GPSどころか羅針盤もない船で航海に乗り出すようなもの 「粛々」どころでない

 昨日紹介した市議会の市民懇談会の案内チラシから受け取った印象。病院と駅前は決着済みが当たっているかどうかは別にして、病院整備と駅前開発は、まだまだ市議会での審議とチェックが必要な事業。後は市長にお任せでは危ない。

 例えば、体育館病院の場合、市が示しているスケージュールからすれば、正確な事業費が明らかになるのは2年以上先の2024(令和6)年度末、すなわち2025(令和7)年3月。

 基本計画では概算事業費が約93.6億円となっているが、基本計画段階の数値はかなりの概算。積算にあたってはすべての項目が拾い切れていない。そのうえ、市は毎年8%の値上がりを見込んでいると説明している。したがって、事業費が上がることはあっても下がる見込みはない。

 このような状況であるにもかかわらず、市長は「今後は、粛々と前に進めることができます。また、これに伴い、野洲駅南口整備事業に関しても一歩踏み出せることになったと思います。」(2022年12月23日記者会見)と気楽な発言。

 現実は、GPSどころか羅針盤もない船で航海に乗り出すようなもの。「粛々」どころではない。

工事費確定は2025年3月 2年間の工事中にも増額見込み 

 上で、正確な事業費が明らかになるのは2025(令和7)年3月と書いたが、厳密に言うと正しくはない。市長は、病院整備工事を設計施工一括発注(デザインビルド)方式で発注する意向。したがって、スケージュールからすると今年の年末頃に設計施工を含めた入札が行われることになっているので、その結果によって、一応事業費が確定する。

 しかし、実際は基本設計段階でも工事費は確定しなくて、建物の構造設計・計算等が終わる実施設計が完了しないと工事費・事業費は判明しない。したがって、今年後半に結ばれる契約額が、その後何度か変更されて、2025年3月に確定することになる。ただし、それで終わりでなく、2年間の工事中にも増額が見込まれる。少なくとも年8%は上がる。

一括発注では度重なる増額変更に進退窮まる恐れ

 今年後半に結ばれる契約額がどのような積算に基づくものか不明だが、いずれにしてもその金額は最終的な工事金額ではない。相当な増額を覚悟しなければいけない。

 設計施工一括発注でない通常発注であれば、基本設計、実施設計、工事発注の各段階でその時点での積算をもとに事業の見直しができる。しかし、一括発注の場合は最終の施工業者まで含めて、契約を締結するので、基本的にはそのような各段階での事業見直しはできない。

 いうまでもなく、契約上は施主と受注者は対等であるが、建物の完成が契約の目的であるため、実態としては受注者の立場が有利になる。言いかえれば、今年後半の契約以降は、走り出したら止まれなく、工事費の際限のない増額に市は応じざるを得なくなる。その結果、進むに進めず、引くに引けない、進退窮まる状況に陥る恐れがある。

 なお、栢木市長にとって幸いなことに、来年秋の市長選の段階では、今年後半に結ばれる契約の低い工事費からの変更はない。増額変更はそれ以降になる。