本作で新たに明かされるーーー若き日の平蔵

 

 「鬼平犯科帳」には、繰り返し若き日の平蔵が描かれる。

 

 四百石の旗本・長谷川家の長男に生まれながら、妾腹(しょうふく)であった平蔵は、義母に跡継ぎと認めてもらえなかった。気位が高く、気性が激しい義母は、平蔵を妾腹の子とさげすみ、いじめぬく。

 

 平蔵は、いたたまれなくなって屋敷を飛び出し、「本所の銕」と呼ばれて放蕩(ほうとう)の限尽くした。たった五十両の金欲しさに盗人になりかけたこともあった(第2シリーズ第20話「下段の剣」)。

 

 密偵の相模の彦十やおまさと出会ったのは、その頃のこと。少女時代のおまさは、酔いつぶれた平蔵を介抱し、卵酒をつくってくれる母親のような存在だった(第1シリーズ第5話「血闘」)。

 

 本作「うんぷてんぷ」では、思い詰めた平蔵が、義母の殺害をくわだて、池田又四郎を長谷川家の養子にしようとした衝撃の過去が明かされる。

 

 平蔵は高杉道場の後輩・又四郎を実の弟のように思っていた。しかし、平蔵の胸の内を見破った又四郎に「それは、いけませぬ」と言われ、思いとどまる。本作で新たに明かされた過去は、妻・久栄や弟分・録之助にとっても初耳だった。

 

ー鬼平犯科帳 DVDコレクション 37-