県立高専 質問、答弁とも具体性なく、抽象的で言葉が上ずっている

 昨日の新聞に「滋賀県議会だより」が折り込まれていました。令和4年(2022年)10月30日付けで、発行は滋賀県議会。記事の見出しは、「9月定例会議の概要」となっていて、質疑・質問とそれらへの答弁の概要が紹介されている。

 普段ならあまり注意して読まないところが、中央に「県立高等専門学校」と青地に白抜きの小見出しが目についたので、一通り目を通しました。

 まず高専についてのやり取り。

 議員の質問の骨子は、「全国には既に多くの高専が存在します。各地から学生が集まるハイレベルで魅力的な学校となる」ための「令和9年の開校に向けた知事の意気込みを伺います」。

 これに対する知事答弁の骨子は、「今後、小中学生を対象とした理工系の楽しさが分かる体験教室や、高専を卒業されて全国で活躍されている方などによるキャリア講演会や職場交流体験など」、「こうした取組を通じて、令和の時代にふさわしい新しい高専像をしっかりと伝え、最速で令和9年度の開校を目指し、県内外の子どもたちから選ばれる高専を目指したいと思います」。

 質問、答弁とも具体性がなく、抽象的で言葉が上ずっている。

 特に気になったのは、高専の整備と毎年の運営のために多大な経費負担が必要。その財源は県民負担。グラウンド等の整備は野洲市民の負担。

 

巨額投資で全国高専との学生確保競争に参入する合理性が理解できない 健全な政策選択できているか?

 質問にあるように「全国には既に多くの高専が存在」する。そして、いずれにおいても今後の少子化の進行に対応した学生の確保が大きな課題。このことは、高校、大学でも同様。このような状況のなかで、わざわざ今さらお金をかけて高専を設置して、全国に多数ある高専との学生確保競争に参入しようとすることの合理性が理解できない。

 もちろん、競争に参入して優秀な人材を県内に確保することの意義は否定できないが、県内の大学卒業生の就職状況を見れば、囲い込み政策は実効性が薄い。県内外から人を集めるとはいっても、観光やイベントとは事業目的が違う。

 県財政にゆとりがありすぎて使い道に困っているなら別。しかし実態は逆であり、無理をして、高専設置もPFI等の公民連携事業を想定している。ましてや、県立高校や養護学校の整備状態も十分とは言えない。高専の運営主体となる県立大学そのものも課題は同様。特に、異常な過密状態と遠距離・長時間通学が課題となっている野洲養護学校の対策を県は拒み続けている。

 このような状況を見ると、健全な政策選択ができているのか疑問。

滋賀県美術館 高額を理由に止め、47 億円が約83億円に 野洲市の新病院も同じ流れに

 実のところは、「滋賀県議会だより」に目を通して、高専以上に引っかかったことは、「文化振興」の小見出しの美術館問題。

 質問の骨子は次のとおり。

 「最終的に予算面から断念することとなった新生美術館構想では、施設整備費の上限は 47 億円と設定されていました。今回の補正予算で県立美術館の改修費と(仮称)新・琵琶湖文化館の整備費を合わせて約 83 億円の予算を投入する以上、新生美術館構想を上回る効果が期待されて然るべきですが、滋賀の美の魅力発信をどのように充実・発展させていくのか伺います。」

 答弁の骨子は次のとおり。

 「美術館は、これまでの取組に加えて、法律に基づく文化観光拠点施設として、地域に根差した文化やアートを楽しみながら県内をめぐる『文化ツーリズム』に繋げる取組を進め」、「滋賀の美の魅力発信をより充実したものにしたいと思います」。

 ここでのやり取りも、旧式・慣例型の質問・答弁で、高専の場合と同じく、具体性がなく、抽象的で言葉が上ずっている。また、観光に絡めていることも紋切り型。

 そのことは別として、このやり取りで引っかかったことは、前知事の計画を高額だからとして止めたが、その結果47 億円が約83億円になったこと。

 新生美術館構想では「美術館の『近・現代美術のコレクション』、そして国宝や重要文化財を収蔵する琵琶湖文化館(現在休館中)の「神と仏の美」の継承、全国に先駆けて滋賀県で培われてきた『アール・ブリュット』の3つの柱を一体的に示す場として『新生美術館』を計画していた」。(「美術手帳」NEWS / HEADLINE 2018.12.13)そして、2020年開館を目指していて、予算は47億円が上限だった。

 実質的に同じ機能を持つものを作るのに今回は約83億円と2倍近い事業費がかかる結果になりそう。場合によってはそれで済みそうもない。野洲市の新病院もここに来て、止めた結果が高くなるという、同じ流れになりそう。いま、滋賀県知事と野洲市長は高専、病院、国スポのラグビーといろんな面で二人三脚状態になりつつあるので、わからないでもない。

 新美術館の構想がどのようなものか知らないが、今後は建物整備よりは、収蔵品の充実や芸術家・作家の育成などに工夫と財源を振り向けるべき。ここでも健全な政策選択ができているのか疑問。