市長側の入り口・手続き論へのこだわりで進展なし!

 今日4月28日の病院の住民訴訟の口頭弁論の様子を傍聴者等から聞いたので、紹介します。

 まず全体的な印象を言うと、市長側の入り口論・手続き論へのこだわりで、期待した進展はなかった。手続きは大事ですが、普段手続きを軽視し続けている市長がこれほどこだわるのは皮肉。

 その手続きとは、今年1月20日の口頭弁論の時に紹介した、今回の住民訴訟は監査結果通知があった日から法定の30日を過ぎてからなされており、却下されるべきであるという主張。

訴えは結果通知後の30日を過ぎてからなされており、却下されるべき?

 1月の時と重なるところもありますが、簡単にもう一度整理します。今回の住民訴訟での原告である市民の訴えは、かいつまんで言うと次のとおり簡明なもの。

 栢木市長が駅前Aブロック病院の実施設計等を就任後に解約し、未完成の実施設計等に対して4,256万円を支払った。しかし、市の病院事業設置条例ではAブロックが新病院の場所と定められている。したがって、市長の行為はこの条例に違反する違法な行為であり、それにより市に損害を与えたとして、市長に4,256万円の損害賠償を求めるもの。

 これに対して、市長側の主張は次のとおり。

①訴えは監査結果通知があった日から法定の30日を過ぎてからなされており、却下されるべき。

②市長は設計契約の解除に当たっては市の病院事業設置条例に拘束されない。

③市長が解約した設計は、病床数が179床の修正設計であり、病院設置条例が定める199床と異なる。したがって、契約の解除は病院設置条例に違反しない。

④契約の解除等の判断は市長の裁量(権限)の範囲内のものであり、問題ない。その根拠として㋐民意に基礎付けられていること㋑民主的手続きを経ていること㋒損害の拡大を防止するものであること。

 そして、今日は①の出訴期間のところだけで終わり、その他の論点には及ばなかった。さらに、次回6月24日に予定の口頭弁論もこの論点に費やされる予定。

監査請求人3人のうちの2人には遅れて通知、その日から30日以内で問題ない!

 市長側がこだわっている出訴期間の問題を簡単に紹介します。市民から見れば分かりにくい法律論です。

 住民訴訟は住民監査請求を行ってそれが棄却されるなど、認められなかった場合に起こせます。訴訟が起こせる期間は、監査結果通知があつた日から30日以内(地方自治法第242条の2第2項1号)。今回の場合、昨年5月7日に監査請求が提出され、結果が出たのは報道では6月30日。請求人が通知を受け取ったのは翌7月1日。ところが、訴訟提起されたのは、8月18日で30日を超えている。

 なぜこのようになったかというと、監査請求を行った3人の市民のうちの1人にしか通知が届かず、残る2人には通知がなかった。そこで、その2人は監査委員に通知を請求し、その後それぞれに通知された。

 今回の訴訟は、この2人が、「通知があつた日から30日以内」である8月18日に訴訟を提起し、それを裁判所が受理をして現在裁判が行われているという次第。

総務省の見解は監査結果の通知は監査請求人全員に対して行うべき!

 市長側は、この点を問題視し、最初の1人への「通知があつた日から30日以内」であるべきと主張し、入り口での決着を求めている。

 最初に通知を受け取った1人は、正式の手続きを経た代理人でも代表者でもないので、通知は各人になされる必要がある。実際残る2人にも遅れて通知された。そして、その「通知があつた日から30日以内」での今回の訴訟提起だから問題ないと考えられるし、原告である市民の代理人弁護士もそれを主張している。

 今日の口頭弁論では、代理人弁護士は、地方自治法の所管官庁である総務省への照会結果を次のように述べました。住民監査請求を複数名で行う場合には、総務省令では、代表者を定めることとはなっていない。連絡窓口といったものの場合は、監査結果の通知は、全員に送るのが法の建前と考えているとの回答を得た。したがって、法律の趣旨からすれば、監査結果の通知は監査請求人全員に対して行うべきである。

30日以内問題は監査委員のミスを洗い出す結果に? 新たな訴訟出れば意味をなさなくなる!

 以上のやり取りの決着がつかないと、市長の行為が違法であり市長に4,256万円の損害賠償があるかどうかの論点に行きつかない。これでは、昨日期待した裁判が議会を追い越していくことは見込み薄のようです。

 この30日以内問題の判断は裁判所に委ねられているので、その判定を待つしかない。ただし、この問題は、見方を変えれば、本来全員に行わなければならない通知を1人だけにしか行わなかった市の監査委員のミスをあえて洗い出す結果に終わるかもしれない。そんな藪蛇なことをするよりは、市長は早く本題で争って裁判を終わらせた方が市民のためになる。

 いずれにしても、この入り口論は、4月30日が期限になっているもうひとつの住民監査請求の結果が出て、その結果によっては新たな訴訟が出れば意味をなさなくなる。