公約は駅前新病院計画を大幅に直し、現敷地に半額程度で新病院を「新築」だった

 先日、市の部長会議記録から市長の発言を引用して以来気にかかること。その発言は、「『駅前に病院を整備しない』というのが私の公約である。」(2022年11月10日部長会議録)というもの。

 ところが、あらためて公約のどこを見ても、「駅前に病院を整備しない」とは書いてない。選挙管理委員会の証紙が張ってある公式の選挙公約チラシにあった病院についての公約は次のとおり。

 「贅沢な駅前での新病院計画を大幅に見直し、現病院の敷地に半額程度で新病院を新築」

公約は有権者の投票行動を決める基本情報 「今さら過去のことを言っても意味がない」は身勝手

 言うまでもなく、公約は選挙で有権者の判断と投票行動を決める基本情報。そのため、当然厳格に理解される必要がある。12月8日の市議会質問で橋議員が病院整備の公約について指摘したが、市長は次の趣旨で答弁した。

 「現地半額建て替えは公約でなく対案。今さら過去のことを言っても意味がない。それが民主主義だ。」

 確かに、対案については、市長はこれまでから言ってきた。しかし、「今さら過去のことを言っても意味がない。それが民主主義だ。」の発言は意味不明で錯乱発言。

 かろうじて、市長の過去の発言から推測すると、すでに状況(段階)が変わっている。Bブロック病院との比較で評価すべきではないかといったところか?まさに、評価委員会委員長の滋賀医大の上本学長の発想と同じ。

市長発言は岸田首相の「政治はずっと動くもの」と同じ無節操で危険 「君子豹変す」

 ところで、今日ネットニュースに昨日紹介した内閣支持率の記事が出ていた。標題は、「毎日69%・朝日57%…岸田内閣『不支持率』が菅・安倍政権超え、SNSでは『もう閣議決定に効果なし』と高まる不満」(2022年11月10日SmartFLASH)。

 そのなかに次のくだりがあった。「7月の参院選公約に入っていなかった防衛費のための増税を、岸田首相が『政治はずっと動くもの』としか説明していないことが大きく影響しているのでしょう(政治担当記者)」(2022年11月10日SmartFLASH)。

 この発想と発言は、先の栢木市長の発言と基本的に同じで、「君子豹変す」。この言葉は元は良い意味だったが、今では、態度や考え方をすぐ変え、節操がないという悪い意味が通用。もし、良い意味で理解してもらいたければ、豹変の理由を徹底的に説明しなければならない。しかし、栢木市長と岸田首相の両者とも、そこから逃げている。支持率が落ちて当然。

 この発想と手法は、適正手続きなど、議会制民主主義の根幹を切り崩すことにつながり、危険。先の大戦の事例が示している。

公約断念時、市民は駅前復活を期待した

 そこで、栢木市長の選挙公約を厳格に見てみる。

 駅前に病院を整備しないとは書いてない。大幅な見直しの結果として、現地半額程度で新築することを掲げているだけ。このため、昨年3月市長が現地案の公約断念を表明した時、多くの市民や市外で関心を持つ人たちは、駅前が復活すると期待した。

 また、公約では、現地に半額で新築と書かれている。文字どおり読めば、すべて新築されると市民は受取った。

 参考に当時の記事を紹介します。ここまで具体的に自信をもって公言していた。もちろん、85億円の1/4は地方交付税で支援されるので、市税50億円の節約は間違い。

 「現在の土地で西館と東館を建て替えることで、予定建築費を約85億円から約36億円に抑えることができ、市税約50億円を節約できることになる。病院の施設では東館が一番古く、治療に重要な中枢機能も有していることから「現地で建て替えると日常の医療体制に影響が出る」と懸念する意見もあるが、一度に全部着手せず、まず、先に西館を東館の機能を付け加えた形に建て直し、その後、東館に着手すれば医療提供体制への影響を最小限に抑えることができる。病床稼働率などをみても実現可能な計画で、まだ20年は使用可能な北館まで無理に移転させる必要もなくなってくる。」(2020年10月2日滋賀報知新聞)

駅前計画の大幅な見直し作業なしに契約解除も公約違反

 見てきたとおり、公約は駅前に病院整備しないと明言していない。駅前計画を大幅に見直し、現地に半額程度で設置するというセットものの内容。それがいつの間にか、市長は、駅前に病院整備しないことだけを都合よく切り取り、公約にすり替えた。

 さらに、駅前での新病院計画の大幅な見直し作業も行わないで、最終段階にあった駅前Aブロック病院の設計業務を初登庁日に、議会と市民に協議することなく独断で中止し、解除した。庁内協議の時間もなかったはず。この点でも公約違反。重なる公約違反。

住民訴訟の市長の準備書面から「公約」が消えた 公明と立民市議は、また「市長与党会派」に同調するのか?

 このことに関して2021年5月7日に住民監査請求が提出された。これに対しての「野洲市長の栢木進と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。」からはじまる市長陳述。

 「今回の私が判断した契約解除等の判断は、市長選挙の公約の遂行のために行われたものであり、民意に基礎付けられたものであることが明らかであるため、市長に与えられた広範な裁量権を逸脱しているとは言えないものと考えます」。ここでは公約にすり替えられている。

 ところが、その後の住民訴訟では「公約」の文字が消え、後退。去る12月13日に行なわれた直近の口頭弁論の準備書面での市長の主張は、「市長の選挙公報においても、市民病院建設問題を真っ先に取り上げているのであり(甲25)、 市長が元の整備計画への反対を表明して、市長選に当選したことは明らかである」。

 確かに、市長は元の駅前計画に賛成ではなかった。しかし、何度も述べたように、「『駅前に病院を整備しない』というのが私の公約である。」とまでの強いメッセージは受取れない。もし、そのように受取ることを求めるならば、セットものとして、現地で半額以下の約36億円新築も公約として市長は貫く必要がある。

 明日12月20日午前の予算常任委員会の採決では、公明党と立憲民主党の市議は、またもや「市長与党会派」に同調するのか?