野洲市が県立高専の市内誘致の要望書を提出

 市の部長会議の記録のどこかで滋賀県の高等専門学校について読んだ記憶があるので、市のホームページで探ってみました。すると、今年3月22日の会議録にありました。そこでは、「2月の全員協議会で報告した県立高専の市内誘致について、県へ要望書を提出するので3月の全員協議会で資料配布を行う。本日午後に開催される自治連合会役員会でも説明させていただく。」と短い報告。質問や意見はなし。なお、4月になってからは一度も部長会議の記録が公表されていません。

 そこで、この件について、滋賀県のホームページで情報を確認してみました。すると、こちらは、琵琶湖文化館後継施設や安土城復元と違って、検討と進捗に関する情報がまとめて公開されていました。今年3月22日付けの「『令和の時代の滋賀の高専』設置に向けた検討」と題したページがあり、「『令和の時代の滋賀の高専』構想骨子」やその検討経過などが閲覧できるようリンクが張られています。

県立高専の整備費は用地費等除き総額100億円の見込み 設置主体は県立大学?

 構想骨子で見ると相当な大事業です。概要を紹介します。

 開校予定は2027年度。

 入学定員は120人、5年次までの学校全体で600人を想定。

 施設規模は、延べ1万6,000㎡程度の学校施設。なお、高専設置基準では校舎は最低8,500㎡、建物敷地外の空地やグラウンドなどは最低6,000㎡が必要。

 概算整備費は、施設整備費72億円、設計管理費3億6,000万円、付帯設備や計器の費用が24億4,000万円で、総額100億円の見込み。ただし、これには寮の建築費や用地関連費は入っていない。

 年間運営費は約9億円で収入は約2億円で収支差額7億円が県の負担。このうち約4億円が地方交付税で措置されるとして、実質約3億円と見込んでいる。ただし、ここには「設置・維持管理・運営にコストがかかる」寮に関する経緯は入っていない。したがって、かなり低く見積もられている。

 設置主体と運営は、「県唯一の公立大学法人である『公立大学法人滋賀県立大学』」を想定。

 設置場所は、構想骨子に記載はないが、2022(令和4)年1月31日の県議会総務・企画・公室常任委員会の資料では、「費用や時間の観点から、まずは県有地等(県土地開発公社等の有する土地を含む)を対象に検討し、最適な県有地等を示した上で、市町からの提案地を受付」となっている。野洲市の市内誘致の要望書提出はこれに対応したものと思われる。 

 その他、事業手法はPFI(民間資金、経営能力及び技術的能力活用手法)を想定。2022年度に可能性調査、23年度末に事業者選定、25年度着工の見込み。

7月頃に「設置場所を決定、議会に報告」のところまで来ている?

 私も高等専門学校の県内設置に反対ではありません。ただし、滋賀県の取組みは、国立学校の誘致であると思っていました。ところが、構想骨子では、「新たな国立高専設置の動きはなく、厳しい見通し」として、公立として、先に書いたように県立大学の法人による設置を想定。

 先に触れた県議会の資料では、まず県が今年5月頃に最適県有地等を選定し、議会に報告。6月頃に「これに伍する提案地の有無を市町に確認 、7月頃に「提案がなければ、設置場所を決定、議会に報告」となっています。

 県民としてこの件に関してあまり情報に触れていませんでしたが、あまりにあわただしい。この時期に設置場所を決定するということは、当然すでに高専を設置することが決まっているということ。確かに県立大学の敷地には余裕はあるが、後でも触れるように、大学法人が設置運営するにあたっての法人の意思決定は済んでいるのか?

 

東京、大阪、神戸に続く4つめは「身の丈に合った」ことか? 栢木市長が要望してお墨付き?

 先に述べたように、高専の県内設置に反対ではないし、水を差すつもりはありませんが、この構想骨子レベルの検討で大丈夫なのか?

 この2~3時間に得た情報からではありますが、思いつくままに、いくつか気になることをあげます。

①公立高専を持っている自治体は、構想骨子に記されているとおり、東京都、大阪府、神戸市の3つ。調べると、後は、3つの私立を除けばすべて国立。そもそも東京都、大阪府、神戸市に張り合って滋賀県が公立高専を設置運営することに無理はないのか?

 まさに、栢木市長の病院に関する口癖である「身の丈に合った」ことか?

②先にも紹介したように、高専の設置と運営は「高等専門学校設置基準」に基づかなければならず、かなり高コスト。構想骨子で見積もられている整備運営費は低め。①とも関わるが、県の財政体力が持つのか?

 すでに、「身の丈に合」わない舞台芸術専用ホールと博物館がある。そして、県立美術館は計画通りの更新ができなかった。開学してから30年近くなる県立大学施設の大規模改修も必要。さらに、「身の丈に合」わない国スポ施設も加わってくる。

 それとも、村田製作所など構想骨子の検討に加わっている企業が基本的な財源を支援することになっているのか?

③構想骨子の検討に、見た限りでは、県立大学の関係者が入っていないようだが大丈夫なのか?それ以上の問題として、大学法人の理事会の意思決定機能はどうなっているのか?

④減り続ける生徒数に対応した県立高等学校の統廃合対策とどう整合性を取るのか?

⑤細かいことではあるが、現行、国立・私立高専の場合は県立高校との入試の併願を認めているが、県立高専の場合はどうするのか?認めなければ、機会を失わせるか、県内から想定の応募者が見込めないかどちらかになる。万一、併願を認めれば、応募者は多数になり混乱。