衆議院選挙が終了し、自民党が負けて国民民主党が大躍進しました。
昨今の選挙は劇場型で、先日の都知事選でも都民には“正体不明”の、前安芸高田市長の石丸信二氏が、Youtubeなどの戦略に乗って躍進しました。
(選挙後、石丸氏のパーソナリティが報道され、早々に忘れられてしまいました)
選挙直前のムーブメントは、選挙結果に大きく影響するのです。
今回の選挙は、数か月前から繰り返しテレビで「裏金」問題が取りだたされ、この審判を問う選挙ではありました。
しかし一般家庭ではこの裏金問題はすでに飽きられたトピックで、選挙前に何かムーブメントがあれば裏金問題は吹き飛ぶだろうと思っていました。
たとえば、石破総理に何か外交などでファインプレーがあったり、または自民党や民主党にネガティブニュースがあったりしたら、それが何倍にも増幅して選挙結果に直結する。
しかし、大きなファインプレーも不祥事も起きず、自民党が政党支部に振り込んだ2000万円が赤旗に歪曲気味にリークされ、結局裏金選挙を引きずったまま投票日を迎え、自民党は大敗しました。
正直言って、朝早く出かけて夜帰ってくる私のようなビジネスパーソンにとって、候補者が駅前で街頭演説したって聞く機会自体ありません。
アナクロな街頭演説や選挙カー巡りなんて、ほとんどの有権者に刺さらない。
結局、誰に投票するかは、なあんとなくの気分によるものであり、その時のニュースやムーブメントに流される、大勢の有権者はそんなものなのです。
今回の自民党の大敗と、立憲民主党の勝利は、特に選挙前にムーブメントが起こらなかったため、結局は裏金問題が争点になって、自民党の受け皿である立憲民主党が勝ったのです。
立憲民主は「自民党にお灸を」の有権者が選んだ先であり躍進しましたが、データによると60代・70代の高齢者がいまだに立憲民主を支持しており、これはこの世代の持つ社会民主主義への郷愁によるものでしょう。
また、明確に公明党、共産党が苦戦する様がはっきりとしてきました。
公明党も共産党も、1960年代の高度成長期の貧困層を取り込んで拡大した政党です。
日本経済が成長する中で、その成長にあずかれない層は、共産主義のロジックに引き込まれました。
また、生活苦の人々を仏の教えで救済していったのが創価学会であり、公明党であったのです。
しかし、21世紀になってこうした世代が減っていき、そもそもこのご時世に、共産主義も仏の教えも新たに信じる人も激減しています。
共産党員や創価学会員をみると、2世、3世のような人が目立ちます。
そうした人くらいしか公明党や共産党支持者にならない構造なのです。
れいわ新選組の支持が増えているのは、共産主義や仏の教えが関係しない弱者の政党だからでしょう。
さて、今回の選挙で特筆すべきは国民民主党です。
そもそも民主党の内紛時に、現実路線グループが割った政党で、存在感がありませんでした。
しかし、今回の「手取りを増やす」という政策はビジネスパーソンに刺さりました。
コロナ禍での国民一律10万円給付や、非課税所得世帯への給付金の虚しさを国民は経験しています。
国民全員にバラマくのは空虚、非課税世帯にバラマくのは資産家の老人にも配ることになり空虚です。
しかし、手取りを増やすのは働く人たちにとっては、自分たちの生活苦対策としてとてもイメージしやすいのです。
確かに国民民主党が言うように、インフレでモノの値段が上がり、遅れて収入も上がれば、それに応じて所得控除も上げるというのは説得力があります。
(結局はこれもバラマキですが)
そして給与所得者は、高額な社会保険料に圧迫されて、手取り額がとにかく減っています。
手取りが上がる未来は、給与所得者に刺さるのです。
給与所得者にとって、配偶者の収入調整・・・・103万円の壁・130万円の壁など・・・・は普段からやっており、「所得控除を増やして手取りを上げる」という主張は理解しやすいのです。
この主張の巧妙な点は、「消費税を無くす」「一律給付をする」というようなファンタジーのバラマキとは違う、リアリティのあるバラマキだったのです。
こうして玉木雄一郎氏の見事な選挙戦術によって、国民民主党は大躍進しました。
この国民民主党の躍進は、「手取りを増やす」というムーブメントによるものです。
「リアリティのあるバラマキが効く」というこの結果は、今後の各党の選挙戦に影響していくでしょう。