野洲市の教諭のいじめ事件 広く大きく報道

 昨日少し触れた野洲市の教諭のいじめ事件。昨日から今朝にかけて放送や新聞で広く大きく報道されています。

 ただし、その内容は、市教委の発表がもとになっているので、ほぼ同じ。ここで詳しく繰り返す必要もないので、新聞記事から一例を紹介すると次のとおり。

 「滋賀県野洲市の市立小学校の50歳代の男性教諭が、担任していたクラスの2年生の男子児童を発達障害と決めつけ、授業中に不適切な発言を繰り返したとして、学校が「教諭によるいじめ」と認定していたことがわかった。教諭は2学期から担任を外され、休職している。」(読売新聞2022年9月29日)

 「教諭は男子児童の保護者に『一連の発言は明らかに私によるいじめです。これまでの経験と勘で(発達障害と)判断してしまった』との謝罪文を送った。男子児童は一時、『学校に行きたくない』と話していたが、休まず登校しているという。」(読売新聞2022年9月29日)

教諭だけが悪かったことで問題を矮小化する市教委の姿勢が透けて見える

 他の記事からの情報を補って筋を整理すると次のとおり。市立小学校の50歳代の男性教諭が、5月中旬から7月中旬にかけて週に2〜3回程度担任していたクラスの2年生の男子児童を発達障害と決めつけ、授業中に不適切な発言を繰り返した。それにつられて同級生がその児童をからかういじめ行為につながった。学校の調査でこの教諭はいじめを認め謝罪し、担任を外され休職中。他方、被害を受けた児童は今は登校している。一件落着の報告。

 これでは、この教諭だけが悪かったことで問題を済まそうとしている市教委の姿勢が透けて見える。

教諭の問題や学校の崩壊以前に、実態として市教委の崩壊が進んでいる 出たとこ勝負の不誠実な記者会見

 昨日の市教委の記者会見の模様がYouTubeで公開されている。「【LIVE】50代担任教諭が児童にいじめ行為滋賀・野洲市教育委員会が会見」(TBSテレビ2022年9月29日)。1時間35分にわたる長い会見。

 これを通して見ると、当該教諭の行為に問題を矮小化しようとしていることが、一層明らかになる。

 昨日も指摘したように、「いじめ防止対策推進法」やそれに基づく市条例などの制度に則った対応がなされていない。専門家や第三者委の評価も経ないで、単に学校と市教委の恣意的な調査しか行われていない。まともな調書もなく、出たとこ勝負の不誠実な記者会見。

 記者からの質問で、いじめアンケ―トの実施も確認していない、担任であり学年主任でもあった当該教諭の疲労も把握していない、したがって、当然負担減らす対策も行っていない。疲労に関しては、家庭状況に起因する場合もあるなど、無責任な回答。西村教育長と井上次長の回答を聞いていると、他人事のように一般論や自分の経験で答えるずさんさ。要するに、問題教員が事件を起こしたが、児童には深刻な被害はなく一件落着の報告の体裁を装おうとする意図が見える。

 したがって、今後の改善対応も、教諭への指導の徹底や教師としての人権感覚の向上の研修などしかなく、教育、学校環境、教師の働き方の改善策は一切示されなかった。

 加害者とされる当該教諭も、実のところは、勤務上の疲労、またその後の市教委による密室調査への対応などによって心労を重ねた被害者ではないか?

 さらには、かつてはあれほど充実していた、学級の支援スタッフの配置が相当後退していることも明らかになった。教諭の問題や学校の崩壊以前に、実態として市教委の崩壊が進んでいる。

 

大津いじめ自殺事件に起因の2015年元下村文科相教委改革の帰結

 ところで、学校でのいじめ防止対策の充実は、2011年10月の大津市中2いじめ自殺事件がきっかけになている。この事件を受けて、2013年6月28日に議員立法によって「いじめ防止対策推進法」が国会で可決成立し、同年9月28日に施行。

 この法律では、教委だけでなく、国、地方公共団体、学校の設置者、学校及び学校の教職員、保護者と学校教育にかかわるすべての当事者に責務を定めている。

 当時事態はそれでとどまらず、下村文科相の主導で教育委員会制度の大改革にまで及んだ。教育行政に自治体の首長を関与させるようにした。具体的には、すべての自治体に法(「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律2015年4月1日施行)によって、「総合教育会議」の設置を義務付け、首長が招集し主宰する制度となった。

 また、教育委員についても、従来分かれていて牽制力が働いていた教育委員長と教育長を一本化し、「新『教育長』を設置して権限を強化した。

 

 

 その結果、行政委員会としての教育委員会の主体性と自立性が大きく損なわれ、行政の長である首長、そして意向に従う教育長という体制となった。このことは、添付した文科省の資料の「首長が教育行政に果たす責任や役割が明確になるとともに、首長が公の場で教育政策について議論することが可能に」に端的に示されている。今回のいじめ事件の遠因は、この2015年の元下村文科大臣による教育委員会改革にあり、その帰結。

パワハラ市長がいじめの責任者に 野洲市だけでなく、全国の教育の闇も深い?

 この弊害は、野洲市においては、体育館病院や駅前文化ホールの閉館と解体といった方針に具体・端的に現れている。

 そして、今回の教諭によるいじめ事件。市長が、いじめ問題をはじめとして教育行政の責任者であるにもかかわらず、それに対してその自覚がなく、熱意も誠意も持たず、ましてや自らパワハラ事件まで起こしている事態では、残念ながら、起こるべくして起こった事件。昨日も触れたように、本来市長は、市教委がいじめを把握した段階でその報告を受けていなけれならない。しかし、9月5日の市議会本会議での答弁で、稲垣議員の誘いに乗って、西村教育長のことを他市からも引く手あまたの優秀な教育長だと絶賛。このことからすると、この深刻ないじめ事件のことを知らなかったことになる。

 野洲市の教育の闇も深いが、全国の闇も深くなっているのではないか?