蔵象学説 〈肝〉 | 鍼灸師 Shuhei Higashi 鍼灸師のブログ

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『肝は将軍の官、謀慮出ず』

 

日本語では肝腎(心)要という言葉があるとおり、物事の勘所として肝という言葉を用いてきました。謀慮とは、物事の処置、計画などに考えを巡らせる軍隊では参謀のような働きを指します。君主である心の補佐をします。中医学において肝には、身体活動を円滑にする働きがあります。邪気と戦う作用があり「剛臓」とも呼ばれます。気の流れは活発で逆流しやすい器官であり、肝臓に関連し、意志の強い内臓です。経絡では第9椎(筋縮穴)に付着し、右脇で胆と表裏関係にあります。

 

〇肝の働き

1.疏泄

 疏泄とは、気を満遍なくのびやかに流す働きのことです。気が滞らないように流れることを補助します。機械でいう潤滑油のようなものです。疏泄作用が正常であれば気はスムーズに流れ、気血は滞ることはありませんが、疏泄作用が失調すると、気血の流れが滞り気滞や、瘀血を生み出し脇胸部痛やしこり、腫瘍の病因となります。また、疏泄作用が失調し肝鬱気滞となると、少しのストレスでイライラしやすいという症状が起きます。

 

2.昇発

 気の流れには昇降出入の4種類があり、肝には木の枝が上に伸びるよう上へのベクトルを持ちます。

 

3.条達

 木の枝が上へ横へ葉を茂らせるよう、肝には気を全身へ巡らせます。これゆえ、気血津液を全身へ押し流し、滞りを解消するように働きます。

 

4.蔵血

 肝は血を貯蔵します。ヒトは寝る時に血が肝に帰り、目を覚ますと肝から血が諸々の場所へ送られます。また血は水穀が脾胃の力によって変化するので、脾胃のサポートの役割も果たします。肝と胆は表裏関係にあり胆は胆汁を分泌します。これは、消化吸収を助ける働きがあり、この働きが弱まると脾胃の調子も悪くなり、下痢や便秘、腹部膨満感、食欲減退などがみられます。また、蔵血作用が弱まると、生理不順や視力の低下、時には手足のしびれ、痙攣、めまいが発生することがあります。

 

 いずれも単独で起こるわけでなく、全体として関係を持ちます。例えば、運動不足で気血の巡りが悪い場合、空腹を感じにくく消化の働きも弱まります。すると何となく気持ちがモヤモヤして、些細なことで怒りやすくなったりします。

 

〇肝と五行

・五志…怒り

 志は感情を表します。肝は木の性質で燃えやすく気のベクトルは上方向です。従って炎上、怒りと関係します。疏泄作用が過度だと気血が上に上がりすぎ、文字通り頭に血がのぼる状態となります。

・五竅…目

 竅は細い穴の意味で、気の出納する小さな穴を指します。肝は目に開竅します。肝の陰血が不足すると目が乾き、視力が低下します。肝経に熱を持つと目の充血、痒みが起きやすいです。

・五液…涙

 五臓に関係する体液で、主に体外に注ぐものです。正常であれば涙は目を潤わせます。

・五主…筋

筋肉をつかさどり、筋肉と関節の運動を管理します。筋肉は血によって滋養され、関節運動を円滑にします。蔵血作用が低下すると末端組織に血液を送れず、しびれ感や痙攣、引きつれを起こします。

・五華…爪

 華は五臓の生理機能の状況を反映する部位のことです。爪は筋の余りともいわれ、肝血が不足すると爪が割れやすくなったり、薄く、もろくなります。

・五腑…胆

肝と胆は表裏関係にあり、謀慮(作戦)をつかさどる肝と、決断をつかさどる胆は精神活動において関係します。

・五神…魂

人の性格や感情をつかさどり、根気や意思・想像力に関わります。肝が充実すると何事にも積極的で物おじせず実行できる傾向にあります。