市長は条例に違反して病院事業を止め、4,200万円余りを支払い、市に損害を与えた! 

 今日あった病院についての住民監査請求の公開陳述の様子を何人かから聞きました。その伝聞を元に、手持ちの背景情報を補って、概要を紹介します。

 最初に請求人の陳述。出席者は住民監査請求を行った市民4人のうち2人と代理人の弁護士2人の計4人。

 はじめに市民が、栢木市長が就任以来行ってきた経緯から説き起こし、長年、市民、専門家、議会等の検討によって進められてきた駅前Aブロックでの病院整備を市長の独断による設計業務契約解除によって止められた。駅前Aブロックでの病院整備は病院事業設置条例で定められているのに、条例を改正しないで解約し、未完成の設計図書等に対して4,200万円余りを支払った。市長は、未完成の設計図書等を参考に活用するなどと言っていたが、活用された実態はなく、まったく無駄になっている。以上のように、市長は条例に違反して病院事業を止め、4,200万円余りを支払い、市に損害を与えたなどと、強い怒りを込めて主張。

条例は野洲市が駅前Aブロックに病院を整備する義務を宣言したもの その条例に違反

 続いて代理人の弁護が、3点にわたって要領よく補足説明を行いました。

①駅前Aブロック病院の整備に関しては、過去、専門家等を交えて検討に検討を重ねて基本構想、基本計画等が策定され、その基本計画を具現化するものとして、名称、設置場所、診療科目、病床数を含む病院事業設置条例が制定された。

この条例は病院を望む多くの市民の声を受けたものであり、野洲市が駅前Aブロックに病院を整備する義務を宣言したものに他ならない。

 この条例で定められた中核となる部分は、設置場所、診療科目、およその規模等であり、その実現のために進められていた業務契約を解除することは、その条例で宣言した義務に反するのであり、条例に違反することになり、それゆえに市長の行為は違法。

②条例ではAブロック病院の病床数は199床と定められているが、市長が解除した契約はAブロック病院ではあるが、病床数は179床となっている。このことを取り上げて、市長は現在進められている住民訴訟において、市長が解除した契約の病院は条例に定められたものではないので条例違反ではないという反論を行っている。しかし、病院の設置場所、診療科目、おおよその規模等から社会通念上同一の病院と見るべきである。よって、条例が示す病院に関する病院の実施設計を解除したことは、条例に違反する行為。

③民主的な手続きに関しては、市長は全員協議会に報告したと主張しているが、全員協議会は報告を受けるだけであって、決定する場ではない。したがって、ここでの報告が民主的な手続とは言えない。

契約解除した病院は条例で定められた病院とは違うので、契約解除は条例違反でない

 次に市長の陳述。市長は、冒頭に正確を期するためと断って、用意された原稿を朗読。その内容は、契約解除は市長選で示された民意に基礎づけられたものであり、市長に与えられた広範な裁量権は逸脱していないなど、基本的には、前回の陳述とほぼ同じ。ただし、次の2点が前回になかった論点。

①同一内容に関して住民監査請求重複してなされている場合は、その旨を請求者に通知すれば足りるとされている。本件の場合は、先の監査請求そして現在住民訴訟となっている財務会計上の行為と同じものを対象としており、このことに該当する。

 仮に、前回とは異なる資料が提出されていたとしても、前回との同一性が失われることにならない。そして、判例をあげてこの考えの方の正当性を主張。

②自分が契約解除した病院は条例で定められた病院とは病床数が異なり、条例で定められた規模とは異なる病院である。したがって、契約解除は条例違反ではない。

 この論理は、請求人の代理人弁護士が指摘した上記の②のことです。

 市長は、最後は、前回同様、契約解除は公約遂行のためであり、発生する予定であった損害を回避するために行った。したがって、損害を与えたのでなく、損害拡大を防止したものであるという前回と同様の主張で陳述を締めくくった。

 なお、市長の陳述に対して、代表監査委員から市長に対して病院設置条例の考え方について質問がありました。条例の付則に経過措置が定められている。病院の場所は本則では駅前Aブロックであるが、経過措置として「当分の間」現病院の場所が規定されている。このことの解釈を質問した模様。経過措置があるということは、当然新しい病院があるということになり、元の場所(Aブロック)が生きているのではないかということを確認したいという趣旨の質問と受取られた。

 この質問に対して、市長が答えられなかったため、代わって駒井次長が答えた。ところが、その回答内容が要領を得ず、さっぱり分からなかったというのが大方の受取り方だったようです。

「契約解除は公約遂行のためであり、損害を与えたのでなく、損害拡大を防止した」が空しく響く

 住民監査請求の対象となる事項が、違法もしくは不当な公金の支出等、いわゆる財務会計上の行為と定められている(地方自治法第242条第1項)ため、議論が細かくなることはやむを得ませんが、市長の主張は市民感覚からすると、入り口論に終始していて、スケールが小さく見えます。

 特に、自分が設計業務を契約解除した病院は条例で定められた病院ではないという無理な主張。この主張は、昨年5月の住民監査請求に対しては出されなかったが、住民訴訟のなかで市長が主張し始めた模様。もし、この主張が正しいとするなら、修正設計業務の予算を議決した当時の議会は何を根拠に予算案を可決したのかという疑問が出てくる。

 いずれにしても、今回の監査請求の対象とはなりませんが、新病院のめどがまったく消えてしまった現状では、契約解除は公約遂行のためであり、発生する予定であった損害を回避するために行った。したがって、損害を与えたのでなく、損害拡大を防止したものであるという市長の主張が空虚な木霊(こだま)のように響きます。