反対は異例だが、予算措置しない市長の方が異常 ガラス細工だった駅前要望書   

 今日3月25日の市議会定例会最終日の本会議をネット中継で傍聴しました。

 注目は、新病院整備予算が含まれていない新年度予算案と使用料・手数料の値上げ条例案、そして副市長の人事案。

 会議が始まってすぐに、異例にも市長から答弁の訂正がありました。これについては後で紹介します。

 まず新年度予算案。23日の予算常任委員会の結果報告が東郷委員長からありました。審議での賛否の意見が紹介され、委員会裁決の結果は賛成多数で可決との報告。賛成多数ということは反対の議員がいたことになります。

 これを受けて、採決に先立ち議員による討論。そして裁決。その結果は17人中賛成9という僅差で可決。今月10日の駅南口での早期病院整備を求める要望書に名前を連ねていた公明党の2議員は、病院事業費が計上されていない予算案の賛成に回りました。

 採決に当たっての討論のなかで、田中議員、小菅議員、益川議員、橋議員の4人が新年度予算案に反対の意見を述べた。反対意見の共通趣旨は、現市立病院が老朽化し早期の新病院整備が必要であるのに、市長自らが進めてきたBブロック病院を止め、新年度予算案に新病院整備予算が盛り込まれていないので賛成できないというもの。

 新年度予算に反対することは異例のことです。しかし、新病院整備に時間的余裕はないこと。また市長自ら約束し、市税を使って進めてきた事業を、熟考中と称して具体的な理由も説明しないで、事業を止めたうえ、何の予算措置もしないことの方がそれ以上に異常。したがって、筋の通った真っ当な反対意見。

稲垣議員が市長に代わって「病院が南口以外を前提としている」ことを宣言 公明党議員は要望書と反した行動

 予算案に賛成の討論は稲垣議員だけでした。発言の冒頭に「市長与党として賛成」と切り出すなど、終始芝居じみた言い回し。主な賛成理由は、国民スポーツ大会の準備予算等が含まれているからというもの。病院については「旧内閣」が「解体」され「新内閣」が発足してから「補正予算として編成することが妥当」と意味不明な発言。そして最後に、「病院が南口以外を前提としている」新年度予算に賛成の旨で発言を締めくくった。

 稲垣議員以外に賛成意見はなく、発言の冒頭で「市長与党として賛成」と前置きしているので、これは創政会を代表する意見。ということは、稲垣議員の発言は栢木市長に代わって、または栢木市長を背後で支援している人を代弁して、「病院が南口以外を前提としている」ことを宣言したのと等しい。

 このような趣旨の予算案に賛成した公明党の2議員は、自ら署名した先の要望書と反した行動をとったことになる。やはり公明党の2議員と立憲民衆党の1議員は、発言もなく、市長会派と行動を共にすることが改めて明らかに。

使用料・手数料の値上げ条例案は可決

 次の使用料・手数料の値上げ条例案に関しても、採決結果は可決。

 使用料・手数料の値上げは2つの議案に分かれていますが、まとめて紹介すれば、賛成の討論をしたのが石川議員、服部議員、東郷議員。反対の討論は橋議員。

 石川議員と服部議員の発言の趣旨は、使用料・手数料の値上げ改正は前任市長の時から計画されていたもので、本来その時に実施されているべきものであった。この論旨で行けば、Aブロック病院も同様に速やかに実施すべきものとなる。苦しい時の前任者頼み。

 東郷議員の賛成討論の趣旨では、まず使用料・手数料は正解のない難問であるとのこと。そして、利用者負担で不足する分は税金で負担されている。これは、当然の論理であるが、不特定多数の市民が利用する公共サービス料金の位置づけの議論が抜けている。また、市民説明会が中止になったことについては、条例改正後に実施すればよいと東郷議員は主張した。しかし、市民説明会とはいえ、市民の意見を聴く場を決定後行うというのは意味をなさない。これでは、先に靴を履き、その上から靴下をはくようなもので、後先が逆。なぜ手続きを後先逆にするほど急ぐのかの合理的な説明もなかった。

 条例案に反対の討論は橋議員のみ。その趣旨は、今回の改正では料金の種類によっては5割になる値上げ。行財政改革プランの市民説明会を開催して市民の意見を聴いたたうえでプランを策定し、それを踏まえて条例改正を行うべきというもの。橋議員の方が正論であると思います。

地域医療連携推進法人加入の市長説明で疑惑は解けない なぜ事務部長答弁を市長が訂正?

 開会冒頭の市長の釈明。それは、3月9日の益川議員の地域医療連携推進法人に関する質問に対する病院事務部長の答弁を市長が訂正した。本来なら、答弁した病院事務部長が行うものであり、本人しかできない。議長が市長に発言を許可した根拠が分からない。

 それはそうとして、市長の発言内容は次のとおり。3月9日に病院事務部長が市長が令和3年6月17日に地域医療連携推進法人への加入書類に署名したと答弁した。しかし、実のところ市長が署名したのは、野洲市が「反社会的勢力のいずれにも該当しないことを」する旨を地域医療連携推進法人に「表明確約」する「証明確約書」に署名した。当該法人の通例の手続きではこの「証明確約書」への署名と提出によって加入手続きとなっていることから、野洲市が加入したことになった。しかし、市長本人としてはその時点で加入の意思はなく、市の決裁手続きを踏んで加入するつもりであった。「先方」の当該法人にも齟齬があったという趣旨。

 この説明では、なぜ本来の病院の事務局でなく、市長自らが「証明確約書」に署名して提出したのかの理由が明らかにされていない。疑惑は解けず、市長の訂正説明でかえって疑惑は深まる。しかし、今日の議会全体の雰囲気ではこれで幕引きにしようとしているのではと受取られました。

反対が建設的で、賛成が破滅的という珍現象 Bブロック病院決議案は否決 原点は市長公約

 最後にやはり決議案が提出され、採決の結果は否決でした。

 決議案は、野洲駅前Bブロック病院事業の早期再開についてというもので、岩井議員が提案。趣旨は、栢木市長が進めてきた駅前Bブロック病院事業を早期再開することが栢木市長の責任であるというもの。内容は当然のことではあるが、市長を拘束するものではないし、否決されてはさらに意味はない。

 この案に対して稲垣議員が反対の立場で、提案の中にある「小異」に拘っていましたが、これはもっともで大事なこと。田中議員が稲垣議員の質問に答えて、AかBかに拘らないで駅前で大同ということだという趣旨の答弁をしましたが、これはこれで意味をなすが、ただし小異ではない。栢木市長にとっては、駅前に病院を作らないということが公約だったからです。その栢木市長がBブロック病院を言い出して、途中まで進めてきた経緯は不明。しかし、現時点では駅前では作らないという公約は譲れない。

 原点に戻れば、栢木市長の病院に関する公約は、現地運営半額建替え。ここを逃して、いつまでもBブロック病院に縋りつくことには展望がない。この点で、趣旨が少し分かりにくかったが、Aブロック病院を掲げてこの決議に反対した益川議員の主張の方が明確であったと思います。

 いずれにしても、今議会においては、事前の心配とは逆に、議会の議決権を梃子にした議会行動がとられたことは評価できます。

 病院整備のない予算案が可決され、新病院の展望がなくなった今議会を総括すれば、野洲市議会では反対が建設的で、賛成が破滅的という珍現象が起こっているということになります。