たまにある、根っこを引っこ抜く仕事。

基本的にこの仕事は、僕がやる。何故なら、他のものではじれったくて見てられないから。

ユンボが入るほど広い現場なら、遮二無二掘って、力任せに引っこ抜けばいいんだけど、狭いところではそうはいかない(本当はユンボにもテクニックがあるんだけど、それはまた今度)。

大きなスコップが入らなければ小さなスコップを使うし、それでもダメなら移植ごてを使う。ガラが多ければバールを使う。素手も重要な道具だ。道具のセレクトが凄く大事。

僕の親方が言っていた。

「山の中で男女混合でクスノキを掘った。岩山で、スコップが弾かれる。男がそれでもスコップを突き立て続ける傍ら、女性は素手で石ころを取り除き、男の倍、仕事をした」

 

根っこをスコップで突き立てていると、少し根が動く。動けばすぐ抜けるような気がして、ますますスコップを突き立てる。しかしその時、真下に潜っている根を見ていない。まだ見えていない。そいつを処理しなければ、根株はいつまでたっても抜けない。

 

真下に潜る根の存在に気付き、でもそいつが見えないので我武者羅にスコップで突く。しかしそれで根が切れることはほとんどない。徒労に終わり、時間だけ過ぎる。石ころが出てきた場合も同じ。動くから、スコップで突きまくって動かしまくる。しかし石はただ動くだけで、一向に出てこない。

 

最適解は、まず自分の足下を掘ることだ。なるべく広く深く掘り、作業をしやすくする。出てきた根は例え鉛筆ほどの太さでも、すぐに切る。鉛筆ほどの太さの根に体力を吸い取られることは、よくある。石ころが出てきたら、石ころの周りを掘る。石ころをスコップで叩くなんて愚の骨頂だ。

親方が言った。

「周りの土をどかせば、根は自然に出てくるんだよ」

 

無駄な体力を使わない。重力を利用して穴を掘る。言ってもまず理解できないから、やらせるしかないんだけど、そうたくさん根を掘る仕事があるわけじゃないんだよね。それに慣れてないととにかく疲れるから、みんなやりたがらないし、やっぱ僕がやる。僕といえば、「おーし俺がやってやらあ!」とテンションが上がる仕事なんだけど。経験とチェーンブロックがあれば、かなり大きな根株でも短時間で引っこ抜ける。もう一つ、クレーンで根を引っこ抜くのは危ないので、僕はやらない。

 

若い奴、植木屋やんなよ!