野洲市の病院整備や駅前開発の無謀さと対照的 いつまでも構想のまま

 病院と駅前開発が、問題や課題を無視して強引に進められているが、野洲市にかかわるもうひとつの大きな事業である県立高専。これについては、開校が1年遅れて2028(令和10)年になるとの新聞報道と3月の「基本構想第1弾」ができたという新聞報道をもとに書いた。

 その後年度が始まってからは何の情報もなく、気になったので県のホームページを開いてみると、最新情報としては基本構想しかなかった。「『滋賀県立高等専門学校 基本構想1.0(原案)』を公表しました」とあって、基本構想にリンクが張られている。

 ところで、基本構想に「1.0」とか「原案」とかいった付記は、ものものしいというか、慎重と言うか、めずらしい進め方。「1.0」の数字はどこまで増えるのか?また、「原案」はいつ「原」がとれて「案」になり、その案はいつ取れるのか?

 なお、後で触れるスケジュール表では基本計画の策定が入っていない。いつまでも構想のままらしい。

 いずれにしても、この慎重さは、野洲市の病院整備や駅前開発の無謀さとは対照的だ。

PFIを使うメリットはは想定できない 

 「基本構想1.0(原案)」を開くと、22枚のシートで構成された資料が出てきた。基本構想となっているが、以前に見た検討会の資料とほとんど変わってないように見受けられた。

 ただ、そのなかで驚いたのは、開校までのスケジュール。当然これは以前のものと変わっている。それで見ると、施設整備に関しては今年度から来年度にかけては「PFI諸手づき」となっている。整備手法は、すでにPFI(民間資金等活用事業)に決まったのか?

 PFIは公共施設を整備するにあたって、民間資金を活用する手法。一般的には文化ホールや体育館などの整備で、民間に施設整備とその後の管理・運営までを一体として委ね、公の側は毎年その施設が提供するサービスを民間から購入する。公にすれば初期投資が要らないし、民間のノウハウを活かした運営による収益増による負担の軽減が期待できる。他方、民間は独自のノウハウとアイディアを活用した、企画やイベントの開催で収益をあげる可能性がある。

 しかし、高専などの教育施設の場合は、民間のノウハウを活かした運営による収益増は通常無理。このことは、全国に先駆けて実施された野洲小学校の例で明らか。逆に、管理コストも含め設計施工のコストは高くなっている。特に、公的な起債を使わないので金利コストが大きい。

 ましてや、県立高専の場合の運営は、すでに県立大学に委ねる方向であるようなので、運営での民間ノウハウの活用はない。したがって、県立高専整備でPFIを使うメリットは一般的には想定できない。

 

 

金策(PFI)の目途をたてるための遅れ? PFIは成立するか? PFIはグラウンドにふさわしい 何もかも他人頼み

 このように見てくると、要するに県は「『人と地球を支える技術を磨く学校』を目指す」(毎日新聞2023年3月27日)と気宇は壮大だが、お金がまったくないなかで高専を整備しようとしているとしか見えない。今年1月の開校が1年遅れる報道では、その理由が「施設の設計などで当初想定より時間がかかる見通し」(京都新聞2023年1月28日)となっていた。そのときは、まだ設計作業に着手していないのに変だなと思って読んだが、このスケジュール表を見たら遅れの理由が理解できた。要するに、金策、すなわちPFI の目途をたてるための遅れだということになる。しかし、PFIは成立するのか?もし成立するとしたら、民間事業者はよほど大きな金利負担を県に請求することによってしか利益を生み出せないのではないか?ということは、その分県民の負担が増すことになる。

 もとからこの事業には懸念があるが、万一PFIということであれば、なぜか野洲市が整備することになっているグラウンドやテニスコートこそPFIにふさわしい。

 いずれにしても、滋賀県の高専整備は何もかも他人頼み。