現場での対応の積み重ねを制度化して行くなかで、成長してきた取組

  昨日2月9日、参議院国民生活・経済に関する調査会で野洲市市民部の生水裕美次長が参考人として報告しました。内容は、市の「くらし支えあい条例」や「債権管理条例」を基にした生活困窮者の自立支援や孤立・引きこもり対策等の取組について。報告は、YouTubeで見ることができ、熱のこもった、説得性と迫力あるものです。アドレスはhttps://youtu.be/ygXAdCO4AbQ

 したがって、詳しい紹介は避けますが、報告の中で言われているように、「くらし支えあい条例」の前文に掲げられている「市民の生活の困りごとを解決し、自立を促し、生活再建に向けた支援を行うことは、市の重要な役割です。」を基本にした取組。

 ただし、この基本が先にあって、具体的な取り組みや制度ができたものでなく、経過は逆です。先に、多重債務解消などの現場での対応の積み重ねを制度化して行くなかで、成長してきた取組。まさに、「司令塔」発想とは逆。とはいっても、そこには理念や発想がかかわっています。このことについても、小水さんが報告やその後の質疑応答で分かりやすく説明しています。

 とくに、報告の最後で述べた、国民健康保険税の多額な滞納で差し押さえ処分まで至っていた家族の生活再建と自立に向けた支援の事例をきけば、現実感をもって理解できる。成果が出るまできめ細かく寄り添って支援する取組は、そこまでやるのかというぐらいに感動します。それを恩恵として施すのでなく、業務(ビジネス)として合理的に実施することに意味がある。孤立や虐待対策においても同様です。

あらゆる資源を生活困窮支援に活かす 生活困窮者を滞納整理で一段の窮地に追い詰めない

 参考に、説明のあった仕組みと取組の柱を私なりに言葉を補って順不同に整理しておきます。

①生活困窮者自立支援は自治体の重要な役割。市民への恩恵としてでなく、市の事業(ビジネス)として行う。

②市には子育て支援、教育、福祉、保健・医療、環境、住宅、上下水道など市民生活を支える多用なサービス資源が整っている。それを連携して生活困窮支援に活かす。

③弁護士や司法書士等の専門家や社会福祉協議会やハローワーク、医療機関など外部の資源と連携し生活困窮支援に活かす。

④生活困窮支援のためにあらゆる社会制度を生かす。

⑤市が持っている税情報と福祉情報を制度内で最大限結びつけて生活困窮支援に活かす。

⑥1人、あるいは1家族の自立実現から始めて成果を制度化につなげる。

⑦税や使用料など市が持っている債権の滞納を生活のSOSと捉えて、滞納整理に先立って生活困窮支援を始める。

⑧生活困窮者を滞納整理により一段の窮地に追い詰めない(市民生活を壊さない)

⑨滞納整理による事務の無駄と滞納者の負担を省くために、債権を一元化して対応。

⑩滞納者の生活再建と自立は、結果的に納税に結び付き税サイドにとってもメリット

⑪目途と効果のない滞納取立てを止め、条例に基づき債権放棄を行う。

 *⑤~⑪は「債権管理条例」に基づく。

生活困窮者支援が直営廃止と民営化が理念の行財政改革の波に洗われないように!

 これら市の取組は、市の組織全体が関わっていますが、そのコーディネートは市民生活相談課。相談員はやむを得ず非正規の職員も働いていますが、基本は市職員で、いわゆる直営。

 今日2月10日までを期限にパブリックコメントが行われている行財政改革推進プラン案。分かりづらい資料による短期間のパブリックコメントでどれだけ意見が出されたか心配ですが、その案の基本理念は、直営廃止と民営化。小水さんが報告した生活困窮者支援の仕組がこの行財政改革の波に洗われないことを願っています。