同心・伊藤清兵衛

 

◆しかし、この細川峯太郎に、

「ぜひとも、むすめを嫁に・・・・・」

 と、願っているのは、同じ組屋敷の長屋に住み暮している同心・伊藤清兵衛で、次女のお幸を細川に添わせたいらしい。

 伊藤同心は、細川の役宅における実直な勤務ぶりも、組屋敷内での私生活も、よく見きわめた上で、むすめを嫁にやりたいというのだ。

 この縁談について伊藤清兵衛は、与力・佐嶋忠介へ、

「何とぞ、佐嶋様よりお取りなしを願わしく存じます」

 と、いい出た。

 そこで佐嶋が、再三にわたって細川峯太郎の意中を打診してみたが、

「まるで、相手にいたしませぬ」

 と、佐嶋が苦笑まじりに、長谷川平蔵へ洩らしたことがあった。

(十八)俄か雨

 

 

 

伊藤清兵衛に関わる者

 

お幸

・伊藤清兵衛の次女。細川峯太郎と夫婦になる。

(十八)俄か雨

 

佐嶋忠介

・「それで、伊藤のむすめと申すのは、どのような?」平蔵

「父親そっくりの顔(おも)だちでございまして・・・・・」忠助

「それでは、美女の部類には入らぬな」平蔵

「はあ。それにいささか肥えておりまして・・・・・なれど、まことに、こころの優しきむすめにて、組屋敷内での評判もよろしくて・・・・・」忠助

(十八)俄か雨

 

長谷川平蔵

 さて・・・・・。

 長谷川平蔵は、同心・伊藤清兵衛の次女お幸と細川峯太郎の結婚を、

「急げ」

 と、命じ、みずから仲人となり、梅雨へ入る前に、役宅の大広間において簡素な婚儀を取りおこなってやった。

(十八)俄か雨