駅前市有地を普通財産に移すことは時期尚早 「病院建設が確実になるまでは駅前の土地を売らないでもらいたい」

 昨日取り上げた3月1日の病院特別委員会の資料。その最後に、駅前市有地A、Bブロックの処理手続きの資料が付いている。

これらの土地は、今も駅前新病院の予定地である行政財産。それを、市の普通財産に移す手続きを始めようしている。

 その理由は、病院事業設置条例を変更し、病院の位置を現市立野洲病院の場所にした。しかし、この場所に新病院は建たない。そのために市長は体育館病院の計画を進めているわけだが、体育館病院については、事業正式決定と言っているがまだ準備予算が可決された段階。

 

 確かに、今議会に設計施工一括発注の予算案が提案されており、それが可決されれば、もう一段の進展にはなる。しかし、その場合でも、軟弱地盤の安全性が確認されていないことや事業費の見通しがあいまいであること、スケジュールに信用性がないことなど、体育館病院実現の見通しは確実ではない。

 したがって、「市長には、病院建設が確実になるまでは駅前の土地を売らないでもらいたい。建たな くなるのを一番危惧しているので、それに対する対応をしっかりしていただきたい。」という意見が医師会から出ることになる。

 病院に関して定まった場所は、現病院の場所だけであり、駅前市有地を普通財産に移すことは時期尚早。

 

普通財産の現金購入は政策・財政負担の上で問題 転売ねらいと見られる まさに、不動産業 計画に基づく起債活用の購入が原則

 この駅前市有地を行政財産から普通財産に移すことは、政策上問題であるとともに、市にとって大きな財政負担になる。

 普通財産に移すためには、現在設定されている、有利な病院事業債の繰上(一括)償還が必要になる。これに伴って、25%の国の交付税が受けられなくなるとともに、過去に受けた分の返還が必要。また、10.5億円の国の交付金も受けられない。

 要するに、使い道が明確でない土地を市民の税金を使って現金(キャッシュ)で買うことになる。

 以前に何度か書いたように、市である行政体が普通財産をキャッシュで買うことは、制度上想定されていない。

 市が土地を買う場合は、あらかじめ目的と計画を明らかにしたうえで、購入する。その場合は、キャッシュでなく、有利な起債を活用して、数10年で分割返済する。それによって、国の交付税が受けられ、場合によっては国の交付金も活用できる。

 万一、駅前商業開発を進めるとしても、なぜこのような正常な手続きを採用しないのか疑問。このやり方からは、あえて言えば、転売することをねらっているように見られる。まさに、不動産業。

「土地の活用益」で10億円の現金投資の回収は不可能 「活用益」はお金でなく、市民福祉向上 病院は不動産業のためのおまけ

 市ホームページに2月27日の部長会議の記録がようやく掲載された。そこで病院特別委員会の資料が議論されている。次のとおり。

→本市にとって過去にない大きな事業である。駅前で検討していた収支と現計画の収支を比較して市民が納得できる資料が必要と思う。財政所管部には駅前の土地に係る事業債や交付金の一括償還による一般会計への影響や、駅前に整備した場合と体育館横に整備した場合の市民の負担がどうなるのか比較できる資料はあるか。

→一括償還にかかる原資は、財政調整基金により対応し、今後の駅前整備における土地の活用益を見込むこととなる。

→駅前の市有地を賃貸にした場合と売却した場合の全体の財源シミュレーションや、時系列で中期の財政見通しをもう少し精密にされたい。(副市長)

 

 副市長がいまさら指摘しているように、精度の高い財政見通しが立てられていない。そもそも「土地の活用益」で10億円の市税による現金投資を回収することは不可能。

 これらのやり取りからは、賃貸と売却の比較をするつもりは頭からなく、売却を急いでいることが明らかに見えてくる。

 そもそも、公共団体である市有地の「土地の活用益」はお金でなく、市民の心身の健康と豊かさ、すなわち福祉向上のための公共サービスの提供。入口から間違っている。この面でも、野洲市は不動産業。こうなると、実現性が乏しい新病院は、そのためのおまけの位置づけでしかない。

地方都市の駅前タワマン人気に棹さす? 「駅直結タワマンが『まち』をやがて破壊する」 現病院の機能不全の現実化も

 これを書いているときに、知人からの電話で、今日の夕刊に地方都市でのタワーマンション人気の記事が出ていると聞いた。ネット検索したが、その記事は見つからなかったが、同じ内容の記事はいくつも見つかった。

 たとえば、「首都圏だけでなく地方都市でも…タワーマンションが増える理由とは? 『すぐに完売する』のは本当?」(ヤフーニュース2022年11月25日)の見出し記事。記事には次のような記述がある。

 「投資家や資産家がタワーマンションを購入するケースも多いです。投資家などは投資目的で最初から上層階の物件を狙っており、売りに出たらすぐに購入するケースも見受けられます。」(ヤフーニュース2022年11月25日)

 また、「駅直結タワマンが「まち」をやがて破壊するワケ 目先の利益追及が地方を壊していく」の見出し記事も。(PRESIDENT Online 2019年9月12日)

 以前も書いたように、「9月頃に事業者公募」という見出しの業界紙記事もあって、野洲駅前市有地でのマンションに期待が高まり、業界や投資家筋では既成事実化している模様。

 まさに、「『まち』をやがて破壊する」「駅直結タワマン」の流れの典型。栢木市長は、この流れに棹さして、急いでいるのか?そして、職員はそのために1900万円の予算を使ってその準備を進めているのか?さらには、検討会の市民代表と専門家はその協力者となるのか?

 これでは、「近い将来に野洲から病院がなくなってしまう恐れがある」(医師会理事発言)にとどまらず、「駅直結タワマン」で市民福祉が確保されず、逆に「まち」がやがて破壊されることが現実味を帯びてくる。

 いや、それ以前に、以前書いたように、現市立野洲病院の職員、特に看護師の士気喪失と退職に歯止めがかからず、現病院の機能不全が現実化する。この状況に、前川管理者の致命的な無責任さが追い打ちをかけている。