楽器の音と自分の音 | 近藤嘉宏オフィシャルブログ「Brillanteな瞬間」Powered by Ameba

楽器の音と自分の音

ピアニストは色々なピアノを弾く。


会場では毎回違うピアノだし、


メーカーだって様々。


だからこそ重要になってくるのが、


自分自身の「持ち音」。




本番の音は、


リハーサルで調律師さんと綿密にコンタクトを取りながら


ピアノに細かな調整を施していただいた結果。


ハンマーの固さ、


打弦距離、鍵盤の深さ、接近、


ソフトペダルの変化の仕方などなど…


自分の望むアクション調整や音色、音質を実現するまで、


0.1ミリ単位の根気強い調整が続く。


調律師さんには本当に感謝。




当然、ピアノの中身をより詳しく理解している方が、


無駄な時間を調律師さんに費やさせないですむし、


毎回違うピアノであっても、


自分が理想とする状態との誤差を極力小さくすることができる。


それに、求める音をよりフォーカスし限定していくことができる。


調律師さんだって毎回同じ人ではないから、


うまく伝わらない間に時間切れとなって


納得いかぬまま本番に臨む事態だけは避けたい。


という訳で、ピアノの知識を少しでも増やすため、


毎回のコンサートが僕にとっては勉強の場。




こうして方向性にこだわってを追求していくと、


自分の「持ち音」が出来てくる。


だからこだわればこだわるほど、


自分の「持ち音」が明確に個性を発揮してくれる。


そうなれば、たとえピアノのメーカーが違っても、


「持ち音」の個性には何ら影響はない。


メーカーの違いというのは、


ニュアンス、音色、


ダイナミクス、バランスなど


様々な部分に現れるけれど、


「持ち音」の個性と楽器の特色が結びついて、


それぞれの楽器の魅力を浮かび上がらせるというのが理想的。




勿論、演奏スタイルや解釈はとても重要だけど、


それらを構成するのは音。


音のクオリティによって、


それらがより魅力的にもなるし、凡庸にもなる。


何といっても音は命。


音に始まり音に終わるといっても良いと思う。


それぐらい大切なものだから、


普段から音に繋がるあらゆる知識を増やし、


自分自身の指向性をより研ぎ澄まし


演奏会場でも可能な限り


そこに心血を注ぐべきなのだと思う。