今回の「Phase」に関わったミュージシャンは3人。(ガヤコーラスとクラップ省く)
しかも、1人はゲスト的立ち位置で、1曲だけ参加してもらった。
だから、実質2人のミュージシャンと作り上げたと言っても差し支えない筈。
デビューから15年の作品の中で最少人数での制作になった。
そこまで人数を絞りこんで作品を作ろうと思っていたわけではないんだけど、サウンドの方向性的に人数が増える可能性は低いとは思っていた。(ここまで少ないとは予想してないが)
今回の「Phase」とSURFACEの「Phase」での1番の違いはこの人数差が生み出すサウンドの色だと思う。
周りクドい言い方になってるけど、関わってくれるミュージシャンが少ないのなら、その分頑張るのが機械。
そうなるとおのずとサウンドはデジタルに、無機質になっていく。
どんなに生っぽく表現しようとも生にはならない。(当たり前だが)
それを承知の上で作品作りをしていく事に。
15年前にSURFACEとしてデビューする以前の俺と永谷喬夫(元SURFACEのギターリスト。以下永谷)はDTM(自宅でパソコンと向き合いながら作る手法って言えばわかりやすい?)を主体とした制作だった。
俺の声、永谷のギター以外は全て機械任せ。(ベースは永谷がたまに弾いていたけど)
デビュー前に生ドラムでの演奏なんてした事がなかった。
それが何がどうなってかデビューを機に生演奏主体のユニットとして世に飛び出してしまった(笑)。
それが嫌だったとか言いたいわけじゃなく、だけど「あれ?こんなユニットだったっけ?」と自分自身不思議な感覚だったのは間違いない。
そんな不思議な感覚はあるものの、生演奏の楽しさを教えてくれたのは武部聡志さん。
知る人ぞ知る今でも第一線で大活躍しているプロデューサーであり、恩師。
その影響をモロに受けた状態でアルバムを制作した結果がSURFACEの1stアルバムだった。
デモはデジタルだったのにそれを更にアレンジして生主体にするぐらい生に拘っていた。
だけど、DTMをメインにしていた2人がもしそのままの制作スタイルでアルバムを作ったらどうなっていただろうか?
きっと今回の新たな「Phase」のような作品になっていたんじゃないか?なんて思ったり。
もちろん15年分のキャリア、そして15年分の俺自身の老化があるし(笑)、何より永谷と作ったわけじゃないから俺の独りよがり、自己完結、自己満足でしかなく、同じにはならないけどね。
アルバムの歌詞に関しては旧友の野口圭に相談した。
「15年前のままでいく」
結局この結論に達した。
直せないわけじゃない。
ただ、書き直すとなると1部分だけ直すと言う事が出来ず、大幅に変更せざるを得ないと。
それは俺も野口も、きっとリスナー側も望んじゃいない。
ならば「書き直しはナシ」と言う事で話はまとまった。
アルバムを制作するにあたり永谷とも電話で話をした。
「Phaseを作ろうと思うんだよ」の俺の言葉に「へぇ~!すごいじゃん!」とは永谷。
なんとなく流れで「手伝ってよ」って言ったけど、(それじゃSURFACEだろう・・・)って頭の中でツッコミを入れた。
永谷も「いいよ~」とか言ってたけども(笑)。
そんな俺のソロアルバム「Phase」をセルフライナーノーツっぽく紐解いていこうかなと。
とにかく簡潔にまとめずに、思い出した事をツラツラ書くので長い。
しかも、椎名慶治の「Phase」を聞く前に読んでしまうとネタバレ的な部分も多々あるかも知れないので、まずは音から楽しみたいと言う方はここでそのPC?スマホ?を閉じる事をお勧めします。
いいですか?
ここから先を読むか読まないかはアナタの判断ですからね?
・今回の「Phase」も勿論「空っぽの気持ち」からスタートするわけだけど、原曲にはイントロらしいイントロが無く、缶を蹴る音から始まるのが印象的だったと思う。
SURFACEとして初めて生演奏のレコーディングをしたのがこの曲で、その記念すべき曲を記念すべき1stアルバムの1曲目にしよう!と誰かが言った。(俺だったっけ?)
だから、当初アルバムのオープニングなんて考えて作ってなかったのにひょんな事で1曲目にしてしまったもんだから最後の最後に空き缶を蹴る音を貼り付けてなんとなくアルバムの冒頭らしさを演出した。
それが本当だと証明出来る作品がある。
SURFACEの「SURFACE」。
SURFACE/SURFACE
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オリジナルアルバム3枚を出した後の初ベストアルバム「SURFACE」にも「空っぽの気持ち」は収録されている。
が、空き缶を蹴る音が収録されていない。
何故缶の音が消せるのか。
過去の「Phase」の時はマスタリング作業、最後の最後で缶の音とミックスアウトを繋いでいたから。
あれ・・・いきなり難しい話になってる?
缶の音と、「空っぽの気持ち」は別の音源だったと言う事なんだけど。
もっと大袈裟に言えば1曲目「缶の音」、2曲目「空っぽの気持ち」って言えばわかる?
その空き缶の音はアルバムジャケット撮影時にオフショット用のビデオカメラで撮っていた映像の音。
その時の様子は「SURFACE CLIPS 0102」と言うDVDにて確認が出来た気もする。
CLIPS 0102 [DVD]/SURFACE
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意外に良い音で撮れてたもんだなぁって今も思う(笑)。
SURFACEの1stアルバム「Phase」で使用され、3rdアルバム「ROOT」でも使用され、今回の俺の「Phase」でも使用される事になるとは空き缶に感謝だ(笑)。
今回の「空っぽの気持ち」は曲頭いきなり鳴り出すアナログシンセ。
生では再現出来ない、波形を途中でぶった切られ、細切れにされたエレキギターとアナログシンセの絡みの後に空き缶を10数年振りに蹴飛ばす音がくる。
この時点でアルバムへの期待感が上がる人がいるならばそれはSURFACE愛なのかも(笑)?
ここで今回俺の頭の中の音を再現、具現化してくれたアレンジャーを紹介しとく。
名前はオダクラユウ。(以下オダクラ)
崎本大海さんのアルバムの作詞をオダクラから頼まれた事から始まり、俺の「I Love Youのうた」、「ハッピーロンリーライフ」のアレンジを逆にお願いしたりという関係。
新曲「Make it happen」のアレンジもオダクラである。(詳しくはまた後日にでも)
今回の「Phase」を作る前の打ち合わせの段階で何人かのアレンジャーを候補に挙げていて、その中にオダクラもいた。
でまぁ、「一緒に仕事した事あるし、まずはオダクラとなんか1曲やってみますか」と。
選ばれた曲は別になんもこだわったわけではないんだけど「線」にした。(この時のアレンジは後々結局ボツになるが)
その時の制作がスムーズだった事もあり、オダクラにお願いするアレンジの数を増やそうかとなった。
その言葉を受けたオダクラから後日「出来れば全ての曲に関わりたいです」と熱いメッセージが届く。
全てに関わりたいその1番の理由が、オダクラは15年前の「Phase」の初回限定版(CDケースにシールがどーんと貼ってあるやつ)や「Phase」のスコアブックまで持ってるぐらいのファンだったらしくて(笑)。
なるほど、だったら俺じゃ分からないファンには印象深い部分とかも分かってそうだし、オダクラとやるのは何か面白い事が出来るかも?と。
そんな流れで「やれるところまで2人でやってみよう」と。
「空っぽの気持ち」に話を戻すけど、「空っぽの気持ち」でオダクラ的印象深い部分ってどこよ?ってなるわけだ。
・イントロで空き缶を蹴飛ばす音
・2番サビ前のアコギのキメ。
・ギターソロでギターとボーカルの掛け合い。
こういった細かい部分は残ってたら嬉しいとはオダクラ。
こうやって全てを壊す(勿論良い意味で)気持ちでアレンジをしていく俺と、残したいと言う部分を取り敢えず残して俺に提案してくるオダクラ。
不思議なバランスでアレンジは進んでいった。
勿論「空っぽの気持ち」に限らず全曲でオダクラが残したい部分と、俺の新しいアレンジ推しとのせめぎ合いは続いた(笑)。
今回アレンジからMIX以外の制作の全てをオダクラのプライベートスタジオ、「STUDIO DaG」で行った。
ボーカル録りもオダクラのスタジオで行ったわけだけど、スタジオと言えども普通の部屋を改装してスタジオにしているので、俺のボーカルレコーディングのブースは元ウォークインクローゼット(笑)。
なので当たり前だが空調がない。
レコーディングは真夏日。
想像出来るだろうか?
