駅前病院と体育館病院は別物

 市長が新たに示した総合体育館敷地内の温水プール跡地の病院。機能や規模など病院の内容はまったく不明で場所の情報だけ。したがって、現実に病院が建てられるかどうか不確定要素が多くあります。それはさておき、万一整備できると仮定した場合、端的に言って、現在の市立野洲病院の移転新築である駅前病院と体育館病院は別物になります。その理由を改めてまとめます。

①当然のこと、地理的な場所が違う。

②場所の社会的条件が違う。具体的には交通と周辺の土地利用。

③交通手段の違い

 駅前の場合は多様な交通手段があります。

 定時で輸送能力が高い鉄道があり、バスが市内各地から集まる。タクシーも待機している。徒歩、自転車、シニアカーなどの多様な交通手段を利用できる。

 体育館病院の場合は基本は車。あとは、駅からのシャトルバス。市長は駅から車で5分と説明している。しかし、一般的に車に乗れない市民が自宅から駅までバスで行って、シャトルバスを利用して病院に到着するまでの時間はその何倍もかかる。

④周辺の土地利用

 駅前の場合は周辺が市街化区域なので調剤薬局やその他商業・サービス機能の立地が可能。

 体育館病院の場合は隣接の市街化区域は住宅地で開発余地はなく、周辺の大半は農業振興地域で開発は不可。

 

体育館病院では本来目的の市民への医療果たせず、病院整備の根拠なくなる

 以上あげた場所の地理的及び社会的条件から自ずと病院の性格の違いが出てきます。

体育館病院の場合は

①通院しにくいため、利用者が確保できない。現在の市立野洲病院よりも不便であることは明らか。

 ただし、この問題については、栢木市長は特別委員会で、駅から車で5分の距離なので郊外ではない。また、野洲市は市内全域がすでにコンパクトシティであると強弁。

 これは、市長いつもの牽強付会の理屈。市長のお仲間である石川議員が委員会で市長方針に賛成したときの意見と矛盾する。議員の意見は、自分の住んでいる地域では、駅へのバスが減って困っている。体育館病院ができれば、バスも増え、院内のコンビニで付近の住民が買い物ができるというもの。これでは市内全域がコンパクトシティとは言えない。

②通勤しにくいため、医師、看護師はじめ優秀な職員確保には不利。

 ただし、この点については、これまた市長会派の山﨑有子議員が市長方針に賛成の意見として、自らの病院での薬剤師勤務経験から、医師、看護師等の職員確保に問題はないと保証。どこにそんな根拠があるのか?隣の市の市立病院は医師確保の困難を理由に、急性期診療をやめて、指定管理者制度による回復期と慢性期疾患に重点を置く病院に転換したではないか?

③①と②の結果として、市民への医療・保健サービスの提供が果たせないとともに、病院経営にも不利になる。現野洲病院があげている経営実績の確保も困難。

④以上の想定の結果、これまで何度か書いたように、体育館病院は通院を前提にしない、療養型病院にならざるを得ない。これなら、医師、看護師等職員も少なく、手術室や高額医療機器は必要ない。ただし、現野洲病院の機能とは異なるものになる。

 先の委員会でも稲垣議員が199床への増床を、なぜか今さら、旧民間病院の事務長の意見まであげて改めて強く要求していた。療養型病院こして、病床数を最大限確保しようという発想。療養型病院にならざるを得ないのではなく、最初からそれを狙っている?稲垣議員の主張は、この想定を裏書きします。

 万一このような想定が外れていないなら、新病院は市民への通常の医療・保健サービス機能を果たせないものとなり、極論すれば、市税を投入して病院を整備する当初の根拠がなくなる。

体育館病院に関して市立野洲病院に事前協議がなかった!

 最後に、駅前病院と体育館病院は別物であることの重大な理由。

 それは、今回公表された体育館病院や委員会資料に関して市立野洲病院の病院長や事務部長はじめ病院職員が一切関与していない事実。このことは、5月18日の特別委員会で竹内病院事務部長が事前協議がなかった旨を明確に答弁した。一般的にはあり得ないこと。

 市長は、4月22日の記者会見で熟考中に「医療関係者をはじめ、各方面でのご意見等もお聞きし、4月に入りまして、地域医療政策課にその内容を整理するよう指示」と言っている。これだけ読めば、市の医療事業の当事者であり現場である市立病院には情報が伝えられ、協議がされたものと受取るのが普通。いや、万が一、病院事業者である市長から市立病院の院長等に指示がなかったとしても、病院担当の部・次長は自らの判断で協議を行うのが普通。まったく、異例で不自然。

体育館病院は市立病院の移転新築でないことが明らか! むしろ敵対的姿勢

 病院に協議がなかったことの理由の詮索はさておき、この事実からみて、体育館病院は市立病院の移転新築事業でないことが明らかになる。もしそうであるなら、市長が聞いた「医療関係者をはじめ、各方面でのご意見等」をまずは、市立病院に伝えるとともに、体育館病院の方針協議にも参加させるはず。いや、市長単独でなく病院職員と一緒に意見を聞くはず。

 そもそも市長はどのような立場で、「医療関係者をはじめ、各方面でのご意見等」を聞いたのか?当然、病院事業管理者のはず。ところが、この事実からは、市長は、市立病院の改築を目的としてでなく、新たに体育館敷地に設置する予定の療養型病院を設置するために意見等を聞いたことになる。これは第三者の立場から見て、あえて言えば、市長は市立病院に対してむしろ敵対的姿勢に立っていることとみなされる。

市立病院への専任の病院事業管理者設置は不可解で無駄 顧問設置も2つの病院が別物である証左 

 このことと符合するのが、特別委員会で明らかにされた、7月1日からの専任の病院事業管理者と顧問の設置。

 市長が現在兼務している病院事業管理者を別に置いて、それに多額の給与を病院収益から支出することは、経営を圧迫する。

 市長は兼務を辞める理由として、医療に詳しい人になってもらうと言った。しかし、これは、熟考中に大学教授や病院長など「医療関係者」の意見を市長単独で聞いたことと矛盾する。栢木市長は、市立病院を有する市の長として大学教授や病院長などの「医療関係者」と協議できる能力があることを自ら認めているではないか?今さら急に医療に詳しい人を雇う必要はない。

 体育館病院の検討にも参加させない市立病院に、なぜこの時期に専任の病院事業管理者を設置させるのか不可解だし、経費の無駄。

 もうひとつの顧問の方は、体育館病院の検討のためだろうが、このこともまた、体育館病院が市立病院とは別物であることの証左になる。そうでなければ、市立病院の院長や副院長、看護部長などの意見を聞く方が、顧問を雇うよりどれほど効果的であるかは明らか。

 なぜ、もっと素直に大らかに事業が進められないのか?