不信と不満のなかでの諦め

 以前も話題にしたことだが、体育館病院に疑問を持ち、駅前病院の実現に期待して活動している団体の人たちから最近聞いた話では、体育館病院は決まったから仕方ないと思っている市民がさらに増えているとのこと。

 市広報紙や新聞などを通じて、事業が正式決定されたり、予算が可決されたりなどの情報が流されれば、当然このような流れになる。片や、体育館病院が抱えている問題は市広報紙や新聞報道では一切伝えられないので、この流れは進む一方。

 さらに、市議会では、「市長与党会派」に公明党と立民議員を加えた過半数が常に市長提案に賛成する構成になっているため、体育館病院や駅前商業開発は市長の思い通りに進むと思われる。したがって、体育館病院に賛同できない市民にとっては、展望は開けず、決まったから仕方ないと諦めざるを得ない。不信と不満のなかでの諦め。

 とは言っても、体育館病院は実現に向けて多くの問題を抱えているため、決まったと出来るとは別物。

和歌山事件 政治不信や政権の在り方への批判が目立つ書き込み 党首・代表コメントとは対照的

 このようなことを思っていたところ、和歌山の岸田首相演説先で爆発音という衝撃的なニュースが入ってきた。すでに詳しく報道されているので事件の概要の紹介は省くが、これに対する各政党の党首や代表、幹部のコメントも報道されている。いずれも民主主義の根幹根幹である選挙期間中における暴挙に対する非難。

 これらのコメントは言うまでもなく、もっともであり、選挙期間中であろうがなかろうが、暴力は許されない。

 ところが、この事件を伝えるネットニュースへの書き込みを見て驚いた。大手通信社のサイトでは百数十件の書き込みがある。もちろん犯行を批判する意見はあるが、それよりも、国民の政治不信の増大など、今の政治への批判に言及しているものがかなりある。

 犯人の犯行の意図は分からないし、ネット書き込みをした人の思いも十分に分からない。そして、ネット書き込みが世論を表すものではないことはもちろんだが、それにしても、今回のような反社会的な犯行に対して、政治不信や政権の在り方への批判が目立つのはひとつの兆候。

 そしてこの兆候は、先に紹介した政党代表の紋切り型の犯行非難とは対照的。そこには、胸に手を当てて、政治の在り方への反省は、与野党含め一切ない。

 なお、次のような報道も。

 「岸田首相、ツイッターで『演説に立ち続ける』と宣言 リプライには『国民不満も限界』など批判意見も殺到」の見出しで、

「『民主主義という言葉を政治家にとって都合の良い時だけ使うな!』『「無事だったことは何よりですが、それだけ国民不満も限界なのです』などといった批判意見も殺到した」。(Yahooニュース2023年4月15日よろず~ニュース編集部)

不信と不満は潜行 まずは、身近な市政の不健全さの改善から

 ここからは、和歌山での事件とは縁を切った話。

 フランスでは年金改革反対のデモやストライキが続いている。年金の受給開始年齢を62歳から64歳に引き上げる年金制度改革への抗議だが、若い世代も参加して意思表示をしている。最近の暴徒化は危険で非難されるべきだが、非暴力の意思表示は健全。

 フランスでは4月14日に法案の違憲審査を行なう憲法会議が国民議会が採択した年金制度改革法案の主要部分を合憲と判断したため、法案は施行されるが、抗議活動は収まりそうもない。

 片や日本では、異次元の少子化対策と銘打って、児童手当の拡充など盛りだくさんの政策案が打ち出され、案自体は良いが、そのための数兆円規模の財源の目途が立っていない。政府は、そのために年金、医療、介護、雇用の各社会保険からの拠出金を積み立てて財源に充てる検討を進めている。当然このやり方では、保険料が上がり、国民負担は増える。  

 また、国会で審議中の後期高齢者医療制度の保険料の上限額引き上げを盛り込んだ健康保険法などの改正案が、13日の衆議院本会議で可決され、参議院でも可決見込み。この制度改正での増収分は出産育児一時金の財源にあてられることがすでに決まっている。

 以上は一例であるが、このような分かりにくい、あえて言えば筋の通らない政策が積み重ねられていくことが、政治への不信を高めることになっていく。しかし、そのことが表で社会的に議論されたり批判されることはまれ。そのため、不信と不満は潜行していく。

 このように見てくると、野洲市の病院問題もこのような不健全な流れと軌を一にしている。国政の不健全さをを放置してよいわけではないが、まずは、身近な市政の不健全さの改善から始めなければ、その先はない。