大型階段の解体除却には借金(起債)できない 現金が必要

 すでに紹介したように、体育館病院の用地を更地として確保するためには、6億円超の工事費が必要となる。その内のかなりの金額を大型階段の解体除却費が占めるはず。

 道路・河川や学校など公共施設整備では、その経費は一気に支払うのでなく、10~30年の借金(起債)で均等に返済していく。そして、その場合、毎年の返済時にはその一部が国からの交付税で補填されるという利点もある。このことは、駅前の病院で何度か触れた。病院整備の場合は補填率が有利で、25%にもなる。

 ところが、将来世代も使う施設整備の場合と違い、過去及び現世代が使い終わった施設の解体除却事業の場合は、将来世代の負担を求めることはできないので借金(起債)はできない。そうなると、数億円の費用を一気に(単年度で)現金で支払う必要がある。

 ただし、解体除却事業にも期限付きの例外があって、条件を満たせば起債が可能になっている。なお、旧温水プールの解体除却にはこの有利な制度を活用した。

 ところが、この階段の場合は、その条件である「公共施設等総合管理計画」に入っていないはずだから、活用できない。また、代替の新階段の整備にも、詳細は分からないが、起債ができない恐れが多分にある。

 

 

駅前の病院予定地でA、Bブロックの起債一括償還に12.5億円の現金必要

 ということで、新年度には大型階段の移設にだけでも6億円超の現金が必要。それに加えて、駅前の病院予定地であるA、Bブロックの有利な借金(起債)を解消して一括償還しようとしている。そのためには、12億5千万円の現金が一気に必要になる。加えて、これまでに国から受けた25%の交付税の返還も必要。

駅前の土地の「保持は難しい」で、昨年6月の約束は反故に

 ところで、この駅前の病院予定地については、1月13日の市長と医師会との会合で、医師会が6月9日の会合に引き続き、「病院ができるまでは駅前の土地を売却せず、保持してほしい」と求めるたが、「栢木市長は『保持は難しい』と答えた」。(毎日新聞2023年1月14日)

 市長は、6月の時の同様の要望に対しては、当分の間は処分しない旨、医師会に配慮した回答を行なっている。しかし、今回はピシャリと扉を閉じてしまって、約束は反故にされた。これでは、市長はもう引き返せない、余裕のない状況に追い込まれていることは確か。

12.5億円は市民にとって死に金 新年度約20億円のキャッシュをどう調達するのか? 無理・波乱の予算編成

 しかし、12億5千万円の現金で土地を買っても、すぐに売れるわけでもないし、万一貸す場合にはそれを賃貸料で埋めようと思えば、数10年はかかる。まさに、この12億5千万円は市民にとっては、捨て金であり、死に金になる。

 いずれにしても、市は新年度たちまち約20億円のキャッシュ(現金)が必要になる。形式上は病院事業の枠ではあるが、事業設置者である栢木市長が「自分自身で決め」、その主導と責任で行われるものであり、その財源は市が調達するべきもの。

 市長は2年余り前の選挙戦で、年間200億円予算の市に100億円の病院は過大と批判していた。ところが、体育館病院は100億円を越えることはすでに明らか。それに加えて、市の新年度約200億円予算の財源として、約20億円のキャッシュが必要になる。

 これは異常なこと。市は、約20億円のキャッシュをどう調達するのか?無謀で波乱の予算編成であることは確か。