37歳のおっさんがウォークインクローゼットの中でヘッドフォンをしながら汗だくになってる姿。
それが全12曲分・・・。
灼熱過ぎて汗かき過ぎるわけで、全ての寿命が短い。
体力、気力、精神力、声帯、その他諸々。
とにかく短期決戦で歌をレコーディングした記憶ばかり脳裏に焼きついてる。
毎回ボーカルレコーディングの日にはTシャツの着替えを数枚カバンに詰め込んで、さらさらパウダーシートなるものも用意していた(笑)。
まぁその暑さはこの際おいといて(本当はおいておきたくない話ではあるが)、15年振りに歌った「Phase」の難しいことこの上なし(笑)。
15年前の俺に言いたい、
そりゃ喉壊すよ!!
CDだからどうにか出せる声ってのがあるんですよねぇ。
自分的にも奇跡に近いテイクみたいなさ。
それを生で再現するのは本当に難しい。
昔からライブで高い声とか出てなかったもんなぁ俺(笑)。
2ndアルバム(既に喉を酷使してのレコーディングだった)を出した後に1曲「ボクハミタサレル」をレコーディングし、その後入院を余儀なく・・・と、苦い思い出に浸ってしまいそうになる(笑)。
今回のレコーディングは毎回歌い終わる頃には更に老け込んだ俺がウォークインクローゼットから発見された事でしょう(笑)。
とにかく、アルバムの1曲目らしさは今回の「Phase」のほうが意識してる分だけ出てるけど、だから正しい!とかまったく思ってない。
これはこれでアリだなって思う程度。
2番のAでもう一度空き缶の音が出てくるのが好きだったりする。
なんとなく過去とリンクする瞬間を味わいながら、新たな幕開けを楽しんでもらえたら嬉しいなぁと思います。
・どうも巷では「神曲」と呼ばれているとの噂がある「さぁ」(笑)。
噂ってかアニソンのオムニバス?アルバムに「さぁ」が収録されるぐらい、アニソンとして独り立ちしておりました。
そんな「さぁ」ですもの、アレンジしづらい!!
神曲を再構築するのはとても至難の技で(壊せないという意味で)、色々考えた挙句に巡り巡って結局原曲のイメージを強く残してのアレンジにする事が終着点に。
勿論そんな中でも新たなエッセンスを加えてはいますが、あまりイメージが原曲から反れるような事はしてないんじゃないかなぁって。
1番の違いはイントロのスラップベースのフレーズがシンセベースでは表現出来ず、ギターフレーズに変更した部分かなと。
そしてやはり高い。
「さぁ」の高さは異常。
過去の、それこそSURFACEの時のライブ映像を見ていてもちゃんと全部の言葉を歌ったためしがない曲。
「さぁ 吸い込んでくれ」の部分をお客さんがフォローしてくれなかったらブレスが続かない(笑)。
感謝しております。
それほどの高さにこだわってた理由ってのがありました。
1998年ってまだハイトーン男性ボーカリストがモテモテの時代だったんですよ。
売れる必須条件の1位がハイトーンってぐらいに。(これマジで)
そう、売れたかったんだよ!!
いや、モテたかったんだよ!!
だから自分の限界を突破してました。
今回のアルバムで1,2を争う困難を極めた曲で、1度録ったモノを確認して後日少し修正を加えた唯一の曲でもあります。
・そして「なにしてんの」。
様々な方々から(著名人とかも含め)「この曲のおかげで頑張れた」とか言われちゃうSURFACE最大のメジャー曲と言っても過言ではない筈。
「さぁ」と立て続けにくるこの曲順のいやらしさ(笑)。
掴みはオッケーって感じなこの流れのせいで15年後こんなに頭を抱えることになるとは思いもしないわけで・・・。
「さぁ」と同じぐらい、いやそれ以上にアレンジに頭を悩ませた曲でした。
出した結論は「さぁ」以上に「まんま」。
生演奏がデジタルにはなったものの、やってる事はほぼ一緒。
ギターソロも限りなく原曲。
コーラスワークもほぼ。
本当にいじりようのない、記憶に刷り込まれた曲なんだなぁって痛感しました。
それだけ、俺にとっても影響力の強い曲だったと言うわけなんでしょうね。
今回の「なにしてんの」でも、人の心を少しでも動かす事が出来るとしたらこれ以上アーティスト冥利に尽きる事はございません。
・「ふたり」はキーボードの村原康介(以下ムラ)の活躍が大きい曲。
冒頭で語った、「今回のアルバムでは3人のミュージシャンに手伝ってもらった」の2人目がこのムラ。
彼は今年の3月に行われた「Strip? or Stripper? Type-A」のサポートして初対面。
まだ26歳で荒削りながらも、そのセンスは本物。
彼を今回のアルバムで起用した・・・と言うと偉そうですが、「今作品作ってるんだけど遊びおいでよ」ぐらいに誘ったのがキッカケで。
ムラに「なんか適当にさ、印象に残るフレーズ弾いて」と「ふたり」のイントロをいきなり任せる無茶振りから生まれたのが今回のイントロ。
一度聞いたら忘れないフレーズで即採用。
これはムラに感謝。
そして原曲と大きく違うのはディスコティックに刻まれたバスドラ、シンベ、ギターのユニゾンの気持ちよさというか。
なのに原曲の匂いが残ってる。
なんかね、計算高く作ってたわけじゃないんだけど、凄い良い絡み方をしてくれたなぁって思って。
そしてギターソロで驚きの展開になるんだけど、これ、当初オダクラは原曲のギターソロをまんま作ってまして。
で、俺に「壊してほしい」と。
今までの流れでいくと原曲のギターソロがそのまんま綺麗にハマる。
オダクラの考えは間違えなくひとつの答えとして正しい。
だけど、「さぁ」、「なにしてんの」でかなり原曲の匂いを残す事になった。
「ふたり」は全然アレンジ違うのにそこまでの変わった感が出ていなかったからこそのギターソロでの変貌を出したかった。
って事でギターソロだけは何度もやり直しをしたと言う希有(けう)な曲。
歌の抑揚と言うか、感情の乗せ方が15年前はわからなかった曲だったのに今回歌ってみたら違和感がなかった。
ただ、22歳の自分に「こう歌いなよ」って言ったところでやはりそれは無理な話。
表現力ってのはやはり人に言われて直せるほど簡単なモノじゃないなぁと思う。
ディレクションをされても無理なもんは無理って事です(笑)。
・「Face to Face ~がんばってます~」(以下FtF)は、忘れもしない初の永谷と俺の2人での作品です。
と言うのも、この曲はデビューシングル「それじゃあバイバイ」のカップリングで、武部聡志さんプロデュースではないと言うややこしい曲なんです。
1曲目は武部さん。
2曲目はセルフプロデュース。
その経緯は「2人でやりたい」と言う永谷の一言から。
それまで1年以上お世話になった武部さんから離れ、カップリングは自分達の力だけでやりたい。
その時に1曲目の「それじゃあバイバイ」と遜色ないクオリティのモノを作る事で自分の立ち位置と言うか、音楽のセンスを確かめたかったんじゃないかなぁって。
永谷は自分でスタジオをブッキングして、そこに自分の機材を持ち込み、自分の友達のドラマー(茂野君)にドラムを叩いてもらい、それを土台にアレンジを構築して最後に俺の歌をのせる。
ボーカル以外の録音まで全部自分ですると言う頑張り屋さん(笑)。
ギターレック当日にイントロのギターリフを変更すると言う事件まで起こすほど最後の最後までこだわった曲。
そんなエピソードのある曲ではあるのですが、その当時の「FtF」は永谷色の強いアレンジなわけです。
武部さんと離れてまで押し出したかった「らしさ」を前面に出したわけですから。
だけど、今回の「FtF」は俺なりのアレンジ。
15年前に俺が主導権を握ったアレンジをするならば、きっと今回のようなもう少しアグレッシブなアレンジだったと思う。
と言うのも、最後の最後で変更になったギターリフって今回のようにもっとディストーション!!って感じで歪みの強いリフだった。
今だから言えるけど俺はそっちの方が好みでした(笑)。
過去を否定する気はないけど、自分なりに仕上げた今回の「FtF」も結構お気に入りだったりします。
久々に歌ったわけですが、こんなにハッキリ「僕だって本当は自分以外どうだっていいんだよ」なんて言っちゃう人だったんだなぁって。
今なら「僕だって本当は自分以外どうだっていいのかも知れないって思いながらもやっぱり君の事ばかり考えちゃって辛いやなんて言わないよ絶対」とかハッキリしてるのかしてないのかな人だと思いません(笑)?
