病院事業設置条例が施行されないで放置されている

 8月12日の臨時市議会で可決された病院事業設置条例が効力を発揮(施行)されないままで放置されている。その理由は明らかにされていないようであるが、施行日を市長が自由に定める規則に委ねる形で異例にも議決された。

 これまでの議会での市長答弁から推測すると、その間に駅前市有地A、Bブロックにかかっている病院事業債の繰上償還(一括返済)についての滋賀県との協議にめどをつけようとしていると思われる。

体育館病院用地「タコ足喰い」手法で栢木市長得意の「民間」なら禁じ手

 元々の計画、と言っても、条例変更案は可決されたが施行されず、まだ効力を発揮していないので、実際は現行計画であるが、それでは駅前Aブロックに病院を建てると条例で定め、Bブロックに250台の駐車場整備となっている。そのための用地として、すでに市有地であった駅前A、Bブロックを改めて病院事業会計で市から買収。その買収手法として、超低金利で30年間の均等返済の病院事業債を発行した。これによって、毎年の返済時に国から交付税によって25%の支援が受けられる。交付税の総額は、最終的に約2.7億円の見込み。

 いっぽう体育館病院の場合は、温水プール跡地や駐車場用地などの病院用地を病院事業で買収しない計画なのでこの利点はない。これは、いわゆる「タコ足喰い」手法で、公共政策ではもちろん、栢木市長得意の「民間」なら禁じ手。

病院事業債の発行は滋賀県知事に協議し、その同意を得ている 繰上償還を想定していない

 駅前A、Bブロック買収の病院事業債を発行するにあたっては、滋賀県知事に協議し、その同意を得ている。繰上償還(一括返済)にあたっては、滋賀県知事との協議が必要。

 当然のことであるが、病院事業債をはじめ地方債の発行は繰上償還(一括返済)を想定していない。巨額の借入金を一気に返済すれば、その自治体財政に大きなダメージ(損傷)を与える。したがって、繰上償還が認められるのは、事業が何らかの理由で中止される場合に限られる。

 野洲市の新病院整備事業は中止されるわけではない。万一中止されたら、老朽化し、耐震強度不足で危険な病院の展望がなくなる。かといって、現状では、体育館病院の実現可能性は客観的に明らかになっていない。

 

 

知事の繰上償還の判断は、体育館病院の起債同意を行ってから

 そこで問題になること。それは、このような状況のなかで、滋賀県の三日月知事は病院事業債の繰上償還を認めるのか?

 そもそも、先日も書いたように、体育館病院整備の新たな起債の同意も三日月知事の判断にかかっている。したがって、まずは、体育館病院の実現可能性が三日月知事の判断にかかっている。しかし、これほど問題が多い体育館病院に三日月知事はお墨付きを与えることができるのか?

 いずれにしても、病院事業債の繰上償還の判断は、実質的には、体育館病院の実現可能性を三日月知事が確認し、起債同意を行ってからでないとできない。

 なお、知事が病院事業債の発行同意や繰上償還を認めるにあたっての指針は、総務省の通知「地方債の総合的な管理について」。この通知では、繰上償還については次のようになっている。

 「地方債の金融商品としての安定性を確保し、円滑な発行及び消化を図る観点から、市場公募地方債をはじめ、流通を前提とした地方債証券については繰上償還を行わないこととして発行されたいこと。

 なお、事業の中止等償還を行うべき事由が発生した場合にあっては、当該事由に相当する部分について買入消却又は減債基金に積み立てること等により対応されたいこと。」