「議論は平行線」 駅前市有地の「保持は難しい」と栢木市長

 昨日1月13日の午後、野洲市長と医師会との会合があったようで、昨夜のびわこ放送と今朝の新聞で報道されている。まず、会合の概要を報道からの引用で紹介します。なお、いずれの報道でも、見出し、または記事のなかで、「議論は平行線」の文字があった。

 

「野洲市の新病院整備を巡り、同市の栢木進市長は13日、守山市内であった守山野洲医師会の理事役員会で、野洲市総合体育館横での整備計画が昨年12月の市議会で認められたことを報告し、2026年度の開院に向けて理解を求めた。理事らからは旧予定地だったJR野洲駅前での整備を求める声が改めて上がり、話し合いは平行線で終わった。

 市議会では、体育館横での準備工事費などを盛り込んだ補正予算案が可決された。市は整備を本格化する方針だが、医師会は前市長時代から一貫して駅前での病院整備を求めている。

 この日、理事らからは、24年に市長選があることなどから、計画の実現性を疑問視する声が相次いだ。『病院を建てる場所がなくなったら困る。新病院ができるまでは駅前の土地を売却せず、保持してほしい』と求める声も上がった。市は駅前に複合商業施設を整備する方針を示しており、栢木市長は『保持は難しい』と答えた。」

「医師会の小西常起会長は『議会の意思は尊重するが、医師会としては駅前に建ててもらうのが一番だ』と結論づけた。これに対し、栢木市長は『体育館横で決定した以上、これで進めていきたい。』」

(毎日新聞2023年1月14日)

 

 「医師会側からは『なぜ駅前ではだめなのか』との意見が相次ぎ「新療院の総事業費は百億円近い。市長は、前市長計画の半額程度で立て替えという選挙公約を守っていない。もう一度、民意を問うべきだ」という声もあった。

 医師会の小西常起会長は「体育館横は地盤調査などの結果が出ておらず、納得できる客観的根拠はない」と指摘。「体育館横で新病院ができない場合も想定され、野洲から急性期病院がなくなってしまう。利便性も経営面も 駅前がベスト。駅前の市有地は売却すべきではない」と強調した。

 「栢木市長は取材に『議会の承認も得て、市民説明会も開いている。体育館横は市民が選んだ場所だ』と述べた。」(中日新聞2023年1月14日)

半年前同様今も「エビデンスがない」状態 構造専門の陶器教授では地盤安全性「確認」できない 入口から間違っていて基礎はない

 これらの報道を読んでの感想は、半年前の昨年6月9日の会合の時と何も変わっていないということ。今も「エビデンスがない」ままの状態。当時の報道は次のとおり。

 「滋賀県野洲市の栢木(かやき)進市長が、市立病院の建設予定地をJR野洲駅前から市総合体育館横に変更する方針を決めたことについて、駅前での早期建設を求めている地元の守山野洲医師会(小西常起会長)が反発している。9日にあった医師会への説明会で、変更後の建設地について『エビデンスがない』などと批判の声があがった。」(朝日新聞2022612

 ここでの「エビデンスがない」というのは、地盤の安定・安全性等の問題。この指摘を受けて、その後6月15日付の県立大学の陶器教授が「確認」したとする、例の「建設可能な地盤であることのエビデンスについて」の公文書が出された。そして、この文書が11月14日の評価委員会でも、小西医師会長の疑問にもかかわらず、滋賀医大学長の上本委員長は追認。したがって、いまなお、この公文書が新病院の基本計画の地盤の安定・安定性の根拠になっている。

 ところが、11月14日の評価委員会の「要録」からは、「確認」した専門家は県立大の陶器浩一教授であったという駒井次長の発言は消えている。さらに、伝え聞くところでは、陶器教授は医師会からの再三の協議要請に対して返答せず、沈黙を守ったまま。この状態では、気の毒に研究者・教育者としての資格・生命はすでに消えてしまっている。

 ところで、陶器教授の専門は、市の資料では「建築計画・構造計画」となっていて、地盤や土壌の専門家ではない。実のところ構造の専門では、地盤の安定・安全性の「確認」はできない。そもそも、入口から間違っていた。

 今から約15年前、野洲市の小中学校の耐震化率は県内最下位の約50%。また、保育園4園と発達支援センターも未耐震で危険な状態であった。まず子供たちの安全確保で、数年間で耐震化を完了する取組を始めたが、そのなかに建物の構造が安全であっても、建物が安全ではない例があった。

 それは篠原小学校本館。耐震診断では、耐震補強工事によりIs値(構造耐震指標)の基準を満たし安全が確保されると判定された。そこで耐震工事の設計にかかるにあたって、参考に校舎周辺のボーリング調査を行なったところ、地盤が軟弱で耐震補強工事では最終的な安全が確保できないことが判明。仕方がないので、仮校舎を建て、旧後者を解体し、新築した。以上のように、構造の専門家では、地盤の安全性の確認はできない。

ドクターストップ無視し、栢木進市長は市民を道連れにして無謀にも進もうとしている

 報道を読んでもうひとつ気づいたたこと。それは、医師会側が内容のある意見を言っているのに反し、市長はそれにまともに答えないで、「体育館横で決定した以上、これで進めていきたい。」(毎日新聞2023年1月14日)、「手順を踏んで市民が選んだ場所」(読売新聞2023年1月14日)、「体育館横は市民が選んだ場所だ」(中日新聞2023年1月14日)など、体育館病院が最善である理由を述べないで、手続き論に終始。確かに、調査費など準備予算は可決されたが、「手順を踏んで市民が選んだ場所」とまで胸を張れるのか?

 医師会は反対だけをしてるわけではない。駅前病院という体育館横よりは安くて早期整備が可能な「対案」を持ちつつ、市長方針の体育館病院案に対し警告を発している。まさに、ドクターストップを無視して、栢木進市長は市民を道連れにして無謀にも進もうとしている。

1円をおろそかにする者は1円で泣く

 ところで、その後伝わってきた話。会議で医師会側は、出席の全役員に市長の説明が理解できたかどうかを確認した。その結果は、理解したと答えたのは2人だけで、後は理解できなかったとのこと。この2人は、守山市民病院に関係する役員の医師。これも不可解なこと。なお、野洲市で開業の役員医師4人は全員が理解できなかったとの意思表示であったとのこと。すなわち市長案に賛成でないということ。

 もうひとつの続報。栢木市長は、タクシーで会場を去ったとのこと。昨日は金曜日で市役所は開庁日。なぜ公用車を使わなかったのか?万一専属の運転手が休みであったとしても、秘書課か担当事務局の職員が運転を対応することになっている。

 もし、これが事実であったなら、不可解なで奇妙なこと。1円をおろそかにする者は1円で泣く。