22歳の自分と37歳の自分では、同じ人でもこんなに感性が違う。
だからこそ歌詞を書き直すのは1部分だけでは済まないって言う野口圭との会話に繋がるわけですね。
・今回のアルバム制作で1番に手をつけ、そして一度ボツになった「線」。
アルバム全体の方向性がまだハッキリと見えないなか、試しに作った為に起きた出来事。
そのおかげで、アルバムの方向性をしっかり見極め、決める事が出来たと言うエピソードが。
イントロから原曲にはなかったコーラスがあったり、エンディングではシャウトのようなフェイクがあったりで印象がかなり変わった曲かなって。
実はイントロやエンディングで歌ってる英語のコーラスは本編の歌詞とは微妙に関係がない。
「Stripe & Border」なんて歌ってるわけですが、これ実はデモテープの時の「線」の元タイトルなんです。
そのデモテープではこの言葉をエンディングでフェイクしたりしてて。
その印象が何年経っても記憶からまったく薄れなかった。
だったら意味つながらなくてもその時のその言葉のままでフェイクしてやれ!!と。
実はSURFACEのライブでもずっと言ってた言葉なんですよね。
surface 2008「Invitation No.6」+「SAIKAI」 [DVD]/surface
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証拠はこのライブDVDにありますよ。
2枚組みで1枚はあのデビュー以来10年振りに再会した武部聡志さんとのスペシャルライブの模様ですからね。
まだ見た事が無い人は必見かもしれませんよ!!
まぁ話を「線」に戻して、そんな昔からしていたフェイクを今回初めてレコーディングするにあたって、欲が出てきてコーラスまで作っちゃったって感じでして・・・。
初めて永谷からデモテープを聞かされた時にめっちゃかっこいいなって思った曲だったし、なんか他の曲以上にこだわりぬいて作った感が満載です。
ヒイキ気味です(笑)。
そして頭の中でピアノがガンガンに鳴っていたので、ムラを呼び、俺の欲しいテイストを細かく伝えて、それをムラのセンスで弾かせる。
2番のAメロはもっとこう弾いてとか、ムラに何度かダメ出しをして自分の理想に限りなく近くしてもらったり。
最終的にピアノが良い感じに暴れる曲に仕上がりました。
そしてボーカルが大きく違う部分がラスサビの「誰もが 見えない線を越えたい」と言うサビの折り返し後。
あれは去年の音霊の時に作ったメロディで、その後も「線」を演奏する時はそのバージョンで歌っていました。
そんなところから自分の中ではこっちのメロディのほうがシックリくるようになってしまい、今回メロディを変更すると言う決断をしました。
他にも数箇所ありますが、過去のメロディを忠実に再現してない事に違和感を覚える人もいるかも知れませんね。
その中でもこの部分はまったく違うわけで、その違和感も大きいと思います。
どうか、どうか大きな心で受け止めて!!
私をスキーに連れてって!!
・「バランス」は「Phase」に収録されているver.と「なあなあ」のカップリングの「バランス -transit mix-」の2つがあり、どちらのアレンジも知ってる人の多くは後者のver.が好きというのが印象に残ってました。(1999年の話)
そこで「Phase」には実際関係ないんですが、「transit mix」でだけ歌っているラップの部分も採用しようかなぁってアレンジを進めていきましたね。
原曲はどこかラテン調な空気が漂っているのですが、デモテープではもっとデジタルなロックで、最終的に何故あんなにラテン調になったのか記憶が曖昧(笑)。
多分また永谷の大幅アレンジ変更がレコーディング寸前にあったのかも知れません(笑)。
今回の「バランス」はどちらかと言うと「transit mix」に近く、デジタルとエレキギターの融合、打ち込みのドラム等、共通項がいっぱいです。
なので全然アレンジ違うんだけど、意外とすんなり受け入れられちゃう曲に仕上がってる気もするんですよねぇ。
シンコペーション(詳しい人に聞いてください)しまくるオケがどこか90年代臭さを醸し出してると感じるのは俺だけですかね?
新しくない、懐かしいと感じるアレンジ。
狙った通りです!!
そして1、2番のサビは原曲とコード進行のパターンを変えて少しクールな印象にしました。
最後のサビがもっと開けるようにと言う演出です。
「好きなもんは好きだからしょうがない」って言う開き直りに全精力を注ぐアレンジってわけです(笑)。
なので若干開放感が弱いと1、2番のサビで感じた方は正解です。
原曲をよく聞いてる証拠です。
感謝。
・今回のアルバムに関わってくれた3人目のミュージシャンが末延麻裕子さん。
そんな彼女との出会いは・・・いや、出会ってない!!俺まだ出会ってない!!
いまだに顔を見た事がございません。(画像では拝見しております。とても美人さん。)
バイオリニストって事以外、情報もない中で会社の上と上のやりとりで、本人達は会う事無く話が進みまして。
末延さんがOKならば是非やりたいですとお伝えしたところ、相手側もOKとの事で、まぁ文通みたいなもんですよ(笑)。
簡単にイメージを沸かせると、バラードで弾いてもらうというのがモアベターな案だと思いながら、それじゃ一緒にやる意味がない。
意味がないというか、面白くない。
クラシックな人とは無縁なサウンドとの融合をしてもらってこそ一緒にやる意味、価値があると思い、「Phase」で1番ハイパー曲でコラボしたら?と「ひとつになっちゃえ」を選びました。
原曲と違い、新たにスウィング(詳しい人に聞いてください)した「ひとつになっちゃえ」はクラシックと180度真逆と言っても過言ではないかなと。
バイオリン以外のオケを構築し、それを末延さん側に送る。
それに対し末延さんが思うように弾いたバイオリンを戻してくれる。
「あとはそちらで好きにお使いください」的なメッセージとともに。
って事で1本化されたバイオリンのデータを開き、そのフレーズを確認しつつ、「このフレーズはここにも欲しいな」と思えばコピーして貼り付ける。
俺なりのセンスで末延さんが弾いてくれたバイオリンが更にブラッシュアップされたものが完成しました。
新たにオーバーダブで誰か他の人に弾いてもらったり、シンセのストリングス等一切足してないのに厚みが増すマジックを施したわけです。
是非末延さん本人の感想が聞いてみたいなと。
きっと「一体どうやったんですか?」と驚いてくれるに違いない。
「じゃあ答えは食事でもしながら・・・」とか良い!!とっても良いね!!
なんだよ!!エロいオヤジのように俺を見るなよ!!
ようじゃない、エロいオヤジなんだよ!!
バイオリンだけじゃなく、「ひとつになっちゃえ」はハンドクラップが結構重要なポイントになってます。
あの軽快さはムラを含め友人とせーので何度か録った賜物。
俺1人のハンドクラップを何十人オーバーダブしても出せないんですよ。
やはり手の大きさが違う人達がせーので叩くからこそ起きる音なんだなと。
過去の「ひとつになっちゃえ」とはスウィングしてる以外それほどアレンジはいじってないわけですが、随分違って聞こえますよね。
ノリって大事だよなぁ。
過去よりキーを下げても高過ぎて血管切れそうになりました。
何よりコーラスが高い。
メインですら高いのにその3度上とか4度上とかマジ当分勘弁してください(笑)。
いやこの曲に限らずね。
その昔この曲のコーラスが高過ぎて出なくてバリピッチ(詳しい人に聞いてください)下げて録ったのを思い出すわぁ。
・「それじゃあバイバイ」は先行配信が決まっていたので、早めに仕上げる必要がありました。
だけど「さぁ」や「なにしてんの」と同じようにSURFACEを代表する曲、しかもデビューシングルだし内心ドキドキしながらアレンジをしていったわけです。
オダクラに構成やフレーズを伝えてそれを具現化していく。
イントロのリフレインは過去の「それじゃあバイバイ」を使おうと思ったけど権利問題とか色々ややこしい事になりそうだったので新たに作ったver.に差し替えをしたわけです。
イメージとしては15年前の「それじゃあバイバイ」がラジオから流れてきてるみたいな感じで受け取ってもらえたらイメージ通りなんですけどね!!
全体的にポップ感よりロック感が強まり、今の椎名慶治が明確に打ち出せた1曲じゃないかなって。
過去と同じに歌わないのは何度も言うように過去を否定してるわけでも嫌いなわけでもなく、今の自分を押し殺してしまうとも思うんですよね。
勿論おおむね一緒ですが、ところどころ今だから思いつく、今だから許せる、今だからやりたい事ってのを全曲に散りばめてるつもりです。
「それじゃあバイバイ」で言えば2番のサビの終わりがちょっと追加されたり。
イントロやエンディングで歌ってるコーラスは2000年のライブでのコーラスと一緒だったり。
証拠見ます?
