「市立野洲病院の運営と整備を一体的に進める」人事

 今朝の新聞に野洲市の4月1日付の人事異動が報じられている。病院事業に関しては、内々予想していたとおりとなった。記事を引用すると、次のとおり。

 「市立野洲病院の運営と整備を一体的に進めるため、新病院整備部を廃止し、運営を担う事務部に業務を移管する。新病院整備を担当してきた健康福祉部次長を政策監に昇任させ、事務部長に充てた」。(毎日新聞2023年3月26日)

事務増大見込まれるのに2人を1人体制にすることは不可解 事務効率が落ちる 逆コースの一環?

 「新病院整備を担当してきた健康福祉部次長を政策監に昇任」は、この1年間の動きから予想されたこと。ただ、予想していなかったことは、これまで病院運営の事務責任者であった病院事務部長と、新病院整備担当であった政策監の2つの部長級職を1人の職員で対応させる体制。

 そのねらいは、「市立野洲病院の運営と整備を一体的に進めるため」と一見もっともらしい。そして、確かに、新しく政策監になる職員の能力の高さは、議会の特別委員会や市民懇談会での活躍で明らか。

 しかし、いくらスーパーあるいはカリスマ職員であっても、1人の部長職員で「病院の運営と整備を一体的に進める」ことは、言うは易(やす)く、行なうは難(かた)し。

 新病院は、まだ基本計画ができた段階。全体の事業量から見れば、おそらく1割もはかどっていない。新年度以降の仕事は、急激に増える。

 また、現市立野洲病院の方も、耐震補強工事の実施や退職が続く看護師等の対策、さらには整形外科等では医師確保の問題も予想されている。

 このように事務事業の急激な増大が見込まれるのを前にして、これまで2人の部長級職員でになってきた体制を1人体制にすることは、通常の組織論からすれば理解できない。本人が大変なことはもちろん、部下も協議時間や決裁が取れなかったりして、大変であるとともに、事務効率が落ちる。

 この体制変更も、病院を駅前から郊外に持っていったり、今さら駅前で商業開発をしようとするなどの逆コースの一環なのか?

 

陶器教授側にも誤解がある? 設計段階コメントを立地選定段階のエビデンスにすり替え公表の有能さ

 ここで話題が逸れるようだが、体育館病院の地盤安全問題のエビデンスについての公文書。正式の標題は、「野洲市民病院の新たな整備場所(温水プール跡地)が建築可能な地盤であることのエビデンスについて」。

 この文書に関連して、先の議会で益川議員が県大陶器教授から医師会長あての返答を全文読み上げた。そこには、「事実関係につき、幾つか誤解があるようですのでご説明させていただきます。『滋賀県立大学の陶器浩一教授が、安全な立地とされた』との噂が出回っていると間接的に耳にしましたが、もし6月15日付野洲市提供資料を根拠としているとしたら、大きな誤解もしくは拡大解釈があります。」とあった。

 教授は、誤解とか拡大解釈があると苦言を呈しているが、だれが、なぜ誤解したと認識しているのか?教授の返答をよく読めば、教授の責任ではないと考えられるが、結果的には、教授の側にも誤解がある。

 なぜなら、議員や医師会、市民が求めたのは、新病院の立地選定、言いかえれば、政策決定段階でのエビデンスであった。しかし、教授はそのような認識ではなく、具体的な設計段階に入ってからの地盤問題への見解を求められたと理解したと思われる。このことは、返答文が実質的に「当該建物の設計にあたっては」と書き出されていることから明らか。

 市は、教授に設計段階のコメントを依頼しておきながら、それを立地選定、言いかえれば、政策決定の段階でのエビデンスとして公表したのではないか?もしそうであるなら、巧妙で有能な仕業。これを取り仕切ったのが4月からの政策監。

4月からの独裁体制で病院の一層の密室化と暴走が進む?

 もう一度本題に戻る。4月からの病院事業の体制と人事の不可解さには、それなりの理由があるはず。その理由を詮索(せんさく)する気はないが、客観的に見てどのような流れになるかは推測できる。

 市の病院事業は、前川管理者を頂点にした、市行政とは独立した公営企業。予算の執行に当たっては、大型契約でも議会の議決は要らない。したがって、議会と市民の目が届きにくい。

 これまで2人の部長職員がいて、権限の分担があるとともに、チェック機能が働いていた。4月からはそれがなくなり、政策監兼事務部長1人に一元化され、秘密保持が強固になり、政策監兼事務部長独裁体制になる。後は、前川管理者がどれだけこの独裁体制を制御できるかの問題だが、過去半年余りの状況を見ると、制御どころか、逆に有能な新政策監予定者に担(かつ)がれていただけ。このよう見てくると、4月からは一層の密室化と暴走が進むのではないかと心配される。