野洲市「民の知恵」敗北宣言 「免罪符」としての研修参加 はバイデン外交と並ぶ
市政の本質が見える 研修準備はいつから? 一般職員用研修が市長の「免罪符」に使われた!
 市長のハラスメント防止研修参加。これにこだわり続けるつもりはありませんが、マスコミの関心も高く、現在の市政の本質の一面がよく表れているのでもう少し触れておきます。
 昨日は、今回の市長の参加が記者会見記録からは総務部長の主導とお膳立てで事が運んだように見えたことを書きました。一般職員用のハラスメント防止研修を例年より半年も前倒して開催し、そこに市長も参加する。そのうえ、今後も参加する方針まで総務部長が明らかにした。
 これらのことを、記者からの質問に対して総務部長が即座に答えることは無理。例年1月開催の研修を半年前倒しするためには、会場確保、講師の日程調整、そして何よりも市長の日程調整と了解が必要。おそらく、研修開催日は市長の日程に合わせて設定するなど、かなりの事前準備が行われたはず。その準備を誰がいつから始めたのか?
 いずれにしても、一般職員用研修であるのに、結果的には市長に「免罪符」を与えるために利用されたことになる。

 ところが、総務部長の発言からは、市長がこのことに主体的にかかわっていないよう見受けられ、市政の実質的なかじ取りが市長の手にないことが一層明らかになった。

研さんを「行う必要があったのではと思」うから始まった
 市長の研修参加の原因を突き詰めていくと、パワハラ第三者委員会の答申書に行きつく。昨日紹介した記者会見記録の直前に記者が答申書の一部を引用して質問した。その部分をまず、原典の答申書から引用すると次のとおり。
 「公職の経験がない又は少ない人物が特別職に就く際、就任前又は就任後間もない時期に一般職の中立性や特別職の倫理について研鑽を積む機会を得られず、理解の乏しいまま政策の実現に向けた職務命令を発することも、ハラスメント事案発生の危険を内包する。」(答申書23ページ)
 そして、会見記録は次のとおり。 
記者… 答申書には、「公職の経験がない人が特別職に就く際に、一般職の中立性や特別職の倫理について研さんを積む機会が得られず、理解が乏しいまま職務命令を発することもハラスメント事案発生の危険を内包する」とあります。市長は、市長に就任後、研さんする機会がありましたか。
市長… 研さんする機会はありませんでした。自分自身を戒め、行う必要があったのではと思います。

答申書を全面的には受け入れていない市長がこの部分は受け入れた
 栢木市長は、答申書の内容を全面的に認めているわけではない。このことは、7月6日の記者会見や13日の臨時議会での発言で明らか。その代表的なものは市長が独断で地域医療機能推進法人への加入手続きを行った問題。
 また、「第三者委員会から出された答申書の中身についてはコメントは差し控えさせていただきます。」と会見では説明を拒否している。
 その市長が、上で述べたとおり、研修参加については、素直(すなお)に答申書の指摘に従ったことになる。
 これは、見方を変えれば、市の公的な業務運営とそこでの市長の姿勢は、いわゆる民間のやり方が通用しないことを市長が認めたことになる。

法令遵守と合意形成手続きは民間も同じのはずだが市長は違いを認めて参加 
 先に引用した答申書の「公職の経験がない又は少ない人物が特別」というくだりについては、私は個人的には合意できない。その理由は、端的に言えば、市役所などの公的組織だけが特殊ではなく、いわゆる民間でもコンプライアンス(法令遵守)と組織内外との合意形成がルールに基づき行われることは同じだから。
 しかし、栢木市長は答申書のこの部分の指摘についてはあっさりと受入れ研修に参加した。そのうえ、「大変ためになった。」と高く評価した。これは、「民の知恵と力」を掲げた栢木市長の敗北宣言と受け取られる。

バイデン大統領はサウジ皇太子に「免罪符」を与えた
 ところで、「免罪符」で連想するのは米国バイデン大統領の今月中旬の中東歴訪。15日にはサウジアラビアのムハンマド皇太子と会見した。大統領はこれまでサウジ人記者殺害事件を理由にサウジアラビアとの関係を凍結してきた。
 昨年2月には、「ムハンマド皇太子がカショギ氏の『拘束もしくは殺害する作戦を承認した』とする報告書を公表した。」(ロイター2021年2月27日)トランプ前大統領は、この報告書の公表止めていた、あた、もちろんサウジ側はこのことを否定していた。
 なお、この記者殺害事件とは、サウジ王室を批判してきたサウジ人記者カショギ氏が2018年10月にトルコのサウジ総領事館で殺害された事件。
 今回のバイデン大統領が自らサウジを訪問しムハンマド皇太子と会見したことは、これまでの冷めた関係をもとに戻す動き。「バイデン氏との会談が実現したことは、皇太子が米国から事実上『「免罪符』を得たとの見方が広がっている。」(読売新聞2022年7月17日)との報道もある。

「免罪符」の代償としての「民の知恵と力」敗北宣言 今後病院と駅前はどうなるか? 
 寄り道が長くなりましたが、栢木市長は研修参加でパワハラの「免罪符」を得た。何のための「免罪符」かといえば、たちまちは病院関連4議案可決を有利に運ぶため。そして、ひいては、2年後の市長選挙のため。
 他方、中東情勢で「免罪符」を得たのは、サウジの皇太子でそれを与えたのは米国バイデン大統領。
 大統領が「免罪符」を与えた理由は、米国内のガソリン価格の高騰を抑え、秋の中間選挙、引いては2年後の大統領選挙を有利に運ぶため。このようなメリットを期待する代わりに大統領は、従来の国際正義を旨とする対サウジ外交の方針転換による政治イメージ悪化の代償を払うこととなる。
 そこで野洲市の場合は?
 「免罪符」を得たのも、与えたのも栢木市長。したがって、「免罪符」を与えた側の栢木市長は何らかの代償を払ったことになる。それは、「民の知恵と力」の敗北宣言となると理解される。

 バイデン大統領の場合は相手のある緊張とリスクを伴う外交。しかし、栢木市長の場合は密室の自家取引。さて、バイデン外交とどちらが技上手か?
 そして、「民の知恵と力」の敗北後、病院と駅前はどうなるか?