憧れの「グレイヘア」
「白髪染めから解放された今、コンプレックスが個性になったと思える。頭皮のかぶれや根元が気になるといった心身の負荷が消え、肌の調子も良い。赤い口紅や鮮やかな色の服が似合うようになってオシャレの幅が広がり、『私もそうしたいの』と街で声をかけられることもあります」
明るいグレーのショートボブが印象的なライターの朝倉真弓さん(46)は、若白髪に悩んでいた18歳から27年間続けた白髪染めをやめた。徐々に自然の髪に戻してゆく1年間の移行過程を、日本初の白髪育成実用書「グレイヘアという選択」(主婦の友社)で公開している。
この本は、還暦を迎えてモデル業に復帰した結城アンナさん(俳優、岩城滉一さんの妻)を表紙に、女優、萩尾みどりさんなど年齢も職業もさまざまな女性32人が登場。それぞれのグレイヘアを選んだ理由、ファッションや生き方がグラビアとともに紹介されており、取材に加わった朝倉さんも潔く自らをさらした。
「無理に染めなくても、お手入れ次第で美しくいられる時代。それを体現するグレイヘアの美しい女性たちが、知らず知らずのうちに増えていました」。グレイヘアエディターを名乗る主婦の友社の担当、依田邦代さん(59)は感慨深げだ。「脱白髪染めの機運は、1世紀前に窮屈なコルセットから女性を解放したココ・シャネルのファッション革命と重なる。美の基準は、女性の心と行動が変えていくんですね」
同社編集部によると、3週間に1回ペースで白髪染めのサロン通いをすると、年間約17万円、約
34時間を費やすことになるという。「義務感や負担に思っているのなら、やめる選択もあると知らせたい」と依田さん。
朝倉さんは、東日本大震災が発生した7年前、東京でも緊急地震速報が頻発する中で「こんな時まで白髪染めをしなくちゃいけないのかと、人生の優先順位を考えた」という。7月には、白髪染めを卒業したい人に向けた「『グレイヘア』美マダムへの道」を小学館から発行する。
◇
昨年末に創刊したファッションムック本「素敵なあの人の大人服」でも、グレイヘアのモデルが堂々と紙面を飾っている。発行元の宝島社では「これまで白髪はマイナスイメージだったが、今はアンチエイジングよりも自然体の方が魅力的と思う人が増えた」と指摘。若造りが痛い「美魔女」ブームの反動なのか。
ただし、これらは女性の意識変革であり、男性の理解はいまひとつのようだ。前出の依田さんも「白髪を育てると宣言したとき、夫がすごくおびえていた(笑)。早く”市民権”を勝ち取りたいですね」。
早晩誰にでも生える白髪。扱いはそれぞれ、その人らしくあればいい。グラデーションに富んだ頭髪が行き交う光景はまさに、「多様性社会」実現の証しにもなるでしょう!?
ー平成30年(2018年)5月14日(月)の新聞よりー