病院の条例変更議案 協議でなく市長と副市長の押し切り!
 今日市のホームページを見ると5月23日の部長会議の記録が出ていました。主なところは、注目の病院の条例変更議案の協議記録。ただし、協議とはいえ、部長たちからは様々な質問や異論が出ても、副市長の「原案のまま進めていただきたい。」や市長の「設置条例を改正し、しかるべき方に管理者をお願いしたいと思っている。」と問答無用の形で押し切られて終り。栢木市長にとっては打って付けの副市長。三日月知事の人選はさすが。
 記録に会議でのやり取りがどこまで忠実に公表されているか分かりません。しかし、この記録からでも事態が異常の域を超えていることが明らかに読み取れる。


「初日追加提案」が認められるかどうかで議会の正常度がわかる!
 そもそも、この日の午前中に6月議会の議案確定のための議会運営委員会が開かれ、手続きは終わっている。これほどの重要議案を異例にも、追加で提案しようと駆け込みどころか、列車が出てしまってから、議会に臨時列車を出させる。
 このあたりの異例さを「6月議会の初日追加提案で委員会付託するのか。」と部長が質問。それに対して、担当者が、「本件の内容に鑑みて、委員会付託をお願いしたいと考えている。」と曖昧な答え。
 議会の細かいルールになりますが、「初日追加提案」はない。追加提案は早くて、当初提案に対する質疑質問のための本会議の最後か閉会日。
 このように、議案の内容が問題なら、手続きも問題。この条例変更案が議案として認められるかどうかで、市議会の正常度が明らかになる。
病院の場所を駅前Aブロックから現地に変更 監査委員の責任重大 滋賀県庁の方も心配
 ところで、条例変更の柱はふたつ。
 ひとつは、病院の本来の位置が駅前Aブロックと定まっているのを現市立病院の場所に変更すること。
 ふたつめは、病院事業管理者を市長が兼ねる定めとなっているのを変更して、新たに専任の管理者を置く規定に変更し、そのための給与条例の制定。
 これらの問題点は、すでに紹介しましたが、部長会議録をもとに改めて整理します。
 まず、病院の場所の変更。市長は、その理由を「令和4年4月28日付けの住民監査請求に係る監査結果について、監査委員より『病院設置条例について、解釈の違いを生じさせない』ようにする必要性が示されたこと」に置いている。
 この論理には大きな問題があることは以前書きました。この日の会議でも、部長たちは問題点を厳しく指摘したり、異議を呈している。しかし、副市長が押し切った。
 意図的にかどうかは別にして、このように悪用される付帯意見をあえて付けた監査委員の責任は極めて重い。さらに、市長顔負けの副市長の強引な進め方を見ると、滋賀県庁の健全度合いも大いに心配になってくる。長くなりますが、やり取りのほぼ全体を引用します。


条例での場所変更に異論続出だが、副市長が押し切った
 →委員指摘事項は大事であるが、これまでは、この条例で「どこに病院を整備するのか」を明らかにすることで、手続きが進められてきた。整備場所がまだ決定していない段階で敢えてこの条例を改正するのはかえって混乱するのではないか。
 →監査委員の指摘を真摯に受け止め、当面の対応として市民病院の位置は、現状の市立野洲病院の位置とした。
→この条例は当初、駅前に病院を整備することを位置付けるため制定されたもので、今回と状況は違うし、順番も違うのではないか。
 →当面の考え方として、現状の市立野洲病院を本来の設置条例のあり様に戻していき、そして新しい整備場所は次の9月議会で機関決定いただく予定であり、今後、建設事業予算にあわせて新たな整備場所を位置付ける条例改正の提案をさせていただく。
→監査委員の意見を踏まえて改正するという説明だが、議会でも認められた条例であり、今改正するのはタイミングとしてどうか。
→整備場所が決まっていないから、一旦は現状の市立野洲病院にするということか。
 →そうである。
→そうなれば、今条例で病院の設置場所となっているAブロックの土地は普通財産となるが、新たな場所が決まってから事業予算と条例改正をセットで提案すれば良いのではないか。
→「病院事業を行う施設の名称及び位置」を、市立野洲病院にすることで施設基準が満たされていないところがあるが、国に問いあわせて問題はないということなのか。
 →現行の条例においては、付則が適用されており、対応については県にも説明している。
 →現状について市民のみなさんに正確にお示しするという意味でも、本来の設置条例のあり様に戻すことは大切。担当課では今日出た意見を踏まえて対応いただくということで、原案のまま進めていただきい。(副市長)


