野洲は穏やか? 腕白な子どもが好き放題に振舞っているような状況を市民は冷静で穏やかに見守っている?

 先日、2年余りぶりで他市の現職市長のひとりにたまたま出会いました。その人から出た最初の言葉が、野洲は穏やかですねといったもの。確かに市民は冷静で穏やか。しかし、発せられた言葉は、反語。その意を推し量れば次のようなことか?

 病院の現地半額建て替え公約があっさり破られた。その後、公約に反して身勝手に駅前Bブロック病院計画を進め、今また市長はそれをひっくり返し、一旦は市長自ら排除した体育館敷地に高齢者に特化した市民病院を建てようとしている。その事業費は半額どころか、今後の建築資材高騰を加味すれば、実質的に当初計画より高くなる。

 要するに、何年も遅れたうえ、不便な所に、高くつく病院ができそう。これは腕白な子どもが、と言うと子どもには悪いが、腕白さは子どもの特権で許される、そのような子どもが好き放題に振舞っているような状況。それを市民は我が事と思ってか、思ってないかは分からないが、いずれにしても、市民は冷静で穏やかに見守っている。外から見ていると異様に見えるらしい。

「断念」とは個人的なことであり、社会的には市民への約束の反故 現地半額不可能と分かっていながら公約に掲げた

 ところで、昨日の新聞にも「新病院の総事業費93億円 野洲市が基本計画書案」の見出しで、11月14日の病院評価委員会の記事が出ていました。内容は先に紹介した記事と基本は同じだが、違いは、これまでの経緯が添えられて、読者の気づきを喚起する内容となっていること。

 「栢木進市長は『現市立病院の場所で、前市長計画の半額程度で建て替えが可能』と主張し、20年10月の市長選で初当選した。その後、公約を断念し、駅前Bブロックで整備する方針に転換。Bブロックでの計画では総事業費は97億7千万円、建築工事費は67億円を見込んでいた。今年5月に再び方針転換し、市総合体育館横の市有地に整備する意向を示していた。」(中日新聞2022年11月17日)

 「現市立病院の場所で、前市長計画の半額程度で建て替えが可能」との「公約を断念」と書いてあると、断念という言葉のイメージが誤解を招く。「断」の字は「英断」、「果断」、また「断食」など、勇ましさや努力などの良いイメージも持っている。

 しかし、栢木市長の場合はまったくそうではなく、公約違反。 「断念」とは市長の個人的なことであって、社会的には市民に対して約束を反故にしたことになる。市長はそうなった理由として、就任までは一市民であったので、病院事業や行政の実態が分からなかったと言い訳した。しかし、市議会議員であったし監査委員の経験もある。また、旧民間野洲病院の理事であった。したがってこの言い訳は通用しない。

 もし、本当に病院事業や行政の実態が分からなかったというなら、2年前の市長としての初登庁日に駅前病院の設計業務を止めるという乱暴なことはしなかったはず。市長は、現地半額立替えが不可能と分かっていながら公約に掲げた。

「半額」が消え、市想定では発注段階で総事業費105億円8千万円に跳ね上がる

 この記事を読んで改めて「半額」公約を思い出した。記事では「新病院の総事業費93億円」、そして「Bブロックでの計画では総事業費は97億7千万円」となっている。いかにもBブロックより安いように見せかけてあるが、基本計画案段階の粗い積算。そのうえ、体育館の階段移設や国スポと障がい者スポーツ大会対応の工事、さらには病院自体の電磁波対策工事などが十分見込まれていない。

 このことに加えて、工事費が年8%程度上がることを市は想定している。そうであれば、76億8千万円の建築工事費は、発注段階では89億6千万円になり、12億8千万円の上昇。その結果、市の想定では総事業費は105億円8千万円に跳ね上がる。おそらく着工後も建築資材と労賃の上昇で増額が必要となる。

 このような見通しであるのに病床数をBブロック病院より34床も増やそうとしている。「半額」や「身の丈に合った」はどこに消えたのか?むしろ、就任以降同様の放漫財政。

「最善」も消えた 「今の場所を強く否定する理由はない。」が実情

 そして、もうひとつ消えたものがある。それは市長が約束した「最善」。先の評価委員会での「今の場所を強く否定する理由はない。」という滋賀県理事の角野委員の意見に良く表れているように、どの委員も体育館横の温水プール跡地が最善の場所だとは言っていない。

 ほとんどの委員は「早く」を理由にして、体育館病院計画案に異論なしと言った。ただし、「早く」については検証もされず、昨日書いたように実質的に虚言に近い。

 表面は冷静で穏やか状況だが、実のところは蟻地獄に落ちつある状況ではないか?