2022年はあと1時。良いこともあったが、悪いこと、悲惨な出来事も多くあった。

 なかでも、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻。今年の2月に始まって、まだ終息の兆しが見えない。この間に、ロシア国内での気づきと行動があって、正常化の動きがあるかと期待されたが、逆に、クリスマス、年末もロシアによる攻撃は続いている。そして、恐らく新年にも。

 ところで、半月ほど前にイーグルスの「ホテルカルフォルニア」の歌詞が野洲のようだと思ったというメールをもらい、曲のことを紹介しました。欲望で群がる人たちのことを歌ったメッセージソング、あるいはプロテストソング。社会や政治に対する抗議のメッセージを含む曲。もちろん、メッセージだけではもたないので、曲と演奏が良くなければ、愛好されないし、広がらない。

 「ホテルカルフォルニア」を久しぶりに聴いて以来、手持ちのレコードやCDでその類の曲を、しばらくの間集中して聴いてきました。

 そのなかでも、極めつけのひとつは、ビリー・ホリデーの「奇妙な果実」。静かな曲だが、歌われている情景と込められた怒りはすごい。1939年に録音された。曲の背景のひとつには、演奏家であった彼女の父親の黒人差別による死への思いがある。

 1970年代に出たレコードの解説(大和明)から歌詞の訳を紹介します。「奇妙な果実」黒人差別のなかで犠牲になり、木にぶら下げられた黒人の遺体のこと。

 「南部の木々に奇妙な果実がむごたらしくぶらさがっている

  その葉は血に染まり、根元にまで血潮はしたたり落ちている

  黒い遺体は南部の微風に揺れそよぎ、まるでボブラの木から垂れさがっている奇妙な果実のようだ

 美しい南部の田園風景の中に思いもかけずみられる腫れあがった眼や苦痛にゆがんだ口、

 そして甘く新鮮に漂う木蓮の香りも、

 突然肉が焦げる匂いとなる 

 群がるカラスにその実をついばまれた果実に雨は降り注ぐ

 風になぶられ、

 太陽に腐り、

 遂に朽ち落ちる果実

 奇妙なむごい果実がここにある」

 あと、ニーナ・シモーンの「自由になりたい」も紹介しようと思いましたが、別の機会にします。

 まずは、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の一刻も早い終息。そして、差別と暴力、格差のない社会への展望が開かれることを。