市長の思いどおりに病院事業を進める条件が整ったが、市民の目から遠ざかる

 8月12日の市議会臨時会で病院関連5議案すべてが可決されたことで、ようやく栢木市長が思いどおりに病院事業を進める条件が整ったことになります。

 その変化については、昨日4項目に整理して紹介しました。

 ただし、この変化後の動きは、当分の間市民には見えなくなる。今月末からはじまる議会定例会に駅前関連の予算案が出されるかどうかは不明であるが、少なくとも、病院事業に関しては、市民の目から遠ざかる。病院特別委員会や評価委員会の開催も今秋の後半にしか予定されていないので、なおさらのこと。

顧問、事業管理、病院長、職員の関係にリスクの可能性

 そこで、今後の病院事業の動きについて、これまで市長の発言や公表された資料から推測されるところを、まとめておきます。

 まず、市立野洲病院の運営。新しく年俸2500万円で病院事業管理者が置かれ、市長に代わって、新病院整備を含め、市の病院事業の全権限と責任を負う。とは言っても、別途新たに、司令塔として市に病院事業顧問が置かれる。管理者はその司令塔の指示に従うので、実質的には、事業管理の権限は制約される。ただし、責任は軽減されないという歪んだ関係になる。

 とは言っても、顧問と管理者は過去には医科大学で上司と部下の関係にあったので、当面はこの2人の関係は円滑に進む可能性は高い。

 かたや、病院内における事業管理者と病院長の関係の方は、屋上屋を架すことになるとともに、副院長が管理者になるという立場の逆転現象が生じるので、懸念要因。当然、それが円滑にいかなければ、病院職員の士気と働きにも影響する。つまるところ、顧問、事業管理、病院長、職員の関係にリスクの可能性が存在することになる。

 

顧問の思いどおりに事業が進む まずコンソーシアム加入でトライアングルの完成

 ところで、冒頭で、栢木市長の思いどおりに病院事業を進める条件が整ったと書いたが、市長は医療や病院のことが分からないとして、顧問と管理者を置く。したがって、実のところは、顧問の思いどおりに事業が進められることになる。

 そして、この顧問は地域医療機能推進法人湖南メディカル・コンソーシアムの理事。

 たちまち何が進められるかというと、昨年6月に栢木市長がフライング(不正出発)して加入した疑いが持たれている地域医療機能推進法人湖南メディカル・コンソーシアムへの市立野洲病院の正式加盟。病院職員の誰かが自発的に加入手続きの「起案」をするのか、それとも、管理者の指示で誰かが「起案」をするのか分からないが、管理者が決裁すれば、加入手続きは済む。

 ただし、病院長は加入の必要性はないと議会答弁している。病院組織の決裁規定がどうなっているか不明であるが、もし、病院長の決裁が必要であれば、そこで止まる可能性がある。事業管理者はそこをあえて強権的に押し切るか?

 いずれにしても、市長、そして、顧問の念願であった、コンソーシアムへの加入は実現しそう。そして、このコンソーシアムへの入会は、7月21日の記者会見で、「県です。『一度聞いてみては』と案内いただきました。」と市長が答えているように、「案内」したのは県。これで、県、コンソーシアム、栢木市長のトライアングルが完成することになる。

市にメリットなくてもコンソーシアムには特段のメリット 市議会チェック働かないおそれ

 ところで、このコンソーシアムについて市長は次のように述べている。議会でも同様の趣旨の答弁を行っている。

 「コンソーシアムに加入するといろいろな情報が収集できると聞いておりました。会費も必要なく、入会するにあたり市としてデメリットも少ないとも考えておりました。当時も今もそう思っております。」(7月21日の記者会見)

 市にとって加入による「デメリットも少ない」かわりに、特段のメリットもない。しかし、コンソーシアムには、特段のメリットが想定される。少なくとも、初めて公立病院が会員になることによるコンソーシアムの信用度の向上。将来的には、顧問と管理者が共同調達に舵を切れば、さらに大きなメリットが期待される。

 場合によっては、それにとどまらない。顧問は、コンソーシアムの実質的な創設者であり、理事。形は市立病院であるが、運営の実態は、市民の手を離れてコンソーシアムの意向で動く病院になるおそれも否定できない。市議会のよほどのチェックが必要であるが、そう簡単に目が及ばない。それ以前に、市議会の構成は全18市議の内11市議が市長の意向をそのまま追認する体制になっているので、そもそもチェックが働かない。

市長の12日発言は従来と大きく異なる またも迷走の始まりの予兆 

 次に本題の新病院整備に関しては、議案可決で動き出すと思っていたら、市長がブレーキをかけた。昨日紹介した。「栢木市長は『新予定地が最適だという根拠を示すための予算で、場所の決定を断行するものではない』などと理解を求めた。」(毎日新聞2022年8月13日)

 市長はこれまで総合体育館横での病院整備に関して、「 一つ一つ根拠立て整理し、この場所が最適地としてお示しさせていただきましたので変えるつもりはありません。」(6月29日定例記者会見)と発言していた。したがって、12日に発言は、従来のものと大きく異なる。

 「新予定地が最適だという根拠を示す」作業は、今回予算が議決された新病院の基本計画策定とは異なる。最適の根拠を示すためには、土壌・地盤の状況、高圧電線の影響、洪水、交通など専門的な基礎調査が必要。これらを実施したうえで、基本計画策定まで行うのか。さらに、計画には新病院の収支計画(シミュレーション)まで含むという。そのためには、体育館の屋外階段の新設と撤去の事業費なども正確に積算する必要がある。これらの業務が数か月の間に400万円でできるとは到底考えられない。

 これでは、新病院の開院時期を含め、総事業費など益々分からなくなってくる。新病院のまたの迷走の始まりの予兆。

市立野洲病院のコンソーシアム管理の「始まり」 顧問と事業管理者の設置はそのための大仕掛け?

 このように辿ってくると、今回の議案の可決は、新病院の「始まり」ではなく、市立野洲病院のコンソーシアム管理の「始まり」ではないかと見えてくる。

 そして、結果から見れば、昨年6月に市長が個人印を押してまでして行ったコンソーシアム加入が、最終的には不発に終わったので、それを公式に実現するための大仕掛けが、顧問と事業管理者の設置だったということにもなりそうだ。