旧統一教会の被害者救済法案 異例に与野党賛成で成立見通し

 旧統一教会の被害者救済法案が、昨日12月8日に衆議院を通過し、参議院で審議入り。法案は今日9日の参議院特別委員会での審議を経て、国会会期末の10日に委員会と本会議で採決されて成立する見通し。

 当初は政府・与党と野党の溝は深く、会期末の成立は到底無理だと見られていた。しかし、政府が野党に歩み寄り、柔軟な協議に応じる姿勢を示し、野党の一部が法案に賛成をする意向を示して流れが変わった。昨日の衆議院での採決では、マインドコントロール規制について罰則規定を盛り込むことで譲らなかった立憲民主党もマインドコントロール規制の配慮義務に「十分に」という言葉を入れるという政府提案を受けて軟化し、賛成に回った。

二世問題や政治・選挙など健全な民主主義を歪めた問題は手つかずのまま残る

 限られた審議日程のなかで、当初与野党の開きが大きかった法案が、与野党一致して賛成で可決成立したことは異例だが、急がれる旧統一教会の被害者の救済にとっては喜ばしいこと。ただし、最後まで焦点であったマインドコントロール規制の有効性など法案にはまだまだ課題があるので、今後の有効性の検証と改善が必要。

 また、今回の法案は悪質な勧誘による高額な寄付などの規制が主であり、いわゆる二世問題や政治・選挙、政治家への影響など健全な民主主義を歪めたのではないかということに関しては、手つかずのまま残されている。

早期成立を求める世論の後押しとマスコミ報道 内閣支持率の低下と担当大臣の姿勢と対応

 議会における数に頼まないで、少数意見を尊重して熟議を重ねて合意形成を得ることが、本来民主主義が前提としている制度。今回の法案審議はほぼこの民主主義の制度設計を理想的に踏まえたことになる。

 なぜ、このように異例なことが起こったのか?主な原因のひとつは、被害者救済法案の早期成立を求める世論の後押し。これには、世論調査結果を含めマスコミ報道が大きな力になった。もうひとつは、実質的にリアルタイムで報道される内閣支持率の低下。あえてもうひとつあげれば、担当大臣の姿勢と対応がある。

赤信号を青信号と見誤っている 確かに野洲市は民主的 民間企業の「民」で

 以上の被害者救済法案の国会での審議状況と思い合わされるのが、野洲市議会での病院と駅前問題の審議状況。6日から昨日までの3日間の市議会の状況で紹介したように、国会審議とは真逆。

 病院問題で言えば、評価委員会、市民懇談会、特別委員会などで異論や懸念の意見が出された。なかでも市民懇談会では、2時間の予定であったため、質問と回答に充てられた時間は1時間もなかった。そのため、質問制限が設けられたうえに、それを超えた質問に対しては市は回答しなかった。

 しかし、このような状況であったのに、昨日の議会で市長は、基本計画等は概ね評価いただいたと答弁。

 また、基本計画について医師会の了解が得られていないことについての質問に対して、市長は了解は得られていると明言。これがまったくの虚言であることは、以前紹介した12月1日付の医師会チラシを見れば明らか。

 挙句の果てには、市民懇談会は穏やかで様々な意見が出された。このことは、野洲市が民主的に健全に保たれていることの証しと胸を張った。

 野洲市政が民主的に健全に保たれているかどうかについては、すでに権威主義国家の手法を例にあげて、今の野洲市がある意味、民主主義よりは権威主義に相当近づいていることを紹介した。市長自身にはそのことが見えないらしい。例えて言えば、赤信号、少なくとも黄信号に変わっているのに、まだ青信号のままと見誤っている状態。

 ただし、言葉だけを取り上げれば、確かに野洲市は民主的である。その「民」とは民間企業の「民」。このことは3日間の議会審議で一段と鮮明になった。

 

共通点は議会過半数と早期 違いは支持率等の調査と公表がなく、世論の後押しない 市長の姿勢と対応が前向きでないこと

 ところで、このような野洲市の状況と上で紹介した国会審議の差はどこから出てくるのか?

 まず、共通点をあげれば、議院内閣制の国政と二元代表制の市の違いはあるが、執行部が議会での多数を押さえていること。野洲市の場合「市長与党会派」に公明市議2人と立憲民主党市議1人を加えると過半数になる。もうひとつの共通点は、病院も被害者救済も早期実現を要すること。

 それでは、両者の違い。それは言うまでもなく、国政ほどのきめ細かで頻度の高い報道がなく、世論の後押しがないこと。また、リアルタイムの支持率調査とその公表がないこと。さらに、担当大臣に相当する市長の姿勢と対応が前向きでないこと。

 このように市長が信号を見誤り突進し、それに議会が追随している状況では、昨日書いたように罠に落ちるまで本当の気づきはない。