知床観光船の悲劇を連想! 新病院計画なしに耐震強度不足等で危険な病院を定める無責任
 部長たちの意見で重要な問題はほぼ出尽くしています。それに比べて、担当者と副市長の答えは、はぐらかしと言い逃れに終始。
 特に、「新しい整備場所は次の9月議会で機関決定いただく予定であり、今後、建設事業予算にあわせて新たな整備場所を位置付ける条例改正の提案」のところは、意味が通らない。
 さらに深刻な問題は、耐震強度不足と老朽化で危険。加えて、医療施設としての基準を満たしていない現市立病院の場所に定める。以前も指摘したように、今の時点でこのような条例変更を行うということは、客観的に見れば、野洲市は危険な病院で医療行うことを条例で宣言することになる。もちろん、新病院整備の約束、市民と職員への責務は消えてしまう。「9月議会で機関決定」と言っているが、条例ではないようだし、意味が分からない。
 部長が指摘しているように、そもそも公立病院として、このようなことが認められるのか?万が一ありうるとしたら、国及び県からの改善指導と市からの改善計画提出が同時に必要。どう考えても、この万一には、手続き上無理がある。ましてや、改善計画が実現性のない体育館病院ではなおさら。
 ついでに言えば、この体育館病院の無理さ加減に対して、市教育委員会と県の国スポ事務局が何も言わないのが不可解。当初の予定どおりの大会は開催できないことは明らか。
 このように、辿ってくると、以前も紹介した、悲惨な知床観光船事故の内因のひとつとなった、国土交通省の一連の許認可のずさんさが連想される。


病院事業管理者の新設にも異論続出 経営に負担で指揮命令系統の混乱招く
 もうひとつの病院事業管理者の新設。これに関しても、部長からは異論続出。重要だから引用します。
まず部長の意見。
→新たな管理者を置くことで、病院会計に負荷はかからないのか。
→新病院を設置するまでの間は市長が責任を負い、管理者を置かないという整理だったと認識しているが、今の状況で管理者を置いて負荷がかからないか。
これに対する市長の答え。
→こういう時だからこそ、きちっと管理者を置き、一日も早く病院を整備していくのが良いとかねてより申し上げていた。私は病院設置者として責任を負う。(市長)
また、部長の意見。
→市立野洲病院の経営がうまくいっており、統計的に人件費率が高いと言われている中でも管理者を置く必要があるのか。
これに対する市長の答え。
→経営はうまくいっているが、新病院の整備に向け強化し、よりうまくいくように、という考えで設置条例を改正し、しかるべき方に管理者をお願いしたいと思っている。(市長) 


管理者設置は無駄な経費と混乱招く 市長側か職員の良識の側に立つか? 議会の判断にかかっている
 部長たちの意見はいずれも真っ当なもの。これに対する市長の答えは、支離滅裂で、意味を成さない。そもそも、市長は体育館病院の結論を出すに当たって市立病院には一切協議をしなかった。
 今になって、「新病院の整備に向け強化」とは、いくら自らの公約や発言の不整合を気にしない市長であっても、これはひどすぎる。そして、部長たちの指摘のとおり、病院で最高額の給与の職を新設すれば、経営に大きな負担であるとともに、指揮命令系統の混乱を招く。
 6月議会開会まであと1週間。このようにして捏(こ)ね上げられた案を議会は議案として認め、審議し、採決するのか?あえて言えば、議会は市長・副市長の無理強引の側に立つのか、それとも職員の良識と良心の側に立つのか、その判断が問われることになる。