Face to Fate Dec.20 2000 at Kokusai Forum [DVD]/SURFACE
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このDVD見たら同じコーラスやってるんですよ。
お客さんが。
ちょっと憎い演出してるでしょ(笑)?
MVも折角作ったので是非見てもらいたいですね。
って言って無理矢理見せる俺(笑)。
アルバムのジャケット撮影と同日、神奈川の工場跡地にて撮影されたもので、夏真っ盛りの7月でした。
モノクロだったり、シルエットだったりでクールな映像ですが、真夏日の工場跡地で屋根はあるものの廃墟で、エアコンとかあるわけもないとくれば想像出来ますよね。
そう、汗だく。
椎名汁だく。
余裕ぶっこいて歌ってるように見えますがすっげぇ暑かったですからね。
Phase/椎名慶治
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このジャケットも見た目はクールですよね。
めっちゃ暑かったですけどね。
横顔だけはイケメンとか言われます。
実に嬉しくない褒め言葉です。
むしろ褒め言葉なのか?です。
極論を言うとMVは工場跡地で撮る必要があったのか?すらも疑問符です。
朝まで議論したいぐらいの疑問符です。
どうか椎名汁が報われていますように・・・。
にしても「それじゃあバイバイ」を21歳と22歳のワカモノが作ったと言う事実がやはり凄いなぁって思うこの頃です。
・「歌い続けよう 自分の為に」と言う歌詞が15年前より更に自分に響いた「まだまだ」。
アレンジの方向は何故かそれほど悩まなかったんですよね。
イントロの感じとか、ピアノの感じとか、頭に描いたまんま。
それより15年前の永谷との会話の部分に頭を抱えました。
あれをそのまんまやるにはもう1人喋る相手が必要。
勿論それは永谷しかいないわけで、これだけをお願いする事も考えたんですが、「はぁ?」とか言われそうでやめました(笑)。
あ!逆にアポなしで電話して突然「まだまだって15年前から言ってるけどあとどんぐらい待てばいいんだ?」って言って「はぁ?」って言葉を永谷から貰いそれをCDに入れちゃえば良かった!!と今思った(笑)。
まぁそんな事は出来るわけもなく、結局1人で喋る事にしたんですが、すると今度は昔よりインパクトは弱いわけです。
うぐぐ・・ってなりました。
台詞だけではインパクト負けちゃう・・・考えに考え抜いて出した答えが、新たなラップみたいなメロディを付けようと。
オダクラにソロの尺を倍にしてもらい、そのデータを貰って自宅で新たなメロディを作り歌詞を書く。
歌詞カードには表記はしていませんが、ハッキリ分かるように歌ったつもりなので、新たに書き下ろした場所も楽しんでもらえたらなぁって思います。
って言うかね、その台詞やラップみたいな部分のバッキングすっごいカッコ良いのに申し訳ないことしたなぁって思うんだよね(笑)。
でもだからこそ、そんなバッキングだからこそ俺も新たなメロディを作りたいって思えたんだろうしね。
オダクラ、ムラ、ご了承ください(笑)。
ホント15年なんて「まだまだ」だなぁなんて思いますし、出来れば「まだまだ」歌い続けたいなって思ってます。
「逆境なんかに くじけるな」誰かさんの言葉を胸にいきましょう。
・イントロのピアノのフレーズが印象深い「冬の終わり」。
原曲にはイントロがない。
だけど、今回はなんか切なさが増すようなイントロが欲しいなぁって思っていて。
となればまたムラを呼び出しなんか弾けと強引な経緯があり(笑)、あのイントロが生まれた。
ムラにはその他にもストリングスアレンジでも相当世話になった。
切なさが更に出る旋律をと細かく手直しをしてくれたり。
友人の英語教師である井上君から頼んでもいないのに英語の文章が届く。
「使えそうなら使ってください」的な。
有難い事だ。
って事で新たに追加されたイントロ部分にアドリブでハメてみた。
そんなラフに制作してるとは思えないほど全体的にはまりが良い。
正直、今回の「冬の終わり」は名曲な気がしてしまう。
原曲にはそんな感情はなかった。
「あぁ、こんなに良い曲だったのにそれを表現仕切れなかったんだ・・・」って15年経った今やっと永谷が作った名曲に気付かされる。
22歳には難しかったんだろうねぇ。
表現力っていつの間に身につくものなのだろうか?キャリアさえあれば必ず身につくのだろうか?
じゃあ身につくとして一体何年目で?っていうかそもそも表現力上がってんの?
音楽のこういった部分はホントに分かりづらい。
ただ、15年前より今回の「冬の終わり」が良いと思ってる自分がいる事実だけはここにある。
・「それじゃあバイバイ」、「さぁ」、「なにしてんの」
そんなヒットシングルに挟まれてもう1枚このアルバムにはシングルだった曲が収録されてる。
それが2ndシングルだった「ジレンマ」。
他の3曲と比べたら若干認知度は低くはあるが、実はこの曲はSURFACEのデビューシングルとして元々話が進んでいた曲。
アレンジも歌詞も違うんだが、間違いなく「ジレンマ」でデビューする筈だった。
その話は大人の事情ってやつでボツになったのだが、それぐらいSURFACEチームとしては推し曲だった。
武部さんも含め(元々の「ジレンマ」のプロデュースは武部さんである)みんなで一度完成させた「ジレンマ」は日の目を見る事なくそのままお蔵入り。(いまだに音源あるかも)
なので俺の中では「Phase」に収録された「ジレンマ」は言わばver.2なわけです。
もう既にリアレンジされて大きく生まれ変わった「ジレンマ」。
そのver.2の形を大事にし、だけどそのままじゃ終わらないギターソロでの新展開を作り完成させたのが今回のver.。
ギターソロでのコーラスも「冬の終わり」同様に井上君が頼んでもいないのに(笑)、「使えたらどうぞ」と書き上げてくれたもの。
関わりたいと思ってくれた井上君と、それを上手く俺が活用出来た事から生まれたコラボだね。
当初はギターソロとこの英語コーラスは別々の役割をさせようと思っていて、コーラスパート、ギターソロパートが分かれていた。
何度かそれを聞いていたらまどろっこしい、無駄にダラダラ長いと感じてしまい、だったらいっそのことギターソロにコーラスぶち込んでみるかと。
それがこの完成形になった。
ギターソロのコード進行も直してなければ、コーラスの旋律も直していない。
本当にギターソロに元々あったコーラスのデータをぶち込んだらケミストリーが起きたと言う感じ。
オダクラは仕切りに俺に「流石です!」って言うけど、ほぼ全部アドリブの直感でしかないから「流石」じゃないんだけどね(笑)。
あの間奏でアルバムのラストと言う感じが増した気がしてもいるし、凄い気に入ってるパートの一つ。
ライブとかじゃアレ再現出来ないんだろうなぁ(笑)。
「ジレンマ」が終わり、もう1度1曲目の「空っぽの気持ち」に戻った時のループ感も気持ちよかったし、って事はアルバムの軸にあるものがしっかりブレずに全体に流れてるからだろうなと。
何度も繰り返し聞いてもらえるアルバムになったかなぁ?と思う。
如何でしたか?俺なりに「Phase」について色々語ってみました。
この場を借りて関わってくれた全員に感謝をしたいと思います。
文句も言わず俺のワガママに最後まで付き合ってくれたオダクラユウ。
ありがとう。
最高のピアノを弾いてくれたムラ。
ありがとう。
1度もお会いは出来ませんでしたが、スタイリッシュなバイオリンを弾いてくれた末延麻裕子さん。
ありがとう。
頼まなくても欲しい時に欲しいワードをくれる井上洋平くん。
ありがとう。
足りない部分を補って更に曲を良くしてくれるエンジニアのナベくん。
ありがとう。
いつの間にか素晴らしいエンジニアになっていた田中くん。
ありがとう。
ナチュラルながらもグッと胸にくる音に仕上げてくれる宮本さん。
ありがとう。
いつもそばで支えてくれるNディレクター。
ありがとう。
こんな無茶な企画に賛同してくれたマネージャーであり社長S。
ありがとう。
そしてこれを読んでくれてるアナタ。
きっと「Phase」も聞いてくれることでしょう。
ありがとう。
15年前SURFACEとしてデビュー出来た事、そして今現在も音楽を続けられる事、その他語り尽くせない全てに。
ありがとう。
椎名慶治はまだまだ歌い続けます。
応援よろしくお願いします!
