駅前市有地の商業開発は市長公約になく、後から巧みにすり替えられた

 本来の新病院用地である駅前A、Bブロックの病院事業債の繰上償還(一括返済)が実質的には滋賀県の三日月知事の判断にかかっていることは先日触れました。

 市の財政負担が増えるなど不利な条件であるにもかかわらず、栢木市長が駅前土地の起債の繰上償還を無理押ししようとしている理由は、言うまでもなく、市長選の公約実現のため。その公約とは、駅前に病院をつくらないというもの。

 ただし、改めて確認すると、その駅前の市有地をどう使うかについては公約にはない。公約は、「野洲駅南口周辺整備事業の見直しおよび野洲駅南西部の『C地区』開発によるにぎわいの創出と税収増」。また「大型商業施設の誘致促進および商工業の振興」は「市街化区域の拡充等による」となっていて、商業開発は既存の市街化調整区域である駅前を想定していない。

 このように市有地である駅前A、Bブロックの商業開発は公約ではうたわれていない。市長になってから公約が巧みにすり替えられた。

 

 

すり替え公約の駅前商業開発はBブロック病院中止の巻添えで不明のまま

 このすり替え公約に基づき、ちょうど1年前の9月議会において民間による駅前A、Cブロックの商業開発の補正予算が提案されたが否決された。なお、この時はBブロックは市長方針で病院用地であった。

 しかし、その後の12月議会、12月23日の本会議で駅前商業開発事業の1,500万円を含む補正予算案が可決された。そして、この議案の資料として、その年の秋に強行したサウンディングの結果を元にして事業概要とスケジュールが公式に示され、今年初めから事業が動き出すかと思われた。

 ところが、年初早々から、市長がBブロック病院計画を突然保留し、4か月余りの熟考に入ったため、その巻き添えで、1,500万円の駅前商業開発事業は止まってしまった。

その後、この駅前商業開発事業がどうなっているのかは市民には不明。議員も議会質問をしない。

 

 

市は公共事業計画なしに土地を取得することはできない

 とは言っても、市長が駅前A、Bブロックの起債の繰上償還を急いでいるということは、これまでの議会答弁からすると、この土地を民間事業者からの提案を待って売却するか賃貸するかの意向が消えていない。加えて、泥縄式に文化ホールの閉館と解体まで西村教育長が主張している。今年の12月議会でその条例案を提出するという慌てよう。悪乗りも度が過ぎている。

 以前書いたように、A、Bブロックの起債を繰上償還したとしても、これらの土地が病院事業用の行政財産であることに変わりはない。そこで、これまた議会答弁からすると、市長はこれらの土地を病院事業から市が長期の分割返済で買う方針のようである。ただし、これまでのところ、その手続きの詳細や適法性は示されていない。

 そもそも、市が公共事業計画なしに土地を取得することはできない。ましてや、土地を民間に貸したり売ったりする目的で税金で土地を取得することはなおさらできない。

 

 

病院をつくらないという公約のための後付け理屈の駅前商業開発の実現可能性はない

 このように辿ってくると、この駅前市有地に関しても、市長就任当初から無駄な経費と時間と労力を費やして紆余曲折、二転三転してきたことが明らかになる。要するに、駅前に病院をつくらないという公約のための後付け理屈の駅前商業開発。その実現可能性はない。

 そもそも、このような土地に関する手続きの無理さを別にしても、駅前商業開発自体の無理さ加減は、以前紹介した米原駅東口駅前開発が白紙になったことで明らかになっている。ちなみに、かわって期待した高専までダメになった。以前紹介した「米原市、高専候補地に米原駅東口付近を提案 再開発は白紙化」という見出しの記事を改めて引用しておきます。

 「米原駅東口周辺の市有地をめぐっては、市や民間企業などでつくる一般社団法人「米原駅東口まちづくり協議会」が、再開発を進めていた。商業施設のプレオープンを二三年春に予定していたが、テナント誘致が難航。市は計画を白紙に戻し、協議会を脱会し、高専誘致へと方針を転換することになった。」(中日新聞2022年7月21日)

 今日このようなことを書こうと思ったのは、今朝、目にしたネット記事に触発されたから。近畿府県の県庁所在地市のホットな事例。最後に引用しておきます。

 「市長の決定有りきで、そうなるように資料をつくっていくので、矛盾や不都合が出るのも当たり前。『なんでそうなったの?』に対して『市長命令だったから』とは答えられないので、しどろもどろになったり、誤魔化したりになったんだと思います。なので、尾花(正啓)市長が市長でいる限りは絶対に確定的な資料は出てきません」Business Journal 2022.09.21 「ツタヤ図書館は第2の森友学園?不自然に値引きされた賃料、裏で市長と癒着か」