長助の昔の仲間が探索中の盗賊と

     組んでいることを平蔵は知りーーー

 盗賊・夜嵐(よあらし)の定五郎の捜索中、平蔵は、もと盗賊の借金取り・蛙(かわず)の長助と出会った。平蔵は、長助が御家人くずれの今井勘十郎に暴力を振るわれていたところを助けたのだった。長助に腕を見込まれ、すっかり気に入られた平蔵は、今井から借金を取り立てるための手助けをすることになった。今井の家に向かったふたりがそこで見たのは、長助の盗賊時代の仲間・浅間の捨造だった。やがて平蔵は、捨造が定五郎と組んでいることを知りーーー。

 

 

鬼平図解帳 蛙の長助

 

江戸時代に確立された両替商

 

”一両小判”を両替で崩す

 本作の主人公である蛙の長助は、両替商・光浦屋彦兵衛に雇われて借金の取り立てを行っている。

 

 三浦屋の入り口に掛けられているのれんには「金銀両替」と染め抜かれているが、両替という言葉はそもそも、金貨(一両小判)を別の貨幣(銀・銭)に替えるという意味だ。

 

 鎌倉・室町時代に中国から入ってきた銅銭を国内で流通できる通貨に替えていたのが、両替商の前身といわれている。

 

 

為替ディーラーのように

 天明4年(1784)、江戸では643人の両替商が定められ、うち6人が金銀を扱う「本両替」で、残りは金銀と銭を扱う「三組(みくみ)両替」と銭専門の「番組両替」に分けられた。

 

 本両替には裕福な豪商が多く、江戸の三井家と大坂の鴻池家が特によく知られている。今でいう日本銀行のようなもので、金銀相場の調節や公金の調達、大名への貸し付け(大名貸)やお金の預かりなどを行なった。このうち両替商の主な収入源となっていたのは、金銀相場の為替差益(かわせさえき)だ。

 

 

 

中間部屋の賭場を 盗人宿とする 冷酷な盗賊

浅間の捨蔵役・・・高並功・・・東映所属のエキストラ出身。60年代前半からは、役名付きで数多くの映画、テレビドラマに出演する名脇役。スマートで長身の体格を生かし、時代劇だけではなく、多くの現代劇でも悪役を演じ、冷徹な鋭い目つきと、ふてぶてしい演技で人気を博した。主に、時代劇、任侠物、刑事物などを舞台に活躍し、大河ドラマなどにも出演している実力派バイブレイヤーなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

原作を読む! 

 

鬼平犯科帳(10) 第2話「蛙の長助」

 

蛙そっくりの借金取りが かつて捨てた実の娘と再会

 

 原作は長助と実の娘・おきよとの因縁話で、平蔵との心あたたまる交流は、ほとんどドラマのオリジナル。「蛙」という渾名の由来もドラマと違って、顔が蛙にそっくりだから。そのうえ片足の膝から下を失っている長助は、個性的な容姿をした人物が多い原作の中でも、かなり目立ったキャラクターといえるだろう。