Phase/High Wind
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Strip? or Stripper? [DVD]/High Wind
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しかも、1人はゲスト的立ち位置で、1曲だけ参加してもらった。
だから、実質2人のミュージシャンと作り上げたと言っても差し支えない筈。
デビューから15年の作品の中で最少人数での制作になった。
そこまで人数を絞りこんで作品を作ろうと思っていたわけではないんだけど、サウンドの方向性的に人数が増える可能性は低いとは思っていた。(ここまで少ないとは予想してないが)
今回の「Phase」とSURFACEの「Phase」での1番の違いはこの人数差が生み出すサウンドの色だと思う。
周りクドい言い方になってるけど、関わってくれるミュージシャンが少ないのなら、その分頑張るのが機械。
そうなるとおのずとサウンドはデジタルに、無機質になっていく。
どんなに生っぽく表現しようとも生にはならない。(当たり前だが)
それを承知の上で作品作りをしていく事に。
15年前にSURFACEとしてデビューする以前の俺と永谷喬夫(元SURFACEのギターリスト。以下永谷)はDTM(自宅でパソコンと向き合いながら作る手法って言えばわかりやすい?)を主体とした制作だった。
俺の声、永谷のギター以外は全て機械任せ。(ベースは永谷がたまに弾いていたけど)
デビュー前に生ドラムでの演奏なんてした事がなかった。
それが何がどうなってかデビューを機に生演奏主体のユニットとして世に飛び出してしまった(笑)。
それが嫌だったとか言いたいわけじゃなく、だけど「あれ?こんなユニットだったっけ?」と自分自身不思議な感覚だったのは間違いない。
そんな不思議な感覚はあるものの、生演奏の楽しさを教えてくれたのは武部聡志さん。
知る人ぞ知る今でも第一線で大活躍しているプロデューサーであり、恩師。
その影響をモロに受けた状態でアルバムを制作した結果がSURFACEの1stアルバムだった。
デモはデジタルだったのにそれを更にアレンジして生主体にするぐらい生に拘っていた。
だけど、DTMをメインにしていた2人がもしそのままの制作スタイルでアルバムを作ったらどうなっていただろうか?
きっと今回の新たな「Phase」のような作品になっていたんじゃないか?なんて思ったり。
もちろん15年分のキャリア、そして15年分の俺自身の老化があるし(笑)、何より永谷と作ったわけじゃないから俺の独りよがり、自己完結、自己満足でしかなく、同じにはならないけどね。
アルバムの歌詞に関しては旧友の野口圭に相談した。
「15年前のままでいく」
結局この結論に達した。
直せないわけじゃない。
ただ、書き直すとなると1部分だけ直すと言う事が出来ず、大幅に変更せざるを得ないと。
それは俺も野口も、きっとリスナー側も望んじゃいない。
ならば「書き直しはナシ」と言う事で話はまとまった。
アルバムを制作するにあたり永谷とも電話で話をした。
「Phaseを作ろうと思うんだよ」の俺の言葉に「へぇ~!すごいじゃん!」とは永谷。
なんとなく流れで「手伝ってよ」って言ったけど、(それじゃSURFACEだろう・・・)って頭の中でツッコミを入れた。
永谷も「いいよ~」とか言ってたけども(笑)。
そんな俺のソロアルバム「Phase」をセルフライナーノーツっぽく紐解いていこうかなと。
とにかく簡潔にまとめずに、思い出した事をツラツラ書くので長い。
しかも、椎名慶治の「Phase」を聞く前に読んでしまうとネタバレ的な部分も多々あるかも知れないので、まずは音から楽しみたいと言う方はここでそのPC?スマホ?を閉じる事をお勧めします。
いいですか?
ここから先を読むか読まないかはアナタの判断ですからね?
・今回の「Phase」も勿論「空っぽの気持ち」からスタートするわけだけど、原曲にはイントロらしいイントロが無く、缶を蹴る音から始まるのが印象的だったと思う。
SURFACEとして初めて生演奏のレコーディングをしたのがこの曲で、その記念すべき曲を記念すべき1stアルバムの1曲目にしよう!と誰かが言った。(俺だったっけ?)
だから、当初アルバムのオープニングなんて考えて作ってなかったのにひょんな事で1曲目にしてしまったもんだから最後の最後に空き缶を蹴る音を貼り付けてなんとなくアルバムの冒頭らしさを演出した。
それが本当だと証明出来る作品がある。
SURFACEの「SURFACE」。
SURFACE/SURFACE
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オリジナルアルバム3枚を出した後の初ベストアルバム「SURFACE」にも「空っぽの気持ち」は収録されている。
が、空き缶を蹴る音が収録されていない。
何故缶の音が消せるのか。
過去の「Phase」の時はマスタリング作業、最後の最後で缶の音とミックスアウトを繋いでいたから。
あれ・・・いきなり難しい話になってる?
缶の音と、「空っぽの気持ち」は別の音源だったと言う事なんだけど。
もっと大袈裟に言えば1曲目「缶の音」、2曲目「空っぽの気持ち」って言えばわかる?
その空き缶の音はアルバムジャケット撮影時にオフショット用のビデオカメラで撮っていた映像の音。
その時の様子は「SURFACE CLIPS 0102」と言うDVDにて確認が出来た気もする。
CLIPS 0102 [DVD]/SURFACE
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意外に良い音で撮れてたもんだなぁって今も思う(笑)。
SURFACEの1stアルバム「Phase」で使用され、3rdアルバム「ROOT」でも使用され、今回の俺の「Phase」でも使用される事になるとは空き缶に感謝だ(笑)。
今回の「空っぽの気持ち」は曲頭いきなり鳴り出すアナログシンセ。
生では再現出来ない、波形を途中でぶった切られ、細切れにされたエレキギターとアナログシンセの絡みの後に空き缶を10数年振りに蹴飛ばす音がくる。
この時点でアルバムへの期待感が上がる人がいるならばそれはSURFACE愛なのかも(笑)?
ここで今回俺の頭の中の音を再現、具現化してくれたアレンジャーを紹介しとく。
名前はオダクラユウ。(以下オダクラ)
崎本大海さんのアルバムの作詞をオダクラから頼まれた事から始まり、俺の「I Love Youのうた」、「ハッピーロンリーライフ」のアレンジを逆にお願いしたりという関係。
新曲「Make it happen」のアレンジもオダクラである。(詳しくはまた後日にでも)
今回の「Phase」を作る前の打ち合わせの段階で何人かのアレンジャーを候補に挙げていて、その中にオダクラもいた。
でまぁ、「一緒に仕事した事あるし、まずはオダクラとなんか1曲やってみますか」と。
選ばれた曲は別になんもこだわったわけではないんだけど「線」にした。(この時のアレンジは後々結局ボツになるが)
その時の制作がスムーズだった事もあり、オダクラにお願いするアレンジの数を増やそうかとなった。
その言葉を受けたオダクラから後日「出来れば全ての曲に関わりたいです」と熱いメッセージが届く。
全てに関わりたいその1番の理由が、オダクラは15年前の「Phase」の初回限定版(CDケースにシールがどーんと貼ってあるやつ)や「Phase」のスコアブックまで持ってるぐらいのファンだったらしくて(笑)。
なるほど、だったら俺じゃ分からないファンには印象深い部分とかも分かってそうだし、オダクラとやるのは何か面白い事が出来るかも?と。
そんな流れで「やれるところまで2人でやってみよう」と。
「空っぽの気持ち」に話を戻すけど、「空っぽの気持ち」でオダクラ的印象深い部分ってどこよ?ってなるわけだ。
・イントロで空き缶を蹴飛ばす音
・2番サビ前のアコギのキメ。
・ギターソロでギターとボーカルの掛け合い。
こういった細かい部分は残ってたら嬉しいとはオダクラ。
こうやって全てを壊す(勿論良い意味で)気持ちでアレンジをしていく俺と、残したいと言う部分を取り敢えず残して俺に提案してくるオダクラ。
不思議なバランスでアレンジは進んでいった。
勿論「空っぽの気持ち」に限らず全曲でオダクラが残したい部分と、俺の新しいアレンジ推しとのせめぎ合いは続いた(笑)。
今回アレンジからMIX以外の制作の全てをオダクラのプライベートスタジオ、「STUDIO DaG」で行った。
ボーカル録りもオダクラのスタジオで行ったわけだけど、スタジオと言えども普通の部屋を改装してスタジオにしているので、俺のボーカルレコーディングのブースは元ウォークインクローゼット(笑)。
なので当たり前だが空調がない。
レコーディングは真夏日。
想像出来るだろうか?
