住民監査請求の公開陳述が明日

 受理が2週間も滞っていたことを以前紹介した住民監査請求の公開陳述が明日開かれます。監査請求の対象となる事件は、栢木市長が、病院事業設置の条例で新病院の場所として定められているAブロックでの病院建設のための実施設計業務等の委託契約を中途解約し、4,200万円余りを支払い、その結果、市に損害を与えた案件。昨年5月に出された住民監査請求と同じ市長の行為に対するものです。

 市監査委員事務局のホームページでは、次のようになっています。

「野洲市長 栢木進は、『野洲市民病院整備修正設計業務委託』及び『野洲市民病院開設支援第4期業務委託』の2件の業務を完了することなく、独断で中途解約し、令和2年度野洲市病院事業会計において合計4,256万7,800円を不当に支出し、市に損害を与えた。

   市長は、栢木進個人に対し4,256万7,800円の賠償を勧告する。」

 なお、昨年5月の請求結果は市長の主張を認めて、棄却となっています。ただし、異例にも、「なお、市民病院建設計画は本市の最重要課題であり、公約を掲げて当選されたとはいえ、見直しを迫られた現在となっては、市民の期待する病院建設の早期実現に向かって、より一層丁寧かつ合理的な説明を望むものである。」という一文が付加されています。

 市民はこの結果を不服として、住民訴訟を提起し、現在裁判中です。

市長の行為が病院事業設置の条例に違反する支出かどうかという点が争点

 今回の住民監査請求が5月のと同じ事件を対象としたものであるため、同じ監査結果が出されると予想するのが一般的です。

 とはいっても、結果が異なる可能性がまったくないとは言えない。その理由を整理します。

①先の請求結果を受けて進められている住民訴訟によって、新たな証拠が出され、議論が深まっている。それを踏まえた審査がなされれば、代わる可能性がある。

 特に、前の請求にもありながら先の監査結果では避けられた、市長の行為が病院事業設置の条例に違反する支出かどうかという点。

 条例では新病院の場所がAブロックと定められている。もし、条例に定められた病院建設を目指して最終段階にあったAブロック病院の設計を止めるのであれば、先に条例を変えなければならない。

 災害時など緊急を要する場合なら別として、平時に条例に反した行為を行う根拠はない。

 ただし、市は訴訟の経過を議会への報告や公開しているのかどうか分からない。本来であれば、市民の多額な税金を使って裁判を進めているからには、可能な範囲で情報を公開すべきであり、議会もそれを強く求めるべき。

病院事業設置の条例に関する判断が変わる可能性への期待 議会の存在意味を守れるか

②議会選出の監査委員が昨年11月に交代していることによる、判断の変更の可能性。

 もちろん、監査の元になる法令や制度は変わりませんが、①で述べた病院事業設置の条例に関する判断が変わる可能性がゼロではない。

 5月に出された住民監査請求の結果では、先に述べたように病院事業設置の条例との関係は無視して、「業務委託においても議会の議決を要する契約ではないうえに、契約解除に当たっては、いずれの業務委託においても市議会への報告等の手続きを経て進められている」という判断で問題ないとしている。

 ちなみに、「議決を要する契約ではない」という点については、前の議会選出監査委員が5千万円までは市長の裁量権の範囲内だから問題ないと言っているそうだが、本当かという問い合わせが、先日何人かの市民からありました。知っている限りではそのような制度はないと答えましたが、ここの文章はそのような判断をもとにして書かれているのか?

 そもそも、この契約は、公営企業法に基づいて行われているので、地方自治法第96条第1項第5号に定める議会の議決は不要。

 問題はそこにあるのでなく、この業務の予算が病院事業設置の条例を前提にして、議会で議決されたものであること。このような議会手続きを経て決定され進められていたものを、市長の独断で客観的な根拠もなく解約して問題ないのであれば、条例とその条例を定め予算を議決した市民の代表としての議会の存在意味がなくなる。

 今回の事件で議会の議決が必要なのは、契約の締結や解除に関してではなく、病院事業設置の条例の改正に関して。条例をそのままにして、その条例で定められた場所での病院整備を止めた。これは、市長が条例に反した行為を行ったことになる。

 したがって、今回の住民監査請求が5月のと同じ事件を対象としたものであるとはいえ、前回は判断が回避された、病院事業設置の条例に着目して審査し、市民代表である議会の存在意味に迫る判断をすることに期待がかかっています。 このため、議会選出の監査委員にやりがいがあるとともに、責任も重大。