「熟考」しているのは市でなく市長個人という奇妙な光景

 新病院整備については栢木市長は、現在、新たな建設場所を含めて「熟考」中であり、今後どうなるか誰にもわからない状態で時間だけが過ぎて行っています。これに伴って、駅前の商業開発も保留されたまま。

 しかし、市長が「熟考」しているからといって、法人としての市はその「熟考」に関わっているわけではありません。市の行政組織、すなわち市職員がその「熟考」作業に携わっているようではないし、議会も市長会派の議員はいざ知らず、機関としての議会は関与していない。したがって、以前書いたように、市長個人が一身上の事として、「熟考」している、言い換えれば、悩んでいる状態。これは、冷めた目で見れば、まことに奇妙な光景が現出している。当たり前の状況ではありません。

市として決めるのは、議会 市長ができることは、提案まで 市長の裁量権は限定的

 ということで、この辺りで一度、病院と駅前問題で、栢木市長が就任してから、市として決まったことと決まっていないことを簡単に整理してみました。言うまでもなく、市として決めるのは、議会。市長ができることは、提案までです。

 なお、余談になりますが、もちろん市長単独で決められることがらもあります。土地の開発に関わる許可や契約の相手方の決定など。しかし、これは個々の案件にかかわるものであって、その決定が下せるようにしている制度自体は議会が決めます。また、契約の決定も一定の金額を超えるものなど重要な案件は議決が必要。このように市長の裁量権(権限)はかなり限定的です。

 さらに、余談になりますが、一昨年秋、市長が変わったので一気にいろんなことが変えられると期待した向きもあった。しかし、そうではなかったので、昨年秋の市議選で国政なみに市長会派候補を5人も擁立し、当選にこぎつけたとも見られます。

Bブロック病院は市として決まったことでなく、市長のひとり言のまま 不適正な予算執行

 先に結論から言うと、何も決まっていないということです。そこで、具体的にいくつかのことを確認してみます。

 まず、Bブロックに病院を建てることが決まったかどうか。これについては、すでに今年になってから市長が突然、自分を支援する会派からの断念要望に応じたので結果は出ていますが、問題は、それ以前には決まっていたのかどうか?

 もちろん、決まっていません。Bブロックに病院を建てるという議案が議会に提案されて可決された事実はない。それどころか、議会で議決されているのは、Aブロックに病院を建てることなどを定めた、病院事業を設置する条例。

 それではなぜ市長は1千万円を超える予算を使ってBブロック病院の基本計画等の策定業務委託が出来ているのかという、当然の疑問が出てきます。その答えは、本来なら行うべき適正な手続きをしないで予算を執行しているからです。

 もう少し詳しく言うと、この予算はBブロック病院整備目的のものではない。具体的な内容を決めないで、予算提案され、なぜか可決された。予算案の議会提案は令和3年2月25日。予算の説明は、添付の資料のとおり。「更新計画等の修正について」の業務委託費として。

 この時期は、まさに市長公約の病院現地半額建替えの検討の真っ最中。公約が実現されることを期待していた市民もあった時期です。したがって、このような時期に、このようなあいまいな名目で確保した予算をBブロック病院の計画策定に使うのには無理がある。執行にあたっては、病院条例の改正などの手続きが必要。

 したがって、Bブロック病院は市として決まったことでなく、以前書いたように、栢木市長のひとり言にとどまったまま。とは言っても、それを市長が自ら覆すことは、政治家としての責任が問われるし、それ以上に1千万円を超える市税を使ったうえ、職員の働きと時間を無駄に費やしたことの責任は免れることはできない。

複合商業施設整備事業も決まっていない 決めるスケジュールも示されていない悲惨な状況

 次はAブロック等での「複合商業施設整備事業」が決まったのかどうかということ。これについては、昨年12月の議会でこの事業の支援業務委託費として1,500 万円の補正予算が可決された。したがって、いくつもある関門のひとつは通過したと言えます。この予算は、開発業者を選定し、その業者と基本協定を結ぶまでの、最初の入り口の費用。しかし、その先の関門を通過するためには、まず、Aブロックに病院を建てることなどを定めた、病院事業設置の条例の改正が必須。ところが、市長は「現状では予算案も条例案も賛同されない。否決されたら時間の無駄になる」(中日新聞)と議会で述べた。ということは、Aブロック等での「複合商業施設整備事業」も決まっていないことになります。

 この辺りで止めますが、病院と駅前問題で重要なことは何も決まっていない事は明らか。それどころか、現状では決めるスケジュールも示されていないという市民にとって悲惨な状況です。