37歳のおっさんがウォークインクローゼットの中でヘッドフォンをしながら汗だくになってる姿。
それが全12曲分・・・。
灼熱過ぎて汗かき過ぎるわけで、全ての寿命が短い。
体力、気力、精神力、声帯、その他諸々。
とにかく短期決戦で歌をレコーディングした記憶ばかり脳裏に焼きついてる。
毎回ボーカルレコーディングの日にはTシャツの着替えを数枚カバンに詰め込んで、さらさらパウダーシートなるものも用意していた(笑)。
まぁその暑さはこの際おいといて(本当はおいておきたくない話ではあるが)、15年振りに歌った「Phase」の難しいことこの上なし(笑)。
15年前の俺に言いたい、
そりゃ喉壊すよ!!
CDだからどうにか出せる声ってのがあるんですよねぇ。
自分的にも奇跡に近いテイクみたいなさ。
それを生で再現するのは本当に難しい。
昔からライブで高い声とか出てなかったもんなぁ俺(笑)。
2ndアルバム(既に喉を酷使してのレコーディングだった)を出した後に1曲「ボクハミタサレル」をレコーディングし、その後入院を余儀なく・・・と、苦い思い出に浸ってしまいそうになる(笑)。
今回のレコーディングは毎回歌い終わる頃には更に老け込んだ俺がウォークインクローゼットから発見された事でしょう(笑)。
とにかく、アルバムの1曲目らしさは今回の「Phase」のほうが意識してる分だけ出てるけど、だから正しい!とかまったく思ってない。
これはこれでアリだなって思う程度。
2番のAでもう一度空き缶の音が出てくるのが好きだったりする。
なんとなく過去とリンクする瞬間を味わいながら、新たな幕開けを楽しんでもらえたら嬉しいなぁと思います。
・どうも巷では「神曲」と呼ばれているとの噂がある「さぁ」(笑)。
噂ってかアニソンのオムニバス?アルバムに「さぁ」が収録されるぐらい、アニソンとして独り立ちしておりました。
そんな「さぁ」ですもの、アレンジしづらい!!
神曲を再構築するのはとても至難の技で(壊せないという意味で)、色々考えた挙句に巡り巡って結局原曲のイメージを強く残してのアレンジにする事が終着点に。
勿論そんな中でも新たなエッセンスを加えてはいますが、あまりイメージが原曲から反れるような事はしてないんじゃないかなぁって。
1番の違いはイントロのスラップベースのフレーズがシンセベースでは表現出来ず、ギターフレーズに変更した部分かなと。
そしてやはり高い。
「さぁ」の高さは異常。
過去の、それこそSURFACEの時のライブ映像を見ていてもちゃんと全部の言葉を歌ったためしがない曲。
「さぁ 吸い込んでくれ」の部分をお客さんがフォローしてくれなかったらブレスが続かない(笑)。
感謝しております。
それほどの高さにこだわってた理由ってのがありました。
1998年ってまだハイトーン男性ボーカリストがモテモテの時代だったんですよ。
売れる必須条件の1位がハイトーンってぐらいに。(これマジで)
そう、売れたかったんだよ!!
いや、モテたかったんだよ!!
だから自分の限界を突破してました。
今回のアルバムで1,2を争う困難を極めた曲で、1度録ったモノを確認して後日少し修正を加えた唯一の曲でもあります。
・そして「なにしてんの」。
様々な方々から(著名人とかも含め)「この曲のおかげで頑張れた」とか言われちゃうSURFACE最大のメジャー曲と言っても過言ではない筈。
「さぁ」と立て続けにくるこの曲順のいやらしさ(笑)。
掴みはオッケーって感じなこの流れのせいで15年後こんなに頭を抱えることになるとは思いもしないわけで・・・。
「さぁ」と同じぐらい、いやそれ以上にアレンジに頭を悩ませた曲でした。
出した結論は「さぁ」以上に「まんま」。
生演奏がデジタルにはなったものの、やってる事はほぼ一緒。
ギターソロも限りなく原曲。
コーラスワークもほぼ。
本当にいじりようのない、記憶に刷り込まれた曲なんだなぁって痛感しました。
それだけ、俺にとっても影響力の強い曲だったと言うわけなんでしょうね。
今回の「なにしてんの」でも、人の心を少しでも動かす事が出来るとしたらこれ以上アーティスト冥利に尽きる事はございません。
・「ふたり」はキーボードの村原康介(以下ムラ)の活躍が大きい曲。
冒頭で語った、「今回のアルバムでは3人のミュージシャンに手伝ってもらった」の2人目がこのムラ。
彼は今年の3月に行われた「Strip? or Stripper? Type-A」のサポートして初対面。
まだ26歳で荒削りながらも、そのセンスは本物。
彼を今回のアルバムで起用した・・・と言うと偉そうですが、「今作品作ってるんだけど遊びおいでよ」ぐらいに誘ったのがキッカケで。
ムラに「なんか適当にさ、印象に残るフレーズ弾いて」と「ふたり」のイントロをいきなり任せる無茶振りから生まれたのが今回のイントロ。
一度聞いたら忘れないフレーズで即採用。
これはムラに感謝。
そして原曲と大きく違うのはディスコティックに刻まれたバスドラ、シンベ、ギターのユニゾンの気持ちよさというか。
なのに原曲の匂いが残ってる。
なんかね、計算高く作ってたわけじゃないんだけど、凄い良い絡み方をしてくれたなぁって思って。
そしてギターソロで驚きの展開になるんだけど、これ、当初オダクラは原曲のギターソロをまんま作ってまして。
で、俺に「壊してほしい」と。
今までの流れでいくと原曲のギターソロがそのまんま綺麗にハマる。
オダクラの考えは間違えなくひとつの答えとして正しい。
だけど、「さぁ」、「なにしてんの」でかなり原曲の匂いを残す事になった。
「ふたり」は全然アレンジ違うのにそこまでの変わった感が出ていなかったからこそのギターソロでの変貌を出したかった。
って事でギターソロだけは何度もやり直しをしたと言う希有(けう)な曲。
歌の抑揚と言うか、感情の乗せ方が15年前はわからなかった曲だったのに今回歌ってみたら違和感がなかった。
ただ、22歳の自分に「こう歌いなよ」って言ったところでやはりそれは無理な話。
表現力ってのはやはり人に言われて直せるほど簡単なモノじゃないなぁと思う。
ディレクションをされても無理なもんは無理って事です(笑)。
・「Face to Face ~がんばってます~」(以下FtF)は、忘れもしない初の永谷と俺の2人での作品です。
と言うのも、この曲はデビューシングル「それじゃあバイバイ」のカップリングで、武部聡志さんプロデュースではないと言うややこしい曲なんです。
1曲目は武部さん。
2曲目はセルフプロデュース。
その経緯は「2人でやりたい」と言う永谷の一言から。
それまで1年以上お世話になった武部さんから離れ、カップリングは自分達の力だけでやりたい。
その時に1曲目の「それじゃあバイバイ」と遜色ないクオリティのモノを作る事で自分の立ち位置と言うか、音楽のセンスを確かめたかったんじゃないかなぁって。
永谷は自分でスタジオをブッキングして、そこに自分の機材を持ち込み、自分の友達のドラマー(茂野君)にドラムを叩いてもらい、それを土台にアレンジを構築して最後に俺の歌をのせる。
ボーカル以外の録音まで全部自分ですると言う頑張り屋さん(笑)。
ギターレック当日にイントロのギターリフを変更すると言う事件まで起こすほど最後の最後までこだわった曲。
そんなエピソードのある曲ではあるのですが、その当時の「FtF」は永谷色の強いアレンジなわけです。
武部さんと離れてまで押し出したかった「らしさ」を前面に出したわけですから。
だけど、今回の「FtF」は俺なりのアレンジ。
15年前に俺が主導権を握ったアレンジをするならば、きっと今回のようなもう少しアグレッシブなアレンジだったと思う。
と言うのも、最後の最後で変更になったギターリフって今回のようにもっとディストーション!!って感じで歪みの強いリフだった。
今だから言えるけど俺はそっちの方が好みでした(笑)。
過去を否定する気はないけど、自分なりに仕上げた今回の「FtF」も結構お気に入りだったりします。
久々に歌ったわけですが、こんなにハッキリ「僕だって本当は自分以外どうだっていいんだよ」なんて言っちゃう人だったんだなぁって。
今なら「僕だって本当は自分以外どうだっていいのかも知れないって思いながらもやっぱり君の事ばかり考えちゃって辛いやなんて言わないよ絶対」とかハッキリしてるのかしてないのかな人だと思いません(笑)?
