最近、映画化されてもいて、なかなか面白そうではあったんですが、私の裡の映画アンテナが

 

 

(スルーしとけ)

 

 

と出たので、スルーしちゃったんですが、でもまあ原作の方を先に知っておくほうがより味わえるだろうということで、原作を先に読むことにして。

 

 

お話は、……

 

 

大分県のある村に1人の女性が引っ越してきたのだけど、彼女は何か仕事をしてる風でもないし、近隣の人とコミュニケーションも碌に取れないので、何か訳ありなのだろうという噂が立ち始めるのだけど、実はその女性が引っ越してきたのには「ある理由」があって、そんな折、その女性が偶然、一人の少年と出会うのだけど、……

 

 

といった感じ。

 

 

でまあ、その女性・貴瑚と村の青年・村中が「ムシ」と呼ばれる少年を巡って色々な騒動に巻き込まれながら、実はその背景にある貴瑚の辛い過去のエピソードがオーバーラップしてきて、……という風に展開していくわけですが。

 

 

その展開が、まあ確かになかなか壮絶なものでして、ただのその辛さがどこか作られたお話みたいな?印象を受けちゃうんです。

 

 

小説なんだから作られた話なのは当たり前の話なんですが、それを感じさせないリアリティってあると思うんですよね。

 

 

それが、この小説には、ちょっと感じられなかったのです私は。

 

 

なぜこの人物はそういう行動をとったのか、そこでそう感じたのか、そしてそうせざるを得なかったのか、……といった物事の動機や理由や衝動が、お話の展開のために強引に歪曲されてるような、都合のいい解釈をされてるような、そんな気分になってしまったのです。

 

 

なので、物語を読んでいても、なんていうかものすごく虚飾を感じてしまいまして、それが物語の辛さが辛くなるほど余計に強く感じできてしまうのですよ。

 

 

キャラクターに血が通ってない。

 

 

その一言に尽きてしまう。

 

 

お話の展開、演出、収束の仕方も、なんだか強引だし、ドラマチックに仕立てるために不必要な展開が入ってたりして、どうにも乗れない。

 

 

そんな感じで終始読み進めてしまいましたとさ。

 

 

読んでて、ちょっとでも「!」ってなった場面、……多分全くなかったもんなぁ。

 

 

ただ。

 

 

唯一、この小説を映画化した時の主人公・貴瑚を杉咲花が演じてる。というのは、実は結構大きいのでは?とも思いますね。

 

 

映画未見なのでアレですが、この血が通ってないキャラクターに、杉咲花ならば血が通わせられてるのでは?なんて思うと、映画はちょっと見たくもあります。

 

 

他の演者、……小説の中の重要人物「アンさん」という人を志尊淳が演じてるみたいで、そこはすごく(う〜ん?)ってなりますけど、他の配役もちょっと訝しがる部分が大きいですが、でも杉咲花だけはやってくれるのでは?という期待が持てますね。

 

 

というわけで、映画の出来を確かめるためにも原作は読んでおいて良かったのかも?と思えましたかね?

 

 

次に予定してる『汝、星のごとし』も結構、いやぁなムード漂ってるんですが、どうなんでしょうかね?

 

 

『流浪の月』の印象がちょっと悪かったので、気にはなるんですが、まあ来年までお預けですかね?

 

 

さて次。

 

 

……読みたい本が尽きた!!!

 

 

なので、『ユリイカ』の金原ひとみ特集号を読んで潰しときます。

 

 

森見登美彦先生の本でも読み返すかな?

 

 

ではでは。