市立病院職員には地域手当が支給されていない
先月の市議会で、ある議員が病院職員の処遇について質問していました。一般の市職員には支給されている地域手当上乗せ分が病院職員には付いていない。同様に対応すべきではないかという趣旨。
地域手当とは、勤務地の物価等の差による生活費の差に配慮して給料に上乗せして支給される手当。国が定める自治体職員の地域手当はかなり不合理で不公平な制度設計ですが、ここでは詳細には及びません。一例としてあげれば、草津、守山、栗東、野洲の湖南4市のなかで野洲市だけが国の支給基準に合致しないため、出せなかったという事実を見てもその不合理さが分かります。しかし、それでは不公平であり、職員の士気も保てないという理由で、ある時期から市独自の制度と財源で支給を行っています。この手当てが市立病院の職員には支給されていない。議員はこのことを質問した。
人事院勧告による制度も病院職員には適用されない
この質問に対する議会での担当部長の答弁は、一般市職員と病院職員では給与制度が違う。病院職員には一般市職員には付いていない手当があるといった答えだったと記憶しています。あまり注目もされなかった質問であったし、質問した議員も自らの強い問題意識からの質問ではなかったようで、簡単なやり取りで終わりました。
ところで、同じ議会には、人事院勧告による期末手当の支給に関する議案が2件ありました。ひとつは議員や市長等の特別職が対象のもので、もうひとつは一般職員が対象のもの。内容はどちらも同じで昨年8月の人事院勧告による期末手当の支給月数を0.05月引下げるもの。今回は引き下げですが、もちろん景気が良く民間の給与水準が良ければ引き上げられる制度。この人事院勧告による制度も病院職員には適用されない。
病院職員は事業業績に応じて期末手当等が変動
このように見てくると病院職員の給与は不利で冷遇されているように見えます。しかし、それを補う制度が設定されている。市立病院は市の公営企業として運営しているため、企業業績に応じて職員の期末手当・勤勉手当を変動させる仕組になっている。
市立病院は2019(令和元)年7月の開院以来黒字経営を維持している。したがって、職員にとっておそらく実質的には不利や処遇にはなっていないだろうし、今回の人事院勧告による削減も制度上適用されない。しかし、問題はこれから。
新病院の展望が消え、耐震改修に手を出し、Aブロック購入の借入金返済始まって給与は厳しくなる
経営者である栢木市長の就任以来の方針転換の繰り返しと今の手詰まり状態によって、 老朽化施設に代わる新病院の展望が消えてしまっている。加えて、今年度の病院事業予算には東館の耐震診断経費が予算化されている。万が一、診断結果を踏まえて見込みのない中途半端な耐震改修にでも手を出せば、経営を圧迫する。さらに悪いことには、2019年の開院にあたっての前提条件であった駅前での新病院整備のための用地であるA、Bブロック購入のための借入金の返済(起債の償還金)負担が始まっている。病院用地を経営者の意向で塩漬けされたまま借金返済の負担は病院経営に負わされている。これらのマイナスの状況が当然病院職員の給与にも響いてくる。言うまでもなく、病院経営者である市長の給与は病院職員の制度とは別なので、市長にはインセンティブ(動機づけ)も危機感も働かない。したがって、市長がよほど誠実で責任感をもって、そして職員に配慮して経営に当たらない限りは、悲惨な状況になる。
経営者が経営に誠実に専念しない企業の職員は不幸 市立病院の場合は市民の不幸でもある
駅前の新病院を期待していた市民には、不安と不満が募りつつありますが、病院職員にとっては、これらの不安と不満に加えて、以上のような切実な問題が待ち構えている。
経営者が経営に誠実に専念しない企業の職員は不幸であることは言うまでもない。その典型的な実例が今の野洲市立病院。そして、市立病院の職員の不幸は市民の不幸でもあると言えます。
議会で質問した議員があの程度の答弁で収めたことが残念。職員のためにも市民のためにももっと本気になっての奮起が期待される。