22歳の自分と37歳の自分では、同じ人でもこんなに感性が違う。
だからこそ歌詞を書き直すのは1部分だけでは済まないって言う野口圭との会話に繋がるわけですね。
・今回のアルバム制作で1番に手をつけ、そして一度ボツになった「線」。
アルバム全体の方向性がまだハッキリと見えないなか、試しに作った為に起きた出来事。
そのおかげで、アルバムの方向性をしっかり見極め、決める事が出来たと言うエピソードが。
イントロから原曲にはなかったコーラスがあったり、エンディングではシャウトのようなフェイクがあったりで印象がかなり変わった曲かなって。
実はイントロやエンディングで歌ってる英語のコーラスは本編の歌詞とは微妙に関係がない。
「Stripe & Border」なんて歌ってるわけですが、これ実はデモテープの時の「線」の元タイトルなんです。
そのデモテープではこの言葉をエンディングでフェイクしたりしてて。
その印象が何年経っても記憶からまったく薄れなかった。
だったら意味つながらなくてもその時のその言葉のままでフェイクしてやれ!!と。
実はSURFACEのライブでもずっと言ってた言葉なんですよね。
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証拠はこのライブDVDにありますよ。
2枚組みで1枚はあのデビュー以来10年振りに再会した武部聡志さんとのスペシャルライブの模様ですからね。
まだ見た事が無い人は必見かもしれませんよ!!
まぁ話を「線」に戻して、そんな昔からしていたフェイクを今回初めてレコーディングするにあたって、欲が出てきてコーラスまで作っちゃったって感じでして・・・。
初めて永谷からデモテープを聞かされた時にめっちゃかっこいいなって思った曲だったし、なんか他の曲以上にこだわりぬいて作った感が満載です。
ヒイキ気味です(笑)。
そして頭の中でピアノがガンガンに鳴っていたので、ムラを呼び、俺の欲しいテイストを細かく伝えて、それをムラのセンスで弾かせる。
2番のAメロはもっとこう弾いてとか、ムラに何度かダメ出しをして自分の理想に限りなく近くしてもらったり。
最終的にピアノが良い感じに暴れる曲に仕上がりました。
そしてボーカルが大きく違う部分がラスサビの「誰もが 見えない線を越えたい」と言うサビの折り返し後。
あれは去年の音霊の時に作ったメロディで、その後も「線」を演奏する時はそのバージョンで歌っていました。
そんなところから自分の中ではこっちのメロディのほうがシックリくるようになってしまい、今回メロディを変更すると言う決断をしました。
他にも数箇所ありますが、過去のメロディを忠実に再現してない事に違和感を覚える人もいるかも知れませんね。
その中でもこの部分はまったく違うわけで、その違和感も大きいと思います。
どうか、どうか大きな心で受け止めて!!
私をスキーに連れてって!!
・「バランス」は「Phase」に収録されているver.と「なあなあ」のカップリングの「バランス -transit mix-」の2つがあり、どちらのアレンジも知ってる人の多くは後者のver.が好きというのが印象に残ってました。(1999年の話)
そこで「Phase」には実際関係ないんですが、「transit mix」でだけ歌っているラップの部分も採用しようかなぁってアレンジを進めていきましたね。
原曲はどこかラテン調な空気が漂っているのですが、デモテープではもっとデジタルなロックで、最終的に何故あんなにラテン調になったのか記憶が曖昧(笑)。
多分また永谷の大幅アレンジ変更がレコーディング寸前にあったのかも知れません(笑)。
今回の「バランス」はどちらかと言うと「transit mix」に近く、デジタルとエレキギターの融合、打ち込みのドラム等、共通項がいっぱいです。
なので全然アレンジ違うんだけど、意外とすんなり受け入れられちゃう曲に仕上がってる気もするんですよねぇ。
シンコペーション(詳しい人に聞いてください)しまくるオケがどこか90年代臭さを醸し出してると感じるのは俺だけですかね?
新しくない、懐かしいと感じるアレンジ。
狙った通りです!!
そして1、2番のサビは原曲とコード進行のパターンを変えて少しクールな印象にしました。
最後のサビがもっと開けるようにと言う演出です。
「好きなもんは好きだからしょうがない」って言う開き直りに全精力を注ぐアレンジってわけです(笑)。
なので若干開放感が弱いと1、2番のサビで感じた方は正解です。
原曲をよく聞いてる証拠です。
感謝。
・今回のアルバムに関わってくれた3人目のミュージシャンが末延麻裕子さん。
そんな彼女との出会いは・・・いや、出会ってない!!俺まだ出会ってない!!
いまだに顔を見た事がございません。(画像では拝見しております。とても美人さん。)
バイオリニストって事以外、情報もない中で会社の上と上のやりとりで、本人達は会う事無く話が進みまして。
末延さんがOKならば是非やりたいですとお伝えしたところ、相手側もOKとの事で、まぁ文通みたいなもんですよ(笑)。
簡単にイメージを沸かせると、バラードで弾いてもらうというのがモアベターな案だと思いながら、それじゃ一緒にやる意味がない。
意味がないというか、面白くない。
クラシックな人とは無縁なサウンドとの融合をしてもらってこそ一緒にやる意味、価値があると思い、「Phase」で1番ハイパー曲でコラボしたら?と「ひとつになっちゃえ」を選びました。
原曲と違い、新たにスウィング(詳しい人に聞いてください)した「ひとつになっちゃえ」はクラシックと180度真逆と言っても過言ではないかなと。
バイオリン以外のオケを構築し、それを末延さん側に送る。
それに対し末延さんが思うように弾いたバイオリンを戻してくれる。
「あとはそちらで好きにお使いください」的なメッセージとともに。
って事で1本化されたバイオリンのデータを開き、そのフレーズを確認しつつ、「このフレーズはここにも欲しいな」と思えばコピーして貼り付ける。
俺なりのセンスで末延さんが弾いてくれたバイオリンが更にブラッシュアップされたものが完成しました。
新たにオーバーダブで誰か他の人に弾いてもらったり、シンセのストリングス等一切足してないのに厚みが増すマジックを施したわけです。
是非末延さん本人の感想が聞いてみたいなと。
きっと「一体どうやったんですか?」と驚いてくれるに違いない。
「じゃあ答えは食事でもしながら・・・」とか良い!!とっても良いね!!
なんだよ!!エロいオヤジのように俺を見るなよ!!
ようじゃない、エロいオヤジなんだよ!!
バイオリンだけじゃなく、「ひとつになっちゃえ」はハンドクラップが結構重要なポイントになってます。
あの軽快さはムラを含め友人とせーので何度か録った賜物。
俺1人のハンドクラップを何十人オーバーダブしても出せないんですよ。
やはり手の大きさが違う人達がせーので叩くからこそ起きる音なんだなと。
過去の「ひとつになっちゃえ」とはスウィングしてる以外それほどアレンジはいじってないわけですが、随分違って聞こえますよね。
ノリって大事だよなぁ。
過去よりキーを下げても高過ぎて血管切れそうになりました。
何よりコーラスが高い。
メインですら高いのにその3度上とか4度上とかマジ当分勘弁してください(笑)。
いやこの曲に限らずね。
その昔この曲のコーラスが高過ぎて出なくてバリピッチ(詳しい人に聞いてください)下げて録ったのを思い出すわぁ。
・「それじゃあバイバイ」は先行配信が決まっていたので、早めに仕上げる必要がありました。
だけど「さぁ」や「なにしてんの」と同じようにSURFACEを代表する曲、しかもデビューシングルだし内心ドキドキしながらアレンジをしていったわけです。
オダクラに構成やフレーズを伝えてそれを具現化していく。
イントロのリフレインは過去の「それじゃあバイバイ」を使おうと思ったけど権利問題とか色々ややこしい事になりそうだったので新たに作ったver.に差し替えをしたわけです。
イメージとしては15年前の「それじゃあバイバイ」がラジオから流れてきてるみたいな感じで受け取ってもらえたらイメージ通りなんですけどね!!
全体的にポップ感よりロック感が強まり、今の椎名慶治が明確に打ち出せた1曲じゃないかなって。
過去と同じに歌わないのは何度も言うように過去を否定してるわけでも嫌いなわけでもなく、今の自分を押し殺してしまうとも思うんですよね。
勿論おおむね一緒ですが、ところどころ今だから思いつく、今だから許せる、今だからやりたい事ってのを全曲に散りばめてるつもりです。
「それじゃあバイバイ」で言えば2番のサビの終わりがちょっと追加されたり。
イントロやエンディングで歌ってるコーラスは2000年のライブでのコーラスと一緒だったり。
証拠見ます?
