10人の市議の高揚感と市民との間に温度差

 3月11日の新聞で報道された、10人の市議による駅前Bブロックでの病院整備を支持する市長あて要望書。記事では駅前病院の実現性が高まったかのように、「議会で関連議案が可決される見通しとなった。」(毎日新聞2022年3月11日)、「市長が駅前以外に整備する意向を示した場合、議会の承認を得るのは難しくなった。」(中日新聞2022年3月11日)などと報道されました。推測するところ、10人の市議の思いを一つの要望書にまとめ上げた議員たちの高揚した達成感が記事の背景にあるのかもしれません。

 しかし、記事が出た当日、市民から喜ぶよりは、心配する声が寄せられたことは紹介しました。客観的に見ても見通しが楽観的ではないこと、ちょうど1年前にも同じような動きがあって、今に至っていることも書き添えました。その後私が話した市民や関係者も、これまでのところほぼ同様な見解でした。

 正直に言って、残念なことですが、10人の市議の高揚感と駅前の新病院に期待してきた市民、とりわけ積極的に活動してきた市民との間には温度差があるようです。

Aブロック病院賛成市議全員が、Bブロック病院実現に奮闘するという逆転の構図に転換

 この温度差がなぜ生じているのか?それは、端的に言えば、おそらく10人の市議には見えているだろう、駅前病院実現へのレールが市民には見えていないからだと思います。

 このことが、議員たちの説明不足によるものか、それとも実際そのレールが存在しないためか、確実なことは結果を見なければ分からない。

 確かに、栢木市長は自ら進めてきたBブロック病院の関連議案を開会中の市議会に提案しなかった理由として、議案が議会で可決される見通しが得られなくなったことであると言った。しかし、それは理由の一つ。直近では以前紹介したように、少なくとも3つの理由を挙げている。もう一度紹介します。

①Bブロック病院では駐車場が約40台しか確保できず、今後確保の見込みもないから。

②7人の議員を擁する市議会最大会派「創政会」からBブロック病院を断念する要望書が出てきたから。

③Bブロック病院整備の予算案や条例案を議会に提案しても可決見込みがないから。

 今回の10人の市議による要望書は③の条件を解決するが、①と②の条件は満たさない。言うまでもなく、②は③がクリア(解決)されれば同時に解決されるように見えるが、そうではなく、独立した別の条件。したがって、3つの条件のうち1つしか満たされていない。

 皮肉なことですが、5か月前の市議選ではAブロック病院賛成を掲げていた市議全員が、Bブロック病院の実現に奮闘するという逆転の構図に転換。それも、Bブロック病院を独断で進めてきた栢木市長の熱意が冷めているという逆風の中で。

狙いは早期病院整備だが、意味は市長の公約違反を不問に付し、三転四転を追認 最終日の大団円を期待

 一般的な話として、人の行動や行為には、その目的や狙いとともに、それとは別にその意味というものがあります。両方が一致する場合もあるが、そうでない場合もある。一致しない例としては、かつて大きな問題となった体罰。狙いは生徒の成長という教育的効果であったはず。しかしその意味は、生徒に対する虐待。この例を、試しに今回の要望書に当てはめてみると、狙いは早期の駅前病院の整備。しかしその意味は、市長の病院現地半額建て替え公約違反を不問に付し、その後のBブロック病院方針に至る三転四転を追認したことになる。

 とは言っても、終わり良ければすべて良し。残すところ約10日となった今議会の最終日に冒頭に書いた温度差が埋まる大団円が実現することを期待します。