病院事業継続の意思があれば何らかの予算措置 病院整備はリセット! 市民や医療関係者には高くつく

 物騒(ぶっそう)な標題ですが、昨日ブログを書いた後、思い浮かんだ言葉が、「ネグレクト(放置)で息の根を止める!」。新病院事業は保留されているのでなく、消されてしまったということ。

 新年度の予算案に新病院整備事業の予算が盛り込まれていないということは、行政の常識からすれば、その事業がなくなったことを意味します。仮に、継続の意思がある場合は、なんらかの予算措置をしてその意思を示すのが通例。そして、この文脈で「今後の方向性について熟考している」という市長の発言を読めば、病院整備事業はリセット(すべてを元に戻)した。新病院を整備するというこれまでの方針とは別の方向性を考えていると受取られても仕方ない。このことは、以前紹介したように、市立野洲病院東館の耐震診断経費として1520万円が計上されていることが裏書きしています。もう新病院にお金をかけるつもりはない。

 ちょうど1年前、栢木市長は現地半額建替え検討の会議に出席して、「少しでも早く、安く病院を整備したい。それを基本に考えたい」と話したことが報道されている。ここまでくれば、「安く病院を整備」の意味は、実は病院を整備しないことだったのかと思えてきます。しかし、これでは市長にとって安いかしれないが、市内で医療の存続を願っている市民や医療関係者には極めて高くつくことになる。

新年度事業の東館の耐震診断は堂々巡りであり、予算はまったく無駄

 市立野洲病院の施設が老朽化し、とくに東館の耐震強度が大きく不足していることは、市が平成27年度に行った「野洲病院支援継続可能性調査業務報告」ですでに明らかになっている。このことは、当時市議会議員で監査委員でもあった栢木市長はよく知っているはず。

 昨年の現地建て替え検討の時も紹介しましたが、報告書には次のとおり書かれている。

「建物は、各所で経年劣化が⾒られ、躯体の⽼朽化、仕上げ材の劣化、設備機器の劣化、能⼒不足が顕著である。特に東館は、建物の耐震性能が低く、耐震補強を必要とするが、病院建物の性格上、補修⼯事が極めて困難である。」

 「医療機関としての継続を前提とした場合、建て替えが必要であるものの、制約の多い現在地での建替えは難しく、敷地の拡⼤も不可能であることから、移転建て替えによる全⾯的更新が必要である。」

 そしてこの報告書の内容は、「野洲病院支援継続可能性評価委員会」で検証され了承されている。

 いずれにしても、新年度予算でこれだけの経費をかけて耐震診断を実施する意向であるということは、東館の耐震改修工事を行うことを意味する。これでは、堂々巡りであり、予算がまったく無駄。。もしそうでないというなら、市長はきちっと説明する責任がある。

 

市民の思いは、病院への心配と、正義が貫かれること 正義は「社会の全殿堂を支える大黒柱」

 ところで、新病院の見通しがなくなったことを多くの市民、医療関係者、そして何よりも市立病院の職員が、落胆し、心を痛め、何とか早く新病院整備の見通しが明らかになることを願っています。その理由は、言うまでもなく、現病院の老朽化と危険さが限界を超えているからです。このことは、先般の医師会と議員との懇談会でも医師会側から強く訴えられていた。なお、これらの願いや意見に対して、奥山議員は「なぜ新病院を建設する前から『市立化したのか?』」と過去の経緯も知らずに、見当違いな反論を行っていた。

 このような、現病院の危険さと医療の存続への心配とともに、市民の思いにはもうひとつあります。それは、正義が貫かれること。これについても以前、郷土の偉人である天保義民、土川平兵衛(つちかわ へいべえ)の一揆にあたっての言葉を紹介しました。「自から信ずる所の大道を踏むの一策のみ。」不正義がまかり通れば、世(社会)が持たないという強い思いからの行動でした。

 栢木市長の就任以降の病院事業の進め方は、端的に言えば、不誠実、無責任で非道。まさに正義に反する行為。

 今日たまたま読んだ本に、アダム・スミスの正議論が出ていました。アダム・スミスは「近代経済学の父」として知られていますが、もとは倫理哲学の教授が職歴のはじまり。最初の著書である『道徳感情論』で、正義「がなければ『人間社会という巨大な構造物』が『瞬時にしてばらばらに土崩瓦解しなければならない』ようなものである。その意味で、正義は『社会の全殿堂を支える大黒柱』である」と説いている。(根井雅弘『経済学の歴史』講談社学術文庫)まさに、命を賭した義民のリーダー、土川平兵衛の言と通じるものがあります。

病院経営者としての責務をネグレクト(放棄)し、市立病院をも消す行為 市議会で展望を回復

 栢木市長におけるもうひとつの重大な問題は、市立病院経営者としての責任を果たしていないこと。栢木進市長が出席した2月10日の守山野洲医師会の理事役員会で、医師会側から「『病院職員の士気が低下している』との指摘もあった。」と報道されています。(毎日新聞2022年2月11日)おそらく実際のところは、士気の低下どころではない。厳しい職場条件のなかで頑張っている。それなのに、病院経営者である市長からは、Aブロック病院の展望をなくされたうえに、市長自らが約束したBブロック病院まで反故にされた。

 これでは、医師、看護師はじめ新規の病院職員の確保はもとより、今懸命に働いている職員の雇用をつなぎとめることも困難になってくる。今、県内の公立病院で医師の大量退職が問題になっています。まさに、他山の石。

 栢木市長の行為は、新病院の展望を消しただけでなく、病院経営者としての責務をネグレクト(放棄)して、健全に経営されてきた現市立病院をも消す行為。市長の姿勢を正し、再び病院の展望を回復することは開会中の市議会の議論にかかっています。もう時間はない。