市長は市税を使っての住民訴訟対応だが、進行状況を市民に公表していない  

 昨日、病院に関する住民訴訟について少し触れました。市長は市税を使って訴訟に対応しているにもかかわらず、その進行状況を市民に公表していない。議会には公表されているのか?また、報道機関には?

 原告である市民の方は情報を公開しているので、それをもとに紹介しました。報道機関に対しても市民の方は、当初情報提供していたが、まったく反応がなかったようで、秘密にはしていないが、今は行っていない模様。

病院の住民訴訟 市長は最近になってから中身の反論に入り出した

 この住民訴訟については以前に紹介したので、詳細は避けますが、病院設置条例で定められていた駅前Aブロック病院の最終設計業務を市長が独断で契約解除し、約4200万円を支払ったことは、条例に反して違法であり、その賠償を市長に求める訴え。

 一昨年と昨年に起こされた2件の訴えが1本化され、審理が進められている。市長は最初から原告の適格性について入り口論で争ってきたが、裁判官の促しもあったようで、ようやく、最近になってから中身の反論に入り出した。

病院設置条例は自治体の自主条例制定権に該当しないので、市長の独断行為を制約できない?

 そこで、11月28日付けの準備書面から市長の反論の中身の一端を紹介します。法廷論争であるのに、議会答弁や市民説明会でと同じように、はぐらかしやすり替え論理が多い。しかし、そのため、主張内容が議会答弁等とは多くのところで矛盾している。

 まずは、市条例である病院設置条例は自治体に認められた自主条例制定権に該当する条例ではないので、市長の独断での契約解除行為を止める効力をもっていないと主張。その根拠として制定時にその旨が明言されていないからというもの。条例であることに変わりはなく、制定時にそれを明言すべきという市長の主張は通じるのか?これでは、自治体としての気概も誇りもない。

 読みにくい文章だが、原文は次のとおり。なお、「参加人らは、」とは、原告である市民のこと。以下の引用でも同じ。

 「参加人らは、地方公共団体は、憲法94条、地方自治法14条1項により、法律に抵触しない限り、自主立法権である条例制定権を有するのであるから、設置に関する条例の部分について規範性を持たせることは地方公営企業法に抵触するものではない旨主張する。」

 「しかし、条例制定権に基づき制定される条例は、条例全体が条例制定権に基づき制定されるのであり、「設置に関する条例の部分について」のみ規範性をもたせるなどは想定されていない。

 また、病院設置条例が議会に提案された際の説明をみても、「(仮称)野洲市民病院を平成32年10月に野洲駅前に開設するにあたり、 今後、本事業を進める上で、平成29年度から地方公営企業法を適用する病院事業を設置する必要があることか ら」という理由で提案されているのであり(甲13の7頁)、 自主立法権である条例制定権に基づき提案するという発言もなければ、「設置に関する条例の部分について」規範性をもたせるなどという発言も一切ないのである。そのため、上記参加人らの主張は誤りである。」

契約解除は市長選の結果示された民意に基づくもの この論理で行けば、現地半額建て替えを実現することが必要

 次は、契約解除は、市長選の結果示された民意に基礎づくものであり、根拠があるという市長の主張。選挙結果の民意だけを根拠に条例に基づき、議決予算をもって進められていた事業を独断で止められるのか?先に、民意を背景に条例改正を行なうべきではないか?また、この論理で行けば、昨日書いたように現地半額建て替えを実現しなければならない。

 さらには、体育館病院も次の選挙で市長が変われば、条例の定めさえもないため、同じ運命をたどる。このような発想で市政を運営していては、いつまで経っても病院はできない。原文は次のとおり。

 「参加人らは、長年にわたり専門家、市民を交えて検討してきた結果が病院設置条例であり、本件条例に示された病院の設置場所、設置規模は検討を重ねた民意が反映されているものであるにもかかわらず、市長が根拠無く本件各契約の解除等を行っており、裁量権の逸脱濫用である旨主張する。

 しかし、上記の通り、市長は元の整備計画への反対を表明して市長選に当選しているのであり、本件各契約の解除等は民意に基づきなされたのである。そのため、本件各契約の解除等は民意に基礎付けられており、 根拠無く行ったなどと到底いうことができない。」

早期建設の観点のみから判断すべきでなく、設置場所変更で時間がかかっても、選挙結果に基づくものであり、民意が許容

 まだまだ、興味深い市長の主張があるがあと一点だけ。

 病院は早期建設という観点のみから判断すべきものでなく、設置場所変更で設置に時間がかかったのも、選挙結果に基づくものであり、民意が許容しているという市長の主張。これでは、上記同様、いつまで経っても病院はできない。市長の原文での主張は次の通り。

 「参加人らは、本件各契約の解除等を行ったことにより、 市民病院の設置が大幅に遅延したばかりでなく、市が本来支出する必要のなかった4256万もの支出を強いられており、社会通念上著しく妥当性を欠く旨主張する。

 しかし、野洲市の新病院建設は、野洲市の医療及び財政等に大きな影響を有するものであり、早期建設という観点のみから判断すべき事項とまではいえないし、 新病院の設置場所変更により、設置に時間がかかったとしても、それは選挙結果に基づくものであり、民意が許容しているものである。」