正味現在価値(NPV:Net Present Value)法とは、投資によって生み出されるキャッシュフローの現在価値と初期投資額を比較し、現在価値が投資額を上回るかどうかによって投資を評価するものです。

そこでまず、現在価値とは何かを見てみましょう。


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<現在価値>
今日の1000円と1年後の1000円とはどちらが価値があるのでしょうか?
答えは今日の1000円です。
なぜなら今日の1000円を銀行に預け1年後に引き出したとしたら、その時には元金の1000円に1年分の利子(金利5%だったら50円)がつき、1050円になっているからです。
では、1年後の1000円を現在の価値に直したらいくらになるのでしょうか。
答えは952円です。
1000円を年率5%で割り引くと、952円になるのです。
逆に952円を利子5%で1年間銀行に預けたら1000円になります。
この場合、952円を現在価値、5%を割引率、1000円を将来価値といいます。
同じ1000円でも、2年後、3年後に手に入る1000円だったり、割引率が違っていたら現在価値も変わってきます。
割引率7%のときに3年後に1000円が手に入るとしたら、その1000円の現在価値は816円です。
現在価値を求める計算式は以下のとおりです。

 現在価値 = 将来価値 ÷ (1+r)<sup>n</sup>
 ※r=割引率、n=期間(年数)

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投資によって生み出されるキャッシュフローについても同様の方法で現在価値を求めることができます。

この場合割引率に何を使うかが問題になります。

基本的には「そのプロジェクトに対して出資者が期待する収益率」(期待収益率、またはハードルレート)で割り引きます。

たとえば、ある企業の新規事業で、その事業からは投資額に対して15%のリターンが欲しいと考えるのであれば、15%で割り引きます。


まえに例で上げているプロジェクトAとBで考えてみます。

画像では、2つのプロジェクトから生み出されるキャッシュフローと、その現在価値を示しました。

かわばたよしひろのblog-5-16


この場合、最低でも10%のリターンを求めると想定し、割引率を10%としました。


ここで現在価値の求め方について、プロジェクトBの3年目をもとに考えてみます。

その年、プロジェクトBからは1300万円のキャッシュフローが得られています。

この1300万円は現在得られるものではなく、将来得られるものだから3年後の将来価値です。

これを現在価値に割り引くためには1300÷(1+0.1)<sup>3</sup>を計算します。

答えは、表にあるように977万円です。

これが正しいかどうかを確かめるためには、逆に977を年率10%で運用したら3年後に1300万円になるかどうかを考えてみればよいです。

977×(1+0.1)<sup>3</sup>=1300


すべての年のキャッシュフローの現在価値が求められたら、いよいよ正味現在価値を求めます。

正味現在価値とはキャッシュフローの現在価値の総計と初期投資額の差です。

プロジェクトAでは、1年目以降のキャッシュフローの現在価値を合計すると4169になります。

これから初期投資額4300を差し引くと、答えは-131。

つまり、正味現在価値がマイナスになるのです。

これは、投資資金が回収できないか、資金は回収できても会社が期待する収益を上げられないことを意味します。


もしこのプロジェクトが5年で終わらず、5年後もキャッシュをもたらすと予想されるならば、そのキャッシュの額によって正味現在価値は変わってきます。

また5年目でプロジェクトが終了したとしても、終了後に設備の売却収入が見込めたりするならば、やはり正味現在価値は変わり、プラスになる可能性もあります。

しかし、今回はそのような可能性はないと考えると、正味現在価値がマイナスであるプロジェクトAは投資に値しない、ということになります。


プロジェクトBでは、正味現在価値がプラスになっています。

したがってプロジェクトBは初期投資よりリターンの方が大きく、投資する価値があるといえます。