事業管理者は常勤医師として「医療行為を継続」しなければならない!

 野洲市の病院事業管理者と病院事業顧問の人選が明るい話題として報道されている。びわ湖放送も今回は珍しく即日、「栢木市長『これからがスタート』/滋賀 野洲・市立病院問題」(びわ湖放送2022年8月23日)の見出しで放送し、ネットでも配信した。いずれも、いわゆるご祝儀報道。

 そのなかの報道では「前川さんは四月から市立病院の副院長を務め、九月以降も医療行為を継続する方針。」(中日新聞2022年8月24日)とある。これは、給与等の積算に常勤の医師としての分が含まれているため。

 したがって、別の報道では、前川氏は、「就任に合わせて副院長を退く。年間の給与は医師手当を含め約1966万円。」(毎日新聞2022年8月24日)となっている。

 かつて公表された約2500万円と今回の約1966万円の関係は分からないが、いずれにしても、常勤医師として「医療行為を継続する方針」であるらしい。というより、その分の手当をもらう限りは、継続しなければならない。

常勤医師として働くことは不可能 就任早々真価が問われる

 事業管理者が常勤医師として働くことが実際可能なのか?いや、病院長でも無理なのだから、まして事業管理者が常勤医師として働くことは不可能だし、その必要はない。それどころか、新病院整備だけでも手に負えない。

 ところで、8月23日の全員協議会で前川氏は病院事務部長の紹介で挨拶をした。それは、市立野洲病院の基本方針を個々にあげて説明するなど、就任時並みのまとまった挨拶であった。

 そのなかで、基本方針の6番目の「経営責任の明確化と経営の透明性を確保し、持続可能で効率的な病院経営を行います。」についても自分の言葉で「経営基盤の安定」について力を込めて語った。

 ただし、6つある基本方針を5つと言ったり、持続可能を継続可能と言うなど、言い間違いはあったが、それは別にして、この抱負のことを聞いたときに、大丈夫かと心配になった。このことが、たちまち前川氏の足かせになる。言い換えれば、就任早々真価が問われることになる。

前川氏への期待や氏が直面する課題

 前川氏への期待や氏が直面する課題の主なものをまず整理すると次のとおり。

①老朽化し危険な病院での医師の確保。このことは、「市長は23日の定例会見で『滋賀医大との連携を深め、医師の確保にもつなげたい』と期待した。」(中日新聞2022年8月24日)に明らか。

②体育館病院の実現。

③自ら力説した基本方針6番目の「経営責任の明確化と経営の透明性を確保し、持続可能で効率的な病院経営」

常勤医師の働きができなければ、過大な給与 非常勤医師との公平保てない 給与決定権が移った段階で改善迫られる

 上記のどれも重要であるとともに、その実現は難題。ここでは、たちまち前川氏の足元にかかわる、③について1、2あげる。

 まさに、「経営責任の明確化と経営の透明性を確保し、持続可能で効率的な病院経営」は、前川氏が9月1日から就任予定の病院事業管理者の肩にかかっている。

 そこで、これまでは市長が担ってきて、はぐらかしてきた経営と説明の責任を果たさなくてはならなくなる。まとめると次のとおり。

①事業管理者の給与は市長が設定したものである。そこには、前述のとおり、常勤医師相当分が含まれている。しかし、就任して実際その働きができなければ、結果的に過大な給与になる。また、他の医師、特に非常勤医師との公平が保てない。本気で経営責任を果たすなら、自らを含め病院職員の給与決定権が事業管理者である自分に移った段階で、非常勤医師と同様、具体的な勤務実態に応じたものに改善することが迫られる。

 このことは、これまでの議会審議で、今年度決算が単年度赤字に転落することが見通されているため、喫緊の課題。

 

ご馳走をおごってあげると誘われ、後ですべて付けを回されるようなもの 率先して身を切る対処が求められる

②前川氏は今年4月から新たに設けられた副院長の職にある。前川氏が退いた後の後任がなければ、この職は、前川氏を事業管理者にする前提で設けられた、いわゆる腰掛ポストであったことになる。上記①で述べたように、自らの高額な給与に加え、新たに新病院整備部の職員給与を入れると、今年度の赤字幅は大きく膨らむ。

 このような状況のなかでは、腰掛ポストを用意するような財政的余裕はなかったことになる。この点についての、「透明性を確保し」た説明と経営者として、率先していわゆる身を切る対処が求められる。

 この状況は、たとえれば、ご馳走をおごってあげると誘われ、喜んで食べたが、後ですべて付けを回されるようなもの。もちろん、この付けは、最終的には市民に回ってくることになるが。