Face to Fate Dec.20 2000 at Kokusai Forum [DVD]/SURFACE
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このDVD見たら同じコーラスやってるんですよ。
お客さんが。
ちょっと憎い演出してるでしょ(笑)?
MVも折角作ったので是非見てもらいたいですね。
って言って無理矢理見せる俺(笑)。
アルバムのジャケット撮影と同日、神奈川の工場跡地にて撮影されたもので、夏真っ盛りの7月でした。
モノクロだったり、シルエットだったりでクールな映像ですが、真夏日の工場跡地で屋根はあるものの廃墟で、エアコンとかあるわけもないとくれば想像出来ますよね。
そう、汗だく。
椎名汁だく。
余裕ぶっこいて歌ってるように見えますがすっげぇ暑かったですからね。
Phase/椎名慶治
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このジャケットも見た目はクールですよね。
めっちゃ暑かったですけどね。
横顔だけはイケメンとか言われます。
実に嬉しくない褒め言葉です。
むしろ褒め言葉なのか?です。
極論を言うとMVは工場跡地で撮る必要があったのか?すらも疑問符です。
朝まで議論したいぐらいの疑問符です。
どうか椎名汁が報われていますように・・・。
にしても「それじゃあバイバイ」を21歳と22歳のワカモノが作ったと言う事実がやはり凄いなぁって思うこの頃です。
・「歌い続けよう 自分の為に」と言う歌詞が15年前より更に自分に響いた「まだまだ」。
アレンジの方向は何故かそれほど悩まなかったんですよね。
イントロの感じとか、ピアノの感じとか、頭に描いたまんま。
それより15年前の永谷との会話の部分に頭を抱えました。
あれをそのまんまやるにはもう1人喋る相手が必要。
勿論それは永谷しかいないわけで、これだけをお願いする事も考えたんですが、「はぁ?」とか言われそうでやめました(笑)。
あ!逆にアポなしで電話して突然「まだまだって15年前から言ってるけどあとどんぐらい待てばいいんだ?」って言って「はぁ?」って言葉を永谷から貰いそれをCDに入れちゃえば良かった!!と今思った(笑)。
まぁそんな事は出来るわけもなく、結局1人で喋る事にしたんですが、すると今度は昔よりインパクトは弱いわけです。
うぐぐ・・ってなりました。
台詞だけではインパクト負けちゃう・・・考えに考え抜いて出した答えが、新たなラップみたいなメロディを付けようと。
オダクラにソロの尺を倍にしてもらい、そのデータを貰って自宅で新たなメロディを作り歌詞を書く。
歌詞カードには表記はしていませんが、ハッキリ分かるように歌ったつもりなので、新たに書き下ろした場所も楽しんでもらえたらなぁって思います。
って言うかね、その台詞やラップみたいな部分のバッキングすっごいカッコ良いのに申し訳ないことしたなぁって思うんだよね(笑)。
でもだからこそ、そんなバッキングだからこそ俺も新たなメロディを作りたいって思えたんだろうしね。
オダクラ、ムラ、ご了承ください(笑)。
ホント15年なんて「まだまだ」だなぁなんて思いますし、出来れば「まだまだ」歌い続けたいなって思ってます。
「逆境なんかに くじけるな」誰かさんの言葉を胸にいきましょう。
・イントロのピアノのフレーズが印象深い「冬の終わり」。
原曲にはイントロがない。
だけど、今回はなんか切なさが増すようなイントロが欲しいなぁって思っていて。
となればまたムラを呼び出しなんか弾けと強引な経緯があり(笑)、あのイントロが生まれた。
ムラにはその他にもストリングスアレンジでも相当世話になった。
切なさが更に出る旋律をと細かく手直しをしてくれたり。
友人の英語教師である井上君から頼んでもいないのに英語の文章が届く。
「使えそうなら使ってください」的な。
有難い事だ。
って事で新たに追加されたイントロ部分にアドリブでハメてみた。
そんなラフに制作してるとは思えないほど全体的にはまりが良い。
正直、今回の「冬の終わり」は名曲な気がしてしまう。
原曲にはそんな感情はなかった。
「あぁ、こんなに良い曲だったのにそれを表現仕切れなかったんだ・・・」って15年経った今やっと永谷が作った名曲に気付かされる。
22歳には難しかったんだろうねぇ。
表現力っていつの間に身につくものなのだろうか?キャリアさえあれば必ず身につくのだろうか?
じゃあ身につくとして一体何年目で?っていうかそもそも表現力上がってんの?
音楽のこういった部分はホントに分かりづらい。
ただ、15年前より今回の「冬の終わり」が良いと思ってる自分がいる事実だけはここにある。
・「それじゃあバイバイ」、「さぁ」、「なにしてんの」
そんなヒットシングルに挟まれてもう1枚このアルバムにはシングルだった曲が収録されてる。
それが2ndシングルだった「ジレンマ」。
他の3曲と比べたら若干認知度は低くはあるが、実はこの曲はSURFACEのデビューシングルとして元々話が進んでいた曲。
アレンジも歌詞も違うんだが、間違いなく「ジレンマ」でデビューする筈だった。
その話は大人の事情ってやつでボツになったのだが、それぐらいSURFACEチームとしては推し曲だった。
武部さんも含め(元々の「ジレンマ」のプロデュースは武部さんである)みんなで一度完成させた「ジレンマ」は日の目を見る事なくそのままお蔵入り。(いまだに音源あるかも)
なので俺の中では「Phase」に収録された「ジレンマ」は言わばver.2なわけです。
もう既にリアレンジされて大きく生まれ変わった「ジレンマ」。
そのver.2の形を大事にし、だけどそのままじゃ終わらないギターソロでの新展開を作り完成させたのが今回のver.。
ギターソロでのコーラスも「冬の終わり」同様に井上君が頼んでもいないのに(笑)、「使えたらどうぞ」と書き上げてくれたもの。
関わりたいと思ってくれた井上君と、それを上手く俺が活用出来た事から生まれたコラボだね。
当初はギターソロとこの英語コーラスは別々の役割をさせようと思っていて、コーラスパート、ギターソロパートが分かれていた。
何度かそれを聞いていたらまどろっこしい、無駄にダラダラ長いと感じてしまい、だったらいっそのことギターソロにコーラスぶち込んでみるかと。
それがこの完成形になった。
ギターソロのコード進行も直してなければ、コーラスの旋律も直していない。
本当にギターソロに元々あったコーラスのデータをぶち込んだらケミストリーが起きたと言う感じ。
オダクラは仕切りに俺に「流石です!」って言うけど、ほぼ全部アドリブの直感でしかないから「流石」じゃないんだけどね(笑)。
あの間奏でアルバムのラストと言う感じが増した気がしてもいるし、凄い気に入ってるパートの一つ。
ライブとかじゃアレ再現出来ないんだろうなぁ(笑)。
「ジレンマ」が終わり、もう1度1曲目の「空っぽの気持ち」に戻った時のループ感も気持ちよかったし、って事はアルバムの軸にあるものがしっかりブレずに全体に流れてるからだろうなと。
何度も繰り返し聞いてもらえるアルバムになったかなぁ?と思う。
如何でしたか?俺なりに「Phase」について色々語ってみました。
この場を借りて関わってくれた全員に感謝をしたいと思います。
文句も言わず俺のワガママに最後まで付き合ってくれたオダクラユウ。
ありがとう。
最高のピアノを弾いてくれたムラ。
ありがとう。
1度もお会いは出来ませんでしたが、スタイリッシュなバイオリンを弾いてくれた末延麻裕子さん。
ありがとう。
頼まなくても欲しい時に欲しいワードをくれる井上洋平くん。
ありがとう。
足りない部分を補って更に曲を良くしてくれるエンジニアのナベくん。
ありがとう。
いつの間にか素晴らしいエンジニアになっていた田中くん。
ありがとう。
ナチュラルながらもグッと胸にくる音に仕上げてくれる宮本さん。
ありがとう。
いつもそばで支えてくれるNディレクター。
ありがとう。
こんな無茶な企画に賛同してくれたマネージャーであり社長S。
ありがとう。
そしてこれを読んでくれてるアナタ。
きっと「Phase」も聞いてくれることでしょう。
ありがとう。
15年前SURFACEとしてデビュー出来た事、そして今現在も音楽を続けられる事、その他語り尽くせない全てに。
ありがとう。
椎名慶治はまだまだ歌い続けます。
応援よろしくお願いします!
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