立秋過ぎの阿蘇
立秋を過ぎて阿蘇(あそ)の草原を吹く風がさわやかになるころ、ススキ波打つ草原に、花びらの先が細かく裂(さ)けたカワラナデシコの淡桃色(たんとうしょく)の花や、オミナエシの米粒のような黄色い花、紫色のヤマハギの花など、秋の七草が咲き始める。また、阿蘇久住(くじゅう)だけに自生して紫の花を段々に咲かせるヤツシロソウ、薄紫の大きな花球((かきゅう)たくさんの小さな花が球状に集まったもの)を咲かせるヒゴタイ、真っ赤なコオニユリなどが次々と花を開かせて、草原はみごとな花野となる。
阿蘇(あそ)の人々は、盂蘭盆(うらぼん)の行事として祖先の墓前に野の花を供(そな)える風習があり、その花々を「盆花(ぼんばな)」と呼んでいた。お盆を迎える前に盆花採りに出掛け、草原に咲くカワラナデシコやオミナエシなど、色とりどりの花を集めて墓前に供え、月遅れのお盆を迎えていた。
しかし、近年では草原が減ってきたことによって野の花も少なくなり、盆花を供える風習も姿を消しつつある。
やがて秋の気配が深まり、ススキの穂が出そろうころになると、草原は刈り干し切りの季節になる。以前は大きな鎌(かま)で草を刈り取り、その草を高く積み上げた草小積(くさこづ)みがたくさん作られて、阿蘇独特の風景が広がっていた。現在では、大型機械で刈り取られて、草を集めた白い大きなロールが点在する風景に変わりつつある。
その時期になると、草原にはシラヤマギクやシロヨメナなどの白い花が目立つようになり、ツクシアザミやハバヤマボクチなどが秋を彩っていく。その足元にはムラサキセンブリやウメバチソウ、ヤマラッキョウなどの小さな植物も可憐(かれん)な花を咲かせるようになる。
ー千年の草原に咲く花 ⑦ 阿蘇花野協会理事 瀬井純雄ー

