市長減給条例案の採決結果に衝撃

 去る7月13日の市議会臨時議会で、市長減給条例案が賛成9、反対8の賛成多数で可決されました。このことはすでに紹介したので詳細は省きますが、この結果を新聞等の報道で知った市民のなかには、そのようなものかなと受取った人たちも少なくないかもしれない。市長は職員へのパワハラパの責任を取って、給料を3割、3か月削減という重い処分を自らに課したと。

 しかし、条例案の審議に当たって厳しい質問や討論を行ったうえで、反対した議員たちは、採決結果に無念であるとともに、愕然としたと推測される。

 また、ネット配信を含め、傍聴した市民のなかには、議員たちと同様かそれ以上の衝撃を受けた市民たちがいた。このことは推測でなく、何人かから直接聞きました。

衝撃の理由3つ ①責任を反省していない 条例案の根拠ない ③支出額の半分に満たない

 衝撃の理由は人によって違うと思われるが、大きく見れば、このような内容の条例案が通ったこととその審議内容。

 もう少し細かく見れば、まずはつぎの3つが考えられる。

①市長が自ら起こしたパワハラの責任を十分に反省していないこと。特に、第三者委員会の答申書の内容を市長は完全に受け入れていない。もし受け入れているなら、地域医療連携推進法人加入問題に関する市長の3月議会での答弁は虚偽に当たる。しかし、答弁は虚偽でないと市長が否定したことから、市長が答申書の内容を完全に受け入れていないことが明らかになった。 

②もうひとつの理由は、条例案の給料の3割、3か月削減の根拠についての議員からの質問に対して、根拠はなく、重い処分と認識しているという答弁で押し通したこと。

③さらに理由としてあげられるのは、給料の削減額が市長の行為が原因で無駄に支出された市費の半分にも満たないこと。市長給料の3割、3か月削減は総額で約73万円。ところが、第三者委の運営には約168万円の市費が支出されている。

「法治」の基本である、罪・罰・賠償の賠償が欠けた条例案が可決された!

 衝撃の理由として、あと2つあると考えられます。

 市長は、答弁で第三者委には強制調査権がないことを理由に地域医療連携推進法人加入問題に関する市長の虚偽答弁の質問をかわしていた。もちろん強制調査権はないが、市長自らが条例で設置した委員会の調査には、率先して誠実に対応するべきもの。それなのに、第三者委の制約を盾にとって、不誠実な対応をしたこと。なお、議会は必要であれば、地方自治法第100条に基づく、実質的に強制調査権をもつ百条委員会を設けて調査することができる。

 そして、このことと関連して問題となることは、先に述べた3つの理由とも重なるが、通常の違法行為の場合の要素が抜かされていること。

 例をあげます。車を運転していてスピード違反で事故を起こした場合を想定。今回のパワハラの場合、被害者は後遺症に悩んでいると伝えられているので、人身事故に相当しますが、ここでは相手の車を壊した物損事故を想定。

 以上の想定の場合、スピード違反で事故を起こした運転者は違反の程度に応じて、道路交通法に基づき行政処分や刑事処分を受ける。通常の場合では、行政処分として罰金が科せられる。しかし、事故を起こした責任は、言うまでもなくこれだけでは済まない。相手の壊れた車の損害を賠償しなければならない。

 今回の市長のパワハラ責任の処理をこの例えに当てはめると、市長がパワハラを起こしたという違反行為の責任を取って市長は給料の3割、3か月削減という処分を科した。これは、いわば違反に対する行政処分の罰金。

 ところが、市長はその違反行為の処分をする手続きとして第三者委を設置し、約168万の市費を無駄に支出した。これは、市に、ということは市民に約168万の損害を与えたことになる。しかし、市長はその賠償をしない条例案を提案し議会はそれを認めた。

 このような場合、市長は市への寄付行為は禁止されているので、条例案に反対した議員が主張していたように、違反の処分と賠償を合わせた額の相当額を給料削減する条例案を提案するのが普通。すなわち約168万を下回らない額。改めて言えば、法に基づく政治、「法治」の基本である、罪・罰・賠償のうち、賠償が欠けた条例案が可決された。このことが、衝撃の理由のひとつ。

臨時議会の採決で起こった民主主義の消失が、市民の衝撃の最大の原因

 「法治」は言うまでもなく、民主主義の基本。

 「法治」の反対は「人治」。図らずも、同じ臨時議会で奥山議員が、職員が法令を遵守するよりも市長の命令に背かず全面的に従って仕事をすることを主張した。まさに、「人治」の主張。

 奥山議員はこのような主張を以前から行っており、栢木市長もそれに反論せず、むしろ同調してきた。したがって、野洲市の市役所組織は、法令よりは栢木市長の指示・命令を優先する体質になってきている。そして、そのような組織から繰り出される政策や制度が、本来チェック機能を果たすべき市議会でチェックされることなく、市長の意のままに通ってしまう。市長の意向がそのまま市民に及ぶことになる。今回の臨時議会の採決結果はこのことを如実に示している。

 なぜこのようなことになるのか。「市長与党会派」議員だけではこのことは実現できない。そこに、質問も討論も一切しないで常に「市長与党会派」に同調する、公明党と立民の議員の存在がある。

 民主主義の基本は「法治」であるとともに、自由で開かれた言論。公明党と立民の議員が質問も討論もしないで常に「市長与党会派」に同調する行為は自ら民主主義を封殺していることになる。実質的に「市長与党会派」の補完の役割。これでは、党名が泣く。

 おそらく、臨時議会の採決で起こったこのような民主主義の消失が、市民のある種、恐れともいうべき衝撃の最大の原因